見出し画像

持続化給付金不正受給問題、幕引き!!

JRAは4/10に持続化給付金の不正受給に関する問題につき、調査結果の報告説明会を行いました。ネット上に一問一答が載っており、これは記録として残しておくべき内容だと思いましたので、記事が消える前に報道された内容をそのまま記載します。

報道は日刊スポーツさんの記事です。日刊さん、いつもありがとうございます。以下、4/11の午後に配信された内容です。


3月6日に行われた説明会では、受給者は騎手13人を含む165人としていたが、虚偽申告者が1名いたことを受けた再調査の結果、受給者は合計で4人増の169人(うち3人は副業収入減などによる申請)と発表された。166人に関しては返還手続きが進んでおり、すでに全体の6割近い96人が返還を済ませた。調査結果を踏まえて調教師会、騎手クラブ、JRAはそれぞれ戒告や厳重注意などの処分を下した。

中山競馬場での説明会では質疑応答も行われた。一問一答は以下の通り。

-経済産業省のHPには「持続化給付金の不正受給は犯罪です」と記されている。前回の説明会では「認識が甘かった」としたが、それで済むのか

吉田正義JRA常務理事(以下、吉田常務理事) まず不正受給かどうかは、JRAが判断すべきことではないのではないかと思っています。それから、「甘いのではないか」に対しては、昨年、事案のうわさが出てきたときにJRAがキャッチできる体制であるとか、注意喚起後、こちらのフォローがちゃんとできたのかどうかといったところで、対応に甘さがあったと感じています。

-全体的に処分が甘いという印象。受給していない調教師からは「一緒に見られるのが嫌だ」という声もある。実名を出すべきでは

手塚貴久日本調教師会関東本部長(以下、手塚師) 受給していない調教師からそういう声があったことは重々承知しております。そのことを含めて役員会で話をしました。受給した者の事情聴取をするにあたって、明らかに不正かどうかは我々の中ではうまく解明できないことが多すぎて、不正ということではなく、不適切な受給という判断になりました。その旨を考えると、個人のプライバシーを含めて、不正であることが明らかでない以上、実名を出すのは適正ではないと調教師会で判断しました。

-1回目の説明会と比べて仲介した税理士法人の数が減り、大阪の男性税理士が扱った案件が増えている。数字が変動した理由は

越智直弘JRA総合企画部経営企画室長(以下、越智経営企画室長) 税理士法人の数が前回の15から減っていますが、3次調査時に詳しく聞き取りを行った結果、相談したが申請サポートまで至っていないなどの内容もありました。あとは、同じ税理士法人を指しているが、呼称が違っていて同一法人を別のものと認識していたりしていました。精査した結果、関与のあったものの数は12に修正しています。また、当該税理士法人の104件については、今回の調査の結果、新たに受給していたことがわかったのが4名いましたが、そのうちの2名についてが、当該税理士法人絡みでした。また詳細な聞き取りの結果わかったものもあり、108件ということになりました。

-大阪の税理士法人に対しての処分がされていない理由は

吉田常務理事 税理士法人の代表者は馬主法人の代表者でもあるので、競馬施行規程による対応ができないかどうか、私どもも行政処分を科す側であるので、慎重に検討しました。精査しましたが、例えば競馬施行規程による馬主登録の取り消しとか、戒告等には該当しない、というのが結論です。現行の競馬関連法規で対処することは極めて難しいところで、処分等には至らないということでした。

-前例がないから、処分できないのは理解できる。想定されていない事態が起きた際に処分を科すなどの議論はなされなかったのか

吉田常務理事 競馬法を頂点とする法体系の中で馬主登録の抹消という処分については、厳格に抹消事由が競馬法施行規則、私どもの規約、それらをまとめた施行規程が決まっています。私どもが行う制令に基づく処分は行政処分になりますので、なかなかこういった法令に基づかないでJRAが馬主登録の取り消しなどを宣言することは、極めて行政処分の中では難しいというか、できないと思っています。

