ジャパンCの行方

JRAは9日に、11月24日に行われるジャパンCに外国馬が出走しないと発表しました。外国馬の不出走は1981年に国際招待競走として創設されて以来初の出来事で、国際招待として国内で外国馬と一戦交え、世界に通用する馬づくりの一翼を担ってきた同競走の存在意義が問われています。

ジャパンCの意義

そもそもジャパンCは、日本競馬の発展のために先進国の外国馬を日本に招待してレースを行い、世界に通用する馬づくりに生かす目的で創設されたレースです。第1回に参戦した外国馬は米国とカナダから3頭ずつ、インドから1頭の計7頭でしたが、国際GⅠの勝利馬は米国のザベリワンのみで、同じく米国のメアジードーツやペティテートはGⅡまでしか勝っていませんでした。対する日本馬は同年天皇賞・秋を制したホウヨウボーイや同2着で前年のダービーや菊花賞でも2着だったモンテプリンス、天皇賞や有馬記念、宝塚記念で5度の2.3着を数えるメジロファントムなどトップクラスが出走しました。

そしてレースは、米国のメアジードーツに当時の日本レコードを0.5秒縮めた2.25.8で優勝され、掲示板を外国馬で独占されただけでなく4着までが日本レコードを上回るタイムを叩き出され、日本馬は天皇賞馬のホウヨウボーイが勝ち馬から0.8秒離された6着に敗れました。この結果に『今後50年は日本の馬は勝てない』と誰かが言ったとか言わなかったとか…

まぁ翌々年の第3回でキョウエイプロミスがスタネーラにアタマ差の2着、第4回でカツラギエースが、第5回でシンボリルドルフが優勝するので思った以上の差があったわけじゃないんですが、第6回から11回まで外国馬に負け続けましたし、確かな差があったと解釈するのが妥当かなと。その後の日本は世界に追いつき追い越せでサンデーを導入し、日本の顕彰馬クラスが攻勢をかけて20世紀最後となる第20回までの成績を日本馬8勝と五分近くまで戻しました。ここまではジャパンCの創設目的通りに事が進んでいます。

逆転攻勢

ところが21世紀以降、昨年までの18回で外国馬の勝利はわずかに2回と日本馬が大きく突き放す結果となりました。ただね、21世紀になってからは強豪馬が極端に減っているんですよ。主要GⅠ(JRAの海外の主要レースを参考)を勝利している出走馬と着順は以下の通り。

2004年英ウォーサン   (バーデン大賞)   15着、13着
2005年英アルカセット  (サンクルー大賞)  1着
   英ウィジャボード (BCフィリー&)   5着、3着
   仏バゴ      (凱旋門賞)     8着
   米ベタートークナウ(BCターフ)     12着
2009年英コンデュイット (BCターフ、Kジョージ)4着
2010年英ジョシュアツリー(カナディアン国際S) 10着
2011年独デインドリーム (凱旋門賞)     6着
   仏サラリンクス  (カナディアン国際S) 12着
2012年仏ソレミア    (凱旋門賞)     13着
2013年仏ドゥーナデン  (コーフィールドC)  5着
2014年独アイヴァンホウ (バーデン大賞)   6着、14着
2015年仏イラプト    (パリ大賞)     6着
2016年独イキートス   (バーデン大賞)   7着、15着
2017年愛アイダホ    (カナディアン国際S) 5着
   独ギニョール   (バーデン大賞)   9着
   豪ブームタイム  (コーフィールドC) 12着
2018年愛カプリ     (愛ダービー)    12着

上記を見ると2005年のような当たり年もあるものの、ドイツやカナダなどのGⅠ馬が多く、近年は辛うじてこのレベルの出走馬を確保してきたのが現状で、出走馬の中にはGⅠはおろか重賞すら勝っていない馬もいます。また、外国馬の出走数も減少しており、2010年の第30回までの10年間で56頭だったのが、それ以降は今年までの9年間で28頭と大きく減らしています。このようにジャパンCは外国馬の質も量も低下し続けている事が分かります。

原因は馬場?

強豪馬が集まらない理由の一つに東京競馬場の馬場が挙げられています。世界一とも言われる日本の馬場でも特に質が高いと評判の東京競馬場の馬場は、海外の関係者から見ると異質に写るようで、硬い、固いとインコのように同じコメントを繰り返すのは良く見る光景です。確かに、日本の馬場と海外の馬場は違う競技と言っていいほど違います。今年の凱旋門賞では日本馬の中でも現役トップクラスの3頭が挑戦して惨敗しており、レース後も当然のように馬場が…とコメントする関係者たちを見ればそれが間違いでない事は容易に想像がつきます。

しかし、馬場の問題はそれぞれの国の競馬に対する考え方や歴史、伝統が違う以上どうしたって出てくるものですし、どちらが良いとか悪いとかの問題ではありません。ただ、日本とは明らかに違う馬場で、しかも最高峰のレースに挑戦するのだから、それ相応の対策は必要かと思います。それは日本馬が海外に挑戦する場合でも、逆に外国馬に日本競馬に参戦する場合でも同じです。そう考えたら、海外とは明らかに違う馬場で、日本最高峰のレースに挑戦する外国馬はそれ相応の対策が必要ですし、それをしてまでジャパンCに参戦するのかと考えたら、勝てる確率が特に低いのだから行かないという選択をするのも当然かなと思います。

対応策はあるのか

私個人の意見としては、国際招待競走は止めた方が良いと思います。東京2400のG1レース、ジャパンCは続けるのは当然としても、招待しても来ないレースをいつまでも招待しますって体で続けるのはあまりにも滑稽に見えますし、そもそも日本競馬の発展という目的は十分果たしたと考えるからです。仮にアホみたいに賞金を跳ね上げたところで競馬をやっている世界中の大富豪からすればそこまで魅力的じゃないですし、むしろ賞金だけ高いレースとして格が下がりそうな気さえしますし。

また、現在の世界のトレンドは1600~2000なので、招待するなら天皇賞・秋の方だと思うんですよね。というかレース日程入れ替えてジャパンCを10月末にやればジャパンCを国際招待競走として残しても、そのまま次走の天皇賞・秋はいかがですか?ってなるし、2レース使う前提なら遠征費持ってくれるし行ってみるかって陣営もあるんじゃないかな。一日で複数のGⅠレースを開催しないのがJRAの方針なら、一回の遠征で複数のレースに使ってもらえる環境を整える事が外国馬の参戦に繋がると思いますよ。ただ、これだと香港を使ったり、マイルCSと両方出走する事が難しい。有力馬が秋競馬に一走のみとか、海外帰りで一走とかになる可能性もあってバランス調整がすげぇ大変そうだし、そこまでして外国馬呼ぶか?って問題に行き着く。ダビスタとかウイポとかの番組表だけイジって試してみたいけどね。

まぁJRAはお役所仕事とか言いますが、もう今の時代は自国だけで競馬を考えるのは無理があると気付いた方が良いのではないでしょうか。日本競馬は最高のハードとソフトを用意しているからこれでいいんだ、外国馬なんて来たければ来ればいい、日本馬が海外に挑戦しても国内で売上が下がらなければいいってJRAは本気で思ってそうと想像してしまう時点で、私はJRAに信用がないんだなと気付いてしまったようです。


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