『藤田純平の仕事』感想(オトッペ編)

最近ハマっているアニメがある。
Eテレで放送中のアニメ「オトッペ」である。

気になったきっかけは、フォロワーさんがハマっており、子供向けアニメだが大人をも惹きつけるような深みがあるのではないか?と感じたのと、好みのキャラがいそうだな…というオタク的観点からだった。
で、予想通り推しを見つけ、その可愛さを楽しんでいるのだが、そう言った視点とは違う点で、同時進行でこの作品が気になっていた。

私にとってオトッペは「何故そうなった?」が非常に多い。
何故シーナは見た目は中性的であり、男女問わないことを狙っているのに女の子なのか?何故ウィンディは眉毛が繋がっているのか?何故土鍋の歌なのか?始まりの「リッスンキケケ」というワードはなんだ…?
ハマるより随分前から作品の事は知っていたのだが、初めてキャラクターの絵を見た時は「分かりやすい可愛さではないデザインだな」と思った。
これだと語弊があるので説明すると、「全く可愛くないって事はないけど、もっと可愛いデザインにだって出来るだろうに、このデザインはなんなんだ…?」と。男女問わずターゲットになっているアニメなので、可愛くある事が全てでは無いのだが…なんとなくそう思っていた。
キャラを可愛いと思ったのは本編をそれなりに見て、性格や立ち位置を把握してからだった。

ここから、オトッペのインタビューをネットで漁った。主に見つけたのは、楽曲に関する裏話と声優のインタビュー。どちらも「そうなのか!」と驚く内容で、作品への理解が深まった。


ただ、キャラクターや世界観に対する一部の疑問は解消されなかった。

オトッペはTwitterアカウントを持っており、そこにはキャラクターデザイナー「おおばる」氏の様々なスケッチが公開されている。そしてそのスケッチの完成度が異様で、初見時かなり驚いた。そもそも、こういった裏話を子供向け作品のアカウントが積極的に発信しているのも新鮮で面白い。
加えて、現在開催中の吉祥寺のミニアート展にて、Twitterには無い初見のスケッチがあったことも重なり、関心が爆発した。


という訳で、ほんの少しでも疑問の答えがないかと買ったのがおおばる氏、もとい藤田純平氏の経歴をまとめた本である。(前置き長〜)

とりあえずオトッペのページだけ読んだのだが、私の疑問がかなり解消された上に、知られざる裏話がそこそこ盛り込まれており、非常に素晴らしい特集だった。
まだ見たことのなかったアートが掲載されているのも素晴らしいのだが、企画の始まりやNHK、もといNED(NHKエデュケーショナル)との関係性については知らない事ばかりで面白かった。
そしてなにより、おおばる氏がオトッペにとても情熱を持って取り組んでいるのがヒシヒシと伝わってくる。加えて、彼がEテレの大ファンで、子供向け番組に詳しいというのも初めて知った。
全体(といってもオトッペ特集しかまだ読めていないが…)を通して1番感動したのは、おおばる氏の「全てのものに意味を持たせる考え方」である。
以前、ウィンディ家のスケッチを見た時に、松の木が植えられていたのに気がついた。背景にはちゃんと描写されているのだろうが、気づいても大抵は気にしないだろう。
そして、そのスケッチには「ウィンディの家はシーナにとって最も安心できる場所だから、視聴者が見てもどこかホッとするような安心感にある風景にしたら…(その他にも詳細あり)」という内容が書かれていた。
そこまで考えて設計していたのか!!!!!ともうめちゃくちゃに感動したのだ。
と、同時になんでそこまで…と思ったのだが、「理由を持って世界観を組み立てるのが、そもそも彼のやり方」なんだ…という気づきをこの本で得られた。この本の1番の収穫である。
その他シーナが女の子なのはNED側の指定だった事も明らかになり(ちゃんと理由も書かれている)、個人的に特に気になっていた点はコレでクリアになった。

おおばる氏の肩書きは「キャラクターデザイナー」となっているが、実際の所、彼のオトッペにおける仕事はその肩書きでは説明が足りないのではないか…。
本を読む限りでは、おおばる氏はあの世界の創造主に近い気がする。
ただその一方、私はアニメのキャラクターとは「スタッフ皆で作っていくもの」だとも思っている。そういう点では、彼の世界観を実際のアニメに落とし込んでいるCG会社、監督、脚本家、声優…あらゆる人々が、オトッペという架空の世界、キャラクター達を魅力的にしようと奮起しているのもミニアート展のインタビューで感じていた。(私がオトッペを好きな所に、制作陣の影を要所要所で見せる所がある。影の功労者たちも、積極的に考えを発信して欲しいと思うタイプなので)

キッズ向けアニメなのでストーリーは分かりやすく、パッと見て、ボーッと楽しむ事も出来るのだが、その手軽に楽しめる面白さの裏に、血のにじむ努力やこだわりがあるのを改めて痛感した。

これから他のページも読むが、あらすじだけも既に面白そうで、良い本と巡り会えたな…。

オトッペ、面白いなぁ〜。

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