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ついに公式に認めた!馬場情報を公開へ!

JRAは6/22、HPで公開している馬場情報について、情報を追加することを発表しました。その追加情報とは、ズバリ【芝馬場のクッション値】です。これは主に東京競馬場について何年も何年も散々言われてきたコンクリ馬場、堅い馬場という非難に対して、JRAが公式に認めるという手法を取った事でやっと重い腰を上げたという印象を受けます。

そもそもJRAはずっと『クッション性のある馬場で、競走馬にとって走りやすい』と言ってきたわけですが、驚異的なレコードタイムや故障した競走馬の数、外国人騎手のコメントなどを見ると、堅い馬場だという認識がファンの間で定着しました。私個人は【クッション性のある馬場】と【堅い馬場】はイコールになると思うのです。例えば、JRAが言う【クッション性】とは陸上競技場のトラックみたいなもんで、今まで公園の芝生のような馬場で走ってた馬からすれば、そのトラックのような馬馬は堅いと言えるでしょう。そう考えれば【クッション性】と【堅い】は繋がるんですね。

では、その【クッション性のある馬場】が悪いかと言えば、正直な話、悪いとしか言い様がありません。これは結果論なんですが、海外で勝つケースが増えた日本馬はレベルが上がったと言われますが、それは一部の話です。海外GⅠを勝ったジェンティルドンナやジャスタウェイ、アーモンドアイなどは世界のトップと肩を並べたとも言えますが、香港やドバイ以外の本場欧州での成績は一向に改善しないどころか、むしろ悪化しています。1998年にシーキングザパールが日本馬として海外GⅠ初制覇を果たしてから2000年のアグネスワールドまで3頭で欧州GⅠを5勝していますが、それ以降の20年間で欧州GⅠを勝利したのはイスパーン賞のエイシンヒカリ、ナッソーSのディアドラのみですからね。

レベルが上がったハズの日本馬がなぜ本場欧州GⅠで勝てなくなったか、という疑問の答えが【クッション性のある馬場】だと私は思います。陸上トラックのように走りやすい馬場では何よりも豊かなスピードが要求され、スタミナやパワーは後回しになりがちですし、検疫の関係で遠征は短期間で終わらせるという考えが主流な事もあり、今の日本馬が欧州のパワーもスタミナもいる馬場に適応する事は非常に難しいと言えます。現に上記2頭のうち長期遠征を敢行しているディアドラを除いたた、パッと行って勝ったのはエイシンヒカリだけです。

また、ドバイでは日本馬はこれまで8勝を挙げていますが、その内、馬場について非難轟々の東京競馬場のGⅠを勝った馬はジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイの3頭のみですし、香港では19勝の内、アグネスデジタル、ロードカナロア、モーリス、アドマイヤマーズの4頭(7勝)である点にも注目です。ジェンティルドンナやアーモンドアイは日本が誇るGⅠ7勝馬ですし、ロードカナロア、モーリスなども能力値の違いで勝っていると考えれば、走りやすい馬場に慣れた日本馬が海外で勝つのは難しいと考える事は至極全うだと思いますね。

長くなりましたが、これでJRAが胸を張る【クッション性のある馬場】には弊害があると理解して頂けたと思います。もちろん故障馬が多いという側面もありますが、こちらは確認のしようがありません。JRA側が出したデータも何を基に出しているのか、出走頭数など比較した内容は変更がないのか、そういう部分が不透明なので確認も検証もできないのは仕方ありません。

さて、話をクッション値の公開に戻すと、今回発表された内容は以下の通りです。

・芝馬場のクッション値の公表 2020年9月11日(金曜)より
・上記解説ページの公開    2020年8月末頃
・クッション値についての説明

公表されるクッション値とは【競走馬が走行時に芝馬場に着地した衝撃を受け止める際の反発具合を指す】そうで、数値が高いほどクッション性が高く乾いた馬場になり、それぞれ7未満、7~8、8~10(標準)、10~12、12超の5段階で表示されるとの事です。公表は開催日前日(主に金曜午後発表)とレース開催日当日朝になります。

これね、いきなり公表されてもなんのこっちゃって話ですよ。JRA施設部馬場土木課は『良馬場を詳しく説明するものでまったく新しい見方。予想のファクターに使っていただければ』と言いますが、それなら過去の分も出してもらわないと予想には取り入れられませんし、過去の分が無いのであれば、ある程度データが集まってからじゃないと分析できませんよね。

