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レーン来日で崩れる流れが心配

データと直感の融合シリーズを書こうと思ったのですが、桜花賞はどうにも回収率が見込めない上に未だに葬儀相続関係でバタバタしているのでスルーしました。それで何を書こうかなぁと考えていたら、ふとレーンのニュースが流れてきたことを思い出し、短期免許制度への不安と心配をつらつらと書きたいと思います。


まず、ダミアン・レーンが4/30から6/26まで短期免許を取得するそうです。現在、ビザの申請中で来週中にも正式決定するとの事ですが、いやぁ~・・

来ないでほしい(笑)

はやり病で短期免許組が制限されてから、日本競馬は面白くなりましたよ。昔のような人馬一体のシーンが見られるとまでは言いませんが、燻っていた若手騎手や機会に恵まれなかったベテランの活躍は日本競馬を応援する身としては嬉しいものですし、またドラマ性も見て取れます。これは単に競馬というスポーツの記録が積み重ねられていく事とは別に、競馬を見る付加価値として大きなものだと思います。

例えば、丸田恭介が高松宮記念で初GⅠを飾りましたが、騎乗馬のナランフレグは師匠の馬です。外国人やトップ騎手により騎乗馬が集まるエージェント全盛の時代に、定年間近、しかも師匠の初GⅠをプレゼントできた事はドラマ性がありますよね。ナランフレグが穴馬だった事もそうですし、丸田自身もリーディング上位どころか50位前後に常駐している騎手という点もそれに拍車をかけます。

武さんのJRA・GⅠ完全制覇記録にはあとホープフルSを残すだけですが、2歳戦にあまり興味がない人でも毎年その時期になればホープフルSは注目しますよね。それは記録という意味でもそうですが、朝日杯も含めて陽気なイタリア人やら短期免許の外国人やらに苦汁を飲まされ惜敗し続けてきたという側面から「次こそは!!」と応援したくなるわけです。そしてやっと昨年のドウデュースで報われた、というドラマ性があります。

昭和から平成にかけて日本競馬にはこうしたドラマ性がたくさんありましたが、平成に終わりが見え始め、令和になった今ではドラマ性はめっきり少なくなり、記録ばかりが注目されるようになりました。この馬がGⅠを何勝したらスゴイとか、どの騎手が何百勝してリーディングを何回取ったとか、短期免許の外国人騎手が短い期間で何勝したとか、上辺だけでキャーキャー騒いでいる輩が多いような気がするのです。記録はもちろん重要ですが、中身も精査しない記録をありがたがってどうするんだと思うのですよ私は。

ちょっと話が逸れましたが、要は短期免許制度の本来の目的である【日本人騎手の技術向上】から外れた傭兵のような扱いとなっている現制度では、かつて日本競馬を沸かせたドラマ性などは生まれませんし、それは日本人騎手の技術向上にも則さないのではないかと思うわけです。

だからレーンに来るなと(笑)


とは言っても短期免許組が全く来ないのも違います。短期免許制度の目的には【国際交流】というもの含まれていますから、来ることは構わないのですよ。しかし、短期免許の取得要件は厳しく、来日するのは各国のトップレベルの騎手ばかりです。そのトップ騎手を無制限に騎乗させては未成熟な若手騎手の騎乗機会を奪い、若手騎手の成長を阻害する結果となり、ひいては次世代の日本人騎手が育たないことに繋がって、ますます短期免許の外国人騎手に頼る悪循環になるのは明白でしょう。

現に、はやり病が発生して短期免許組の来日が激減してから成績を伸ばしたり、初重賞や初GⅠを獲った若手やベテラン騎手は多いです。2020年3月以降にそうした騎手がどれだけ居たでしょうか。