-JRAが騎手13人に対して行った処分で、厳重注意が競走担当理事によって行われるものと、東西トレセン場長によって行われるものの2種類ある。その差は

吉田常務理事 競走担当理事による厳重注意の騎手1名は、いわゆる(昨年11月の)注意喚起後に申請をした方です。他の騎手12名はそうではないので、そういった意味で差が出ています。

-持続化給付金を受給した調教師は19人で、処分はそれより3人多い22人。3人は注意喚起が不十分だったことが処分理由だが、具体的にどういうことか

手塚師 昨年11月の時点で、関東と関西でやり方は違いますが、文書あるいは総会で各厩舎従業員にもれなく伝えるように注意喚起をしました。当該調教師は通達不十分だったと、自分からの申告です。

-先日、ボートレースで同様の事案が出た際は、競走会の会長自らが説明した。これだけの騒動となっても、JRAの理事長が説明会の場に出てこないのはなぜか

吉田常務理事 記者説明会で詳しい中身の説明をどこまできっちりできるかということで、恐縮ながら私が話をさせていただいております。理事長はコメントを出させていただいております。まだ返還手続き中であったりとか、今後の再発防止策は具体的にどうやっているのかというのもあります。どこかの節目できっちり理事長からお話をみなさんにさせていただきたいと思います。

-今回の事案によって落ちた競馬のイメージ、ファンからの信頼はどのように回復していくのか

吉田常務 お客様はじめ、一般の方々に競馬に対する信頼感を極めて毀損(きそん)してしまったのはおっしゃるとおり。深く反省しているところであります。まずは今回の件をきっちり、片を付けていくといいますか、返還すべきものは返還していただく。それから、再発防止策。ホットラインなどは早速運用させていただいております。まずは今回の一件を、しっかりけじめをつけていくことが一番ではないかと。その上で何か社会貢献的なことを、社会一般の方にご理解をいただけるような形でできればという風に思っております。

手塚師 世間の皆様から大変厳しい意見をうかがっていることは重々承知をして、真摯(しんし)に受け止めないといけないと考えています。JRAと調教師会はともにあることをしっかり認識した上で、再発防止に取り組みながら、新型コロナウイルス感染症対策への積極的な奉仕活動参加、また社会貢献できるようなことがあれば、調教師会として検討し、率先して参加したいと考えています。

-残り70人が返還手続き中。全員が手続きを完了するのはいつごろか

吉田常務理事 個々の事情があるものですから、いつ終わるのか予測ができない状況ではあります。JRAとしては最後の1人まできっちりフォローします。

-騎手クラブから誰も出席者がいない

吉田常務理事 まず会長の武(豊)さんはリハビリ中ということもあるので、ご容赦いただきたい。騎手の方はレースもあるので、今日は欠席とさせていただきました。そういった声があったことは私の方からお伝えします。

-今回は最大限厳しい処分だったと考えているか

手塚師 考え得る最大限厳しい処分だったと考えています

-今後、改善すべき点は

手塚師 今回、不適格受給ということで、調教師に関しては私も調査に立ち合いましたが、(受給した調教師は)ほとんどが大阪の男性税理士からの勧誘でした。ですが、最終的に判断したのは本人たちです。不適格、不適切な受給だったことは間違いなく、全員が返還完了、あるいは返還手続きをしています。そのために戒告と厳重注意に差が出たのは資料に書いてある通りで、個人で申請したか、あるいは関連企業で申請したかで若干違いがあります。関連企業での申請、受給については、調教師会の懲罰規定は個人に対する懲戒であって、関係する会社あるいは組織についてはありませんでしたので、口頭注意以外できませんでした

-日本調教師会は一般社団法人。一般社団法人として改善すべき点は

手塚師 各調教師が公的支援を受ける際は、事前に調教師会へ申告してもらうことをある程度義務付けたいと考えています。顧問弁護士にも相談し、理事会でも通過しているので、今後やっていきたいです。こういった事態が発覚した際に速やかに対応できるのではないか、と考えています。

-今回、4人の受給が新たに判明。そのうち3名が虚偽回答をしていた

吉田常務理事 3名に聞き取りをしたところ、ひとつは自分の将来に関わることになってしまうのではないかという不安感が強くて言い出せなかった、と。(調教師が)注意喚起や、事情聴取を他人がいるところで行っていた方もいるようです。周りに人がいるから、なかなか言えなかったという事例もありました。

-今回の数字はJRAによる任意の調査。今後、実態把握のために中小企業庁とのデータ照合は行うのか

吉田常務理事 中小企業庁とはいろいろ話をしておりますが、中身についてはこの場でお話しするのは控えたいと思います。

-今回の事案に関与していたスポーツニッポン新聞社の記者に関しての調査は行ったのか

吉田常務理事 その記者の方、所属する新聞社の方から事案に関わるご説明をいただきました。また、深い謝罪の言葉もいただいております。その記者の方ですが、記者クラブの記章、それからトレセン通行証を返却されたということで、この方がトレセンに立ち入ったりとか、競馬に関与することは今後はないのかなと思っております。

-受給した調教師の中に20年に新規開業した者も含まれているか。いた場合は前年が技術調教師だったり、収入の形態、立場も違う。その点で不適切か、不正かを詳細に調査する必要が出てくるのでは

手塚師 新規開業者は数名いました。調教師の中でも言い分はそれぞれありましたが、調教師会としては、やはりそれは不適切な受給だという判断を示させていただきましたので、処分を下しました。それ相応の処分を、ということです。

-処分内容について。競馬施行規程には騎乗停止、50万円以下の過怠金など、厳しい罰則もある。今回の事案はこれには値しないという判断か

吉田常務理事 競馬施行規程の「競馬の公正確保を担うものとして、ふさわしくない非行があった(日本中央競馬会競馬施行規程第147条第20号)」という条文に該当して今回、戒告という処分をしています。この条文の過去の適用例は交通事故で略式起訴された人だったり、極めて重大な暴行事件を犯した人だったとかこういった事例ですね。今回の事例と過去の事例を対比させますと、戒告相当が適当となりました。

-戒告、注意、厳重注意は具体的にどんなことをするのか

吉田常務理事 競馬施行規程に基づくJRAの戒告は文書の手交です。当然、履歴に残ります。それから厳重注意。競走担当理事による厳重注意、(東西トレセン)場長による厳重注意ですが、どちらも文書によるものです。特に競走担当理事の厳重注意は文書の手交という形で対応しています。場長による厳重注意は、文書を配達証明付きで送付しています。

手塚師 調教師会の戒告は調教師会会長が当該者に口頭で戒告を発するということです。これは経歴に残ります。厳重注意は懲戒規則にはありませんが、調教師会会長が直接当該調教師に厳重に注意することです。記録として残るか残らないかというところが、かなりと違います。東西本部長による厳重注意というのも今回出しましたが、東西本部長が当該調教師に対して指導義務違反ということで厳重に注意をします。これについても記録には残りません。


引用ここまで。



さて、長々と書かれていましたが、順を追って見ていきます。まず、不正受給の判断と認識の甘さについてですが、私が以前述べたとおり不正受給の判断はあくまで当局が行う事が前提ですのでJRAは判断を避けました。また、認識の甘さについては対応が甘かったと認めています。

この辺りについてはそうだろうなと思います。だってJRAですもん。下手に判断をして面倒な事態になったら大変ですし、私個人が不正受給と認識しているのとはわけが違いますからね。対応の甘さについても、得てして役所ってのは事が大きくならないと動きませんので、当然かと思います。

次に、不正受給した調教師の実名公表について、明らかな不正か判断できないので実名公表は適正ではないという点は、これは仕方ないと思います。処分の程度からしても実名公表までするのは厳しすぎるという意見は必ず出るでしょうしね。


続いて、当の税理士法人の代表者に対する処分が無い点についてですが、これは非常に難しい問題だと思います。税理士法人、馬主法人の代表者という立場も処分を難しくしているのでしょうが、そもそも特殊法人で農水省の外郭団体であるJRAが