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一週間でできるゲームデザイン


2023年11月29日(水)まず作ると決めた

このときの状況
私はゲームマーケット2023年秋の日曜12/10(日)の参加者である。
参加ブースはチャット横丁とかいう新ジャンルらしい。
ゲームはまだない。
前回(2021年秋)、ごく私的な事情によって、ゲームを落としたので、今回は流石になんとかすべきだと思った。一週間でできることをやろう。

2023年11月30日(木)先行研究(パクり元の決定・分析)

作業時間4時間程度

さて、作るべきゲームテーマは【悪徳令嬢】と決まっている。
なにしろゲームマーケットのカタログにそう書いてある。
前回、作りかけだったゲームは完成しなかった。理由はルールが複雑すぎてまとまらなかったことが大きい。

そのときに書いたテーマは「絞れ」「奪え」「貸し潰せ」だ。これらのアクションを盛り込もうとしたときに、リソース管理が煩雑になりすぎた。

たとえば、「お金を貸す」という行動は、現実社会では、基本的に将来利子をつけて返却されることを期待して行われる行為である。それを表すためには「金銭」と「時間」というふたつのリソースの管理が必要となる。

それを実現するコンポーネントは?
ターンマーカー?札束セット?コインチット? …という堂々めぐりの適切解を見つけられなかった。


そこで、先行事例に頼ることにした。今回テーマの類似性から選定したのは
他人から金を搾り取るゲームとして、世界で最も知られたゲームであろう『モノポリー』だ。

さらに、好都合なことに今はマクドナルドのハッピーセットのおまけで小さいマクドナルドのオリジナルモノポリーが入手できる。
本式のものと、ミニ版を比べてみれば、おそらくモノポリーがモノポリーとして成立するための必須なものが見えてくると考えたのだ。

マックのハッピーセットを買って手に入れたマックモノポリーと保有していた本式モノポリーを持って、行きつけのコワーキングスペースに行って並べてみた。ボードゲーム制作には広く集中しやすいスペースが必要だ。

このとき自分はモノポリーの土地をカードにして、そのカード上を歩かせたら、ボードがいらないし組み合わせでいろんなイベントがおこせるから、面白いのでは?と考えた。https://twitter.com/boreford/status/1730171669418029480

なぜこんなことを考えたか?手元にコンポーネントに入れるサイコロに十分な在庫がなかったし、サイコロは結構高いんだ。

とりあえずマックモノポリーのマス目分の24枚カードを並べてみた。失敗だった。7並べだって横に13枚広げるのは結構たいへんなのに24枚も並べては、遊べる机は限られすぎる。

そこでもう一枚増やして5×5の25枚セットとした。24枚のカードを6人4枚で分けて自分の領地とし、そこを個別駒が動き回って金を集めて、マスター駒に貸して、貸しつけた証文の価値でゲームの勝敗を決定するという概念でいくことに決定した。

また、個別駒が徴税したところは裏面にし、通れなくなる。その回復にはロンデル(行動盤)の1要素とすることもここで決まった。「行動のタイミングによって最適解が変わる」という要素はもとよりどうしても盛り込みたかった要素だが、ロンデルを使うことで自然にその要素が盛り込めた。

2023年12月1日(金)コンポーネントを確認する

作業時間1時間程度

手元にあるコンポーネント 6色ミープル(赤青黄橙紫緑)×約200個
名刺カード100シート(1ゲームでカードを50枚使うなら 5シートで20個)

まぁ、シートは前日東京で買ってコピーすれば増やせるしな…というところまできて、アクションマーカーと王子(旧名マスター駒)にあと2種類の駒っぽいものが必要だと気づいてAmazonでなんか適当なものはないか探してみた。

たとえばこういうのを買って補充できれば心強いが、折しもAmazonはブラックフライデー中で物流が乱れている。到着が12/10~となっているのを確認し、そっと、今あるもの、身の回りで買えるもので戦うしかないことを悟ったのであった。

2023年12月2日(土)ルールを記載する

作業時間4時間程度

ここ3年くらいゲームルールを書くという作業をやっていなかったため、いきなり書き出すとくじけてしまう可能性が高かった。
そこで、Xに書き出しながらやることに決めた。
公開の140文字なら、いくらでも書ける気がするメソッドである。

普通の人には薦めない。

2023年12月3日(日)テストプレイをやる

作業時間6時間程度

情報シートを買って、手書きでカードに必要な事項を書き込んで、実際にソロで資源管理をしながら遊んでみた。

やってみてすぐにダメだと気づいたのは、自キャラクター移動を1~5歩としたところ、自由すぎる一方で、王子の移動で稼げる点数が少なすぎたので
やる行動が自領を駆け回って徴税する一択が強すぎた。

プレイヤーに迷わせるには、いろいろな選択肢が同じくらい価値であるべきであるし、もっと迷わせるには、その選択肢は嫌だがやらざるを得ない手を作ることである。

結局、移動は1~3歩までに制限を変え、王子の移動で稼げる点数も増やした。

また、プレイが同じことの繰り返しでダレ気味になったので、獲得できる証文に様々なパワーアップできる条件を増やした。

2023年12月4日(月)デザインをやっていく

作業時間3時間程度(AI生成の設定・準備時間は除く)

基本的に色で自分の担当するものを識別するが、色覚異常対策として、なにかしらのマークを補助記号としてつけたいと考えたが、6種類の適当な文様を思いつかなかったので、最新技術に頼ることにした。

https://chat.openai.com/share/f5e66b6b-87c6-4c7f-96d5-f2a4964ac71a

chatGPT君はウソも言うし、こちらの意図するところを上手いこと読み取ってくれなかったりするが、対話形式でいくらでもダメ出ししながら方向性の案を出してくれる。孤独な作業をしがちな創作者にとって、それなりに頼れる奴だ。

私に絵心はない。よって、イラストが必要なときは、いらすとやに依存していた。だが今は違う。StableDiffusion(商用可能)は基本素材から城・街・村くらいの入力で10回も叩けば、これくらいのものは出してくれる。

まぁ、カード背景にするにはこれくらいでいいんだ。
兎にも角にも、便利な世の中になったもんである。

2023年12月5日(火)アートワークする

作業時間10時間程度

Adobe illustrator上でかき集めたイラストを並べ、それっぽいカードをしたてていく、
今回のゲームの要素は基本的に数字と色がしっかりわかればいいのだから
数字と説明書きをワード上に書き出してもよいのだが、せっかく素材を作ったので、フリーのカードフレームを使ってそれっぽく仕立て上げることにした。


2023年12月6日(水)印刷する

作業時間5時間

カードの印刷は、名刺シートにカラー直刷りして行う。
カラーの家庭用、レーザープリンターを利用したが、裏表印刷したところ、色移りがおこり、貴重な(比較的お高い)名刺シートを数十枚汚損した。
加えて、カラートナーが切れたために、トナー交換に時間を要した。
予備トナーがなかったら、大変なことになっていただろう。

7時から刷り初め、その間に駒の調合をして結局0時を回る。
ひとまず残ったきれいなものだけを10数部詰めた箱をローソンから郵送指定する(会場搬入は間に合わないので、もちろん宿泊先にだ)

2023年12月7日(木)移動する

ゲームマーケットに向けて移動する。
(我が家は関東基準で僻地なので、東京近郊につくには1日必要なのだ)
つまるところ、この日の朝に送れていないものは「間に合わなかった」のだ。

2023年12月8日(金)反省する

うん、結局ボードゲームデザインカレンダーも大遅刻し、つついまやっているんだ。すまない。

短時間にまぁゲームマーケットに出せるものはできた。出来は自覚ではこれまでのゲームに劣らない、ものだと思う。



それは、
・あらかじめ保有していたコンポーネント
(大量のミープル、名刺シート、厚マット紙)
・温め続けて腐らせていたアイデア
・過去に発注したままになったイラスト
・AdobeCC、レーザープリンターといった機材を利用できる環境
・ルールの元手になった既存ゲーム(の保有や購入)
・ゲーム制作に金と時間の投入を許す環境
・これまでのゲームで培ったゲームバランスの勘

などに依存しており、こういう無駄の多く綱渡りのディベロップは現に戒めるべき態度である。

まぁ、それはともかく「民を痛めつけ、王家に金を貸し付けて権力を握る」というコンセプトを生かしつつ、シンプルな行動選択、多様なプレイ人数、変化し続ける最善手などの盛り込みたい要素は全部盛りできた傑作と思うので、ゲームマーケットで見かけたら、見て行ってほしい。

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