・石川 裕紀人 重賞2勝
・泉谷 楓真  重賞1勝(初重賞)、2021年46勝(キャリアハイ)
・岩田 望来  重賞1勝(初重賞)、2021年88勝(キャリアハイ)
・荻野 極   重賞1勝(初重賞)
・亀田 温心  重賞2勝(初重賞含む)、2020年40勝(キャリアハイ)
・斎藤 新   重賞2勝(初重賞含む)
・坂井 瑠星  重賞9勝(海外重賞含む)、2021年53勝(キャリアハイ)
・鮫島 克駿  重賞3勝、2021年69勝(キャリアハイ) 
・菅原 明良  重賞2勝、2021年75勝(キャリアハイ)
・丹内 祐次  重賞2勝、2021年38勝(キャリアハイ)
・団野 大成  重賞2勝、2020年62勝(キャリアハイ)
・長岡 禎仁  重賞1勝(初重賞)
・西村 淳也  重賞1勝(初重賞)
・菱田 裕二  重賞3勝
・藤井 勘一郎 重賞1勝(初重賞)
・藤懸 貴志  重賞1勝(初重賞)
・松田 大作  重賞2勝
・松若 風馬  重賞4勝(初GⅠ含む)
・丸田 恭介  重賞2勝(初GⅠ含む)
・横山 和生  重賞4勝、2021年79勝(キャリアハイ) 
・横山 武史  重賞11勝(初重賞、初GⅠ、初関東リーディング含む)
        2020年94勝、2021年104勝(それぞれキャリアハイ)

わぁ~思った以上に多かったぁ~・・・・調べるのに疲れます。ざっくり調べただけでもこれですからね。短期免許組が不在でチャンスが回ってきた若手が結果を出した点もそうですが、それまでなかなか重賞のチャンスに恵まれなかったベテランも結果を出している点も見逃せません。

それまで重賞1,2勝していないのに、この2年間で同じぐらい重賞を勝つ。そんな騎手が何人も出れくれば何か理由があると考えるのは当然でしょう。私はその理由が『短期免許組が不在であること』であると思いますし、この『きっかけがあれば伸びる日本人騎手が、短期免許組が居ないがためにきっかけを与えられて伸びた』という流れを止めてほしくないとも思うのです。


その一方で、短期免許組が全く居ないのも日本競馬の成長という観点からすればマイナスだとも思いますので、以前から口を酸っぱくして主張している【短期免許組の騎乗制限】の導入が望ましいと思うんですが、JRAさんいかがでしょうか。

一日あたりの騎乗数を一日6鞍、一週間で10鞍まで制限すれば、若手騎手の騎乗機会が根こそぎ奪われる事もないでしょうし、ベテランだって特別戦での乗り替わりは少なくなりますよ。過保護だと思う方もいらっしゃるかと思いますが、元から各国のトップジョッキーとJRA騎手では公平な勝負なんてできませんし、周りの評価だって短期免許組の失敗は責められないのにJRA騎手の失敗は針小棒大に取り上げて責められる、なんてケースもありますからねぇ。

条件戦からコツコツとクラスを上げてきたお手馬が、やっとOPに出走する時に短期免許組に奪われたらぐぬぬとなりませんか。兄弟子にお手馬を奪われるのとは違うのですよ。不公平な扱いで正当に評価されないのであればモチベーションなんか上がりませんし、焦りはもちろん、妬み嫉み恨み辛みが騎乗に影響して大事故を引き起こす事も考えられます。大袈裟でしょうか。そうかもしれません。でもそうじゃないかもしれません。

せっかく世界に名だたる『競馬村』なんですからサポートやチャンスはそれなりに与えるべきだと思いますし、それでダメなら仕方ないと納得できる程度にはチャンスを与えてやってほしいなぁと思います。



んで、ここからレーンの話ですが(マジかよ!!)、そもそもレーンが所属する豪州って地域によって競馬の統括機関が違うんですね。彼はヴィクトリア州で主に騎乗しているんですが、このヴィクトリア州はメトロポリタンとカントリーの2つのカテゴリーがあり、その合計でリーディングを決めています。ただ、ヴィクトリア州で短期免許の取得要件の対象となるのは、実はメトロポリタン(メルボルン地区)の数字だけなんですね。そのメトロポリタンにおけるレーンの成績は、以下のとおりです。

2016/17シーズン 42勝、リーディング6位
2017/18シーズン 57勝、リーディング2位
2018/19シーズン 36勝、リーディング5位
2019/20シーズン 32勝、リーディング6位(5/20まで)
2020/21シーズン 63勝、リーディング2位
2021/22シーズン 63勝、リーディング2位(4/8現在)

私が拙い英語で調べた限りなんですが、ヴィクトリア州全体はともかく、メトロポリタンではリーディングは獲ってないようです。2020/21シーズンは女性のジェイミー・カーが史上初となるメトロポリタン年間100勝を挙げたと話題になりましたが、その時の2位がレーンであり、かなりの差をつけられています。もちろん、日本に来ていた分が下がっているとも言えますが40勝以上の大差ですからねぇ。


そのレーンの来日2年目が終了した時の記事がこちらです。

成績部分すっ飛ばして免許が取れるか否かの部分に着目してみましょうか。レーンは2019年にコーフィールドCとコックスプレートを勝っているため、【過去2年において指定外国競走を2勝以上】という要件で2021年までは短期免許が取得できました。今年2022年はどうかというと、豪州で上記2つのGⅠおよびそれ以外に対象となるタンクレッドS、メルボルンCの勝利は無く、かつ豪州以外の指定外国競走を勝利したというニュースも聞きませんので、この要件はおそらく満たせません

ではリーディングではどうかというと、前述のとおり2020/21シーズンでヴィクトリア州のメルボルン地区でリーディング2位となっているため、【過去2年において母国のリーディング3位以内(愛国・豪州)】という要件を満たします。前述の記事では『2020/21年シーズンも、日本に来日した分だけリーディング争いでは遅れを取りますので、ただでさえリーディングどころか3位以内に入った事が一度しかないレーンが条件を満たすのは相当頑張らないといけません。そうなるとこの条件で来日する事は非常に厳しいと言えるでしょう。』と悲観的な観測を書きましたが、その予想を華麗に覆した結果、今年は来日できる事となりました。

ちなみに2021/22シーズンでは4/8時点で2位となっていますが、同数で2位となっており、かつ6位とは7勝差ですので、今年5~6月に来日するとリーディング3位を満たすのは難しいと予想されます。もちろん他の騎手にもよりますが、短期免許終了後のひと月で不在だった2ヵ月分の差を逆転するのは難しいと考えるのが普通でしょうからね。

となると、2020/21シーズンの最後である2021年7月時点の成績のみが対象となるので2023年春までは来日可能となります。しかしリーディングもGⅠ勝利も要件を満たせていないので、2023年秋以降に来日するのは非常に難しいと言えるでしょう。今回の来日でJRA・GⅠを2勝すれば話は別ですが、そうなったらそうなったで別の意味で来ないで欲しいですし。


あとですね、レーンの2年目は良くなったんですよ。

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2019年と2020年を比べると、勝率、連対率、3着内率の全てで成績を下げています。騎乗期間がひと月長かったという事もありますが、ひと月多く騎乗しても3勝しか上積みできなかったというのは目を覆うばかりです。8番人気以下にはただの一度も騎乗していませんし、5番人気以下にしても9回のみで、実に騎乗数の95%が1~4番人気、同44.7%が1番人気であるにもかかわらず、この成績ですからねぇ。

ぶっちゃけ、今の横山武や福永、武さん、戸崎、ミルコあたりの成績と比べると、同じ馬質なら彼らでもこれくらいの数字は残せると思いますよ。傭兵とされる短期免許の外国人騎手ですから、少なくともルメールや川田レベルの成績は期待したいところです。もし今回ダメならレーンより他の外国人騎手、あるいは活きの良い若手を使った方が将来のためになると考える関係者が居てもおかしくないでしょうね。

ともかく、短期免許組が戻り始めていますが、JRA騎手は若手もベテランも負けずに、レーンだけは勝たせねぇ!!!とばかりに熱い騎乗を見せてほしいです。





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