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サウジカップデーの結果と今後の不安

3年目のサウジカップデーが開催されました。思った以上の結果となりましたが、私個人は一抹の不安を覚えました。まずは結果を見ていきましょう。


1R ネオムターフカップ(芝2100・G3)
オーソリティ(C.ルメール)1着

2R 1351ターフスプリント(芝1351・G3)
ソングライン(C.ルメール)1着
ラウダシオン(C.デムーロ)4着
エントシャイデン(坂井瑠星)12着

3R レッドシーターフハンデキャップ(芝3000・G3)
ステイフーリッシュ(C.ルメール)1着

6R サウジダービー(D1600・G3)
セキフウ(C.デムーロ)2着
コンシリエーレ(C.ルメール)3着

7R リヤドダートスプリント(D1200・G3)
ダンシングプリンス(C.ルメール)1着
チェーンオブラブ(坂井瑠星)3着
コパノキッキング( D.イーガン)4着

8R サウジカップ(D1800・G1)
マルシュロレーヌ(C.スミヨン)6着
テーオーケインズ(松山弘平)8着


日本馬は1Rから3連勝し、計4勝を挙げる大活躍を見せました。これだけ見れば日本馬は凄いんだ、と思うでしょう。ただ、勝ったのは全てGⅢなんですよね。レースの格は高くないという事実をしっかり認識しなければいけません。

日本馬は強いは強いんだろうけど条件次第、それが私の日本馬に対する認識です。今回のサウジCデーでも、GⅢでは5レースで4-1-2-3と圧倒的な実力を見せ付けたものの、勝った4頭はいずれもGⅠ馬ではなく、オーソリティが唯一GⅡ3勝を挙げているくらいで、あとは重賞1勝が関の山の馬です。失礼な言い方になり申し訳ありませんが、そうした馬が楽勝できるレースが今回のレースでした。

一方で、肝心要のGⅠサウジCでは惨敗でした。しかも昨年の最優秀ダートホースであるテーオーケインズが参戦してこの結果です。国内で無類の強さを発揮した馬があっさり跳ね返される、ドバイWCと同じ様な雰囲気を感じますね。さらに昨年のBCディスタフを制したマルシュロレーヌはテーオーケインズより上の着順であり、単純な物差しで計るなら日本のダートGⅠ馬より、米国のダートGⅠ馬の方が上だという事になるでしょう。ダート界は世界との壁が厚すぎやしませんか、という感情の前に、条件が合わなければ海外では勝てないんだなぁと思いましたし、今後、サウジCデーが日本馬にどのように影響するのかを考えると私には不安しかありませんでした。


確かに日本馬は世界最高水準だと言われていますが、井の中の蛙でもあります。海外で通用するかと言えばせいぜい香港と豪州ぐらい、あとは上手くいけばドバイで勝てるかもといった状況です。なんせ日本馬の海外GⅠ50勝の内、24勝が香港競馬で挙げたものですからね。内訳は以下のとおり。

・香港カップ・・・・・・・6勝
・香港ヴァーズ・・・・・・4勝
・香港マイル・・・・・・・4勝
・香港スプリント・・・・・3勝
・QEⅡ世C・・・・・・・・6勝
・チャンピオンズマイル・・1勝

近年は特に香港カップの成績が良く、直近7年間で5勝を挙げていますし、香港ヴァーズも6年間で3勝と得意にしています。それも一流馬が行くならまだしも、エイシンヒカリ、ウインブライト、ノームコア、グローリーヴェイズなど日本では少々足りない馬が行って勝ったわけです。

では他の国ではどうかと言えば、ドバイ8勝、欧州7勝、豪州6勝、米国3勝、シンガポール2勝となっています。欧州はそもそも7勝中5勝が2000年以前の話ですし、シンガポール国際Cはわずか15年で廃止されたレースなので置いておくとして、ドバイの内訳は以下の通りです。

・ドバイターフ・・・5勝
・ドバイシーマC ・・2勝
・ドバイWC ・・・・1勝

ドバイターフは5-3-3-12と優秀な成績である一方、ドバイシーマは2-5-4-12とあと一歩足りない成績です。地力が要求される長い距離より、スピードで押し切れる距離の方が向いているようですね。勝ち馬を見てもハーツクライ然り、ヴィクトワールピサ然り、ジャスタウェイ然り、一流馬の最高の時期に参戦して勝利を挙げていますが、その勝ち馬は不思議と香港には参戦しないんですよね。ヴィブロスが香港マイルに出たくらいでしょうか。

これを見ると、なんだか日本の大レースが行われる競馬場の馬場に合わず、より適性のある場所を求める場合が香港、日本の大レースを制してさらなる高みを目指す場合がドバイ、といった形で住み分けをしているように見えます。そこに今回のサウジCデーが加われば、ますます日本競馬の空洞化が進むと思いませんか。

今回勝った4頭の前走は、ジャパンC、阪神C、カペラS、香港ヴァーズであり、前走後は有馬記念や高松宮記念、フェブラリーSなどを目標にもできたと思います。しかし、そこにより適性のあるサウジ遠征が加わればそちらを選ぶのは当然でありますし、それに伴って国内のレースのメンバー層は薄くなっていくのは容易に想像できます。


本来であれば、海外に挑戦して好成績を残した馬が、帰国して国内で走る事で日本競馬も活性化することが日本競馬にとって最も良い形です。しかしこうも伝統も格式も関係ない、形だけでも国際重賞であればいい、国内を走るより条件の合う海外を走る、というのであれば、日本競馬自体を軽視するような形になるのではないかと思うのです。得意なコースばかりを狙って走るのは結構ですが、そうして活躍した馬の子どもばかりになれば、ますます欧州や米国に挑戦するのは難しくなりますし、ますます井の中の蛙が進みそうに思えてならないのです。

欧州でも米国でも豪州でも星の数ほどGⅠレースがあり、その中には伝統と格式を持ったレースがたくさんあります。日本馬が勝った欧州や米国、豪州のGⅠはいずれもそうした伝統と格式を持ったレースです。日本馬の力を世界に示すのであれば、そうしたGⅠに挑戦してほしいと思いますし、創設されて四半世紀も経っていないレースにいくら勝ったところで、新興GⅠを成金馬主が勝って喜んでいるように見えてならないのです。私はそれが残念でならないのですよ。

まぁ今回はGⅢばかりとはいえ、日本馬の力の一端を見せれた事は素晴らしいと思います。ただ、できれば国内の路線を軽視することがないようにお願いしたいですし、この遠征から大きなレースに繋げて欲しいと思いました。

なお、本分中に失礼な表現がありましたら、申し訳ありません。文句を言いたい人は、以下の記事をご覧になってからお願いします。



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