また、クッション値の測定方法は以下のような方法でした。

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測定位置は内柵から3mまでなんですか。東京の芝コースだとAコースなら幅員は31~41mですが、その内側2~3m部分を計測する・・それってコースの極々一部だけですよね。4角からゴールまでのハロン地点は分かりますが、ファンが知りたいのは4角からゴールまでの距離毎の傾向より、内外の傾向ではないでしょうか。

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発表ではこんな感じて公表されるそうですが、幅員を3分割して、各ブロックで数回計測した平均を内、中、外として、それを各ハロン地点毎に4角まで計測し、その平均を内8、中9.5、外12といった感じて公表するなら予想のファクターとして有効ですけどね。

それから、参考として海外の主要競馬場のクッション値を測定しているそうです。ホントかよ・・と思うのですが、JRAが測定したって言っているんだからそうなんでしょう。いったいどこの競馬場を指しているのか、曖昧な事この上ないですが。

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しかし、測定は2019年のみだし、概ね7~10の範囲って結構広いですよね。併せて舗装種類別にクッション値を出していますが、ファンからすれば分かりづらい。私の感覚だと、

ダスト舗装    ←分かる
ゴムチップ舗装  ←分かる
人工芝      ←分かる?
ハナ前芝スタンド ←どこ?
ニューポリトラック←分からない
ウッドチップコース←分からない

ですよ?上2つは数値が高すぎて参考にもならないし、人工芝はパドックというファンが中に入れない場所だし、ハナ前芝スタンド芝生はどこだか分からないから想像できない。当面は美浦トレセンの2つと比較してイメージするしかありませんね。なお、世界の競馬場でクッション値を公表しているのはシャティンだけだそうです。シャティンの数値と公表方法を知ってる方いたら教えて下さい。


これらの情報と理事長の今までの発言を総合的に考えてみると、JRAは馬場を修正するつもりはなく、あくまでこの馬場が一番だと思っていて、海外で勝てる馬づくりは過去の話で、今は日本の馬と馬場が世界一だからわざわざ海外に出なくても日本だけで走ってればいい、という事になりますね。

確かに世界各国でほぼ共通するルールでは施行されているものの、馬場という面では全く異なる競技をしているようなもんですから、そう言いたくなる気持ちも分からんでもないです。

でもね、日本馬が強い強いって言ってもトータル的には負けっぱなしなんですよ。JRAのHPに海外の主要レース一覧がありますけど、日本馬が勝利した事があるレースは51レース中16レースで、その内、本場欧州のレースはわずかに3つで、しかも勝ったのは20世紀の話ですよ。それでどうやって日本馬が強いと判断できるのでしょうか。

『馬場が違うから優劣を決めるのは難しいが自分たちのレベルは世界トップクラスだ。だから母国で走って強ければ良い。』という考え方は本場で元々強かった欧州が言うならまだしも、多少成長したとはいえ後進国だった国が本場のGⅠもろくに勝たずに言っても説得力が無いですよね。

だからこそ凱旋門賞でもキングジョージでもチャンピオンSでもいいから、誰もが知っているレースを日本馬が勝たないと日本馬と日本競馬の地位は認められないのです。そこをJRA上層部は分かっていない。

いくら日本競馬が発展したと言っても国内だけの話ならいずれ頭打ちになる時が来ます。某大手馬主グループに代表される生産界は世界を相手に競走馬を売っていかないといけないのに、日本競馬で優秀な成績を収めた、いわゆる日本競馬に特化した馬同士で生産した馬が、日本競馬と異なる海外で走って結果が出るかと言えば甚だ疑問です。求められている能力がそもそも違いますからね。そうすると海外相手に馬売れますか?売れませんよね?

私は馬場の保護や改良は必要だと思いますが、突き詰める先は誰にとって、何にとっての最良かを考えるべきだと思います。世界に通用する馬づくりとして世界の主要GⅠを獲りに行くならそれに合わせた馬場は必要ですし、少なくとも中央四場の内、一つは無理やりにでも欧州仕様というかスタミナやパワーも必要とされる馬場を用意する必要があるでしょう。

それは最新で最高の馬場とはかけ離れたものになるでしょうし、馬場の進化という意味からすれば後退しているように思えますが、世界で勝つという目的のために戦略的に後退するわけです。ただ闇雲に最新で最高であれば全て良しという話ではないのですから。

なんだか長々となってしまいましたが、大前提として考え方は十人十色という事、そして世界で活躍する日本馬を見たいという事がありますので、その点をご理解頂ければと思います。



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