カフェノート「黄昏インザスパイ」


UNISON SQUARE GARDENで涙する曲はほぼないけど沢山ある。

そんな代表的な曲が、
「黄昏インザスパイ」という曲です。

5枚目のフルアルバム「Catcher in the Spy」に収録されたこの曲。
UNISON SQUARE GARDENといえば、意味不明、解読難解な歌詞が特徴のバンド。と言われている。

実際、作詞をしている田淵さんも「歌詞に意味なんかない」と言っている。

僕は「意味がわかんないけど、どうしてもフィーリングの合う」このバンドがとても性に合う。
その理由は、ボーカルの斉藤さんの声だったり、歌詞のリズミカルな聞きやすさであったり、3人の技術の高さであったり、ロックすぎずポップ過ぎず、そしていくら聞いても飽きが来ない。などたくさんある。
歌詞は早口だったり造語が多かったりするので、ほぼ覚えていない。けど、それでいいと思える。こんなバンドは初めて出会った。

ただ、一つだけ欠点があるとしたら、その時の自分の感情によって、曲の見え方が全く変わってしまう事だ。

自分の感情が安定していたり、現状に満足していたり、将来に希望を持っている時、このバンドの曲は「楽しさ」をより感じる。”ポップ”なリズムが自分の感情をより掻き立て、前へ進もうとするパートナーとなる。

しかし、感情が安定していない時。自分に自信が持てない。希望が持てない。そんな時にこのバンドの曲は「空虚」に感じてしまう。

それは、歌詞に意味がないという事と、このバンドの取っているスタンス「あくまでも、客とミュージシャン」という距離を保つものだ。

「僕たちは、手を差し伸べたりはしない。君が君らしく生きられる道を選ぶんだ。だから、君が来たい時に、来ればいい。僕たちは変わらず音楽を鳴らし続けているから」という考えがこのスタンスを作っている。

だから、決してUNISON SQUARE GARDENというバンドは、客に寄り添ったりはしない。

しかし、感情が不安定な時、人は自分の心を穴埋めしてくれる。寄り添ってくれる、安心させてくれる存在を求めてしまう。

そんな状況で、曲を聴くと自分が好きでいつも心を満たしてくれる存在だと思っていたものが、何も刺さらず心をなでてるだけでどこかへ流れて行ってしまう存在になる。
一時期、メンタルを立て直すつもりで曲を聴くのに、聴き終わる時には絶望しているというようなことが常々あった。

一生このバンドの曲を聴いていたい。そう思っていたからすこし残念な気持ちになった。

そんな中、あまり聞いたことのない少し”バラード”調の曲がプレイリストから流れてきた。(それまで「楽しさ」をこのバンドに求めていた僕は、”ポップ”な曲ばかり聴いていた。)

そんな曲の、入り

「今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな」

え!?

そして、ラストサビ

「今日が辛いから明日も辛いままだなんて 
 思うな 相変わらず息をしてる 
 揺るがない目も知ってる 
 負けない どうせ君のことだから」

自然のうちに涙がこぼれていた。

こんなことをしやがるバンドなのか!!と思った。

歌詞に全く意味がないって言っておきながら、不意を突くように歌詞で刺してきた。

寄り添ってくれないバンドだと思っていたのに、「どうせ君のことだから」とずっと見ていてくれた。

「君が僕たちのことを好きなのを知っているし、そんな君ならいつか立ち上がることができる。だって、どうせ君のことなんだから。」

そうやって、励ましてくる。

「頑張れ!」「君ならできる!」「未来に希望を抱こう!」そんな応援ソングはこの世にたくさんある。

けど、曲だけでなくバンドの在り方で、励ましてくれる曲はなかなか無い。


バンドとして、寄り添う事はしないけど、君が君らしくあれるために、僕たちは存在し続ける。そうやって、スタンスは崩さずに、彼らなりのやりかたで励ましてくれる。

だから、またいつものように彼らの曲を楽しめるようになったし、自分の人生が複雑化すればまた違った味わい方をできるのだろうと思うと、今後もずっと聞き続けていたいと思う。


「黄昏インザスパイ」

今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな 時計仕掛けのフレーズ 魔法みたいにして 今を書き換えていくだろう 好きな言葉や好きな旋律に寄り添ったっていいだろう 煙まみれのストリート 誰もが観察をして 息が苦しいんです 
黄昏健忘症 置き忘れた速すぎる季節の中心で 大切な事 早押しでも三択でも答えられない 
止まれない なんて 焦ってる君に歌うよ 
止まれないなら 車に轢かれちゃう 

理想、理由 あるんだよ 地位や名誉だって手に入れたいんだよ カッコ悪いかな 聞いて欲しい声がある 届いて欲しい人もいる 多い 少ない は関係ない 
黄昏健忘症 呼び起こしてみて 命が吹き込まれた瞬間 震え出しちゃって 動けなくなった 言葉にできない現実感情 
疲れたなら深呼吸を せめて、の三秒間 思い出せるよ 君の奥の奥の方 

ここでもう終わるのか ここからまた始めるか 正解基準なんてないしさ 僕も知らないから 君が決めなよ これは絶好の瞬間であって 逃せるわけがないんだよって 君の声が暗いはずのこの世界 照らすだろう だから 息を吸って 
黄昏健忘症 呼び起こしてみて 命が吹き込まれた瞬間 心象風景が一変してしまって 彩り溢れたその現象 迷いそうなら深呼吸を 大丈夫、の三秒間 思い出して またこの世界とスタートして 
今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな 相変わらず息をしてる 揺るがない目も知ってる 
負けない どうせ君のことだから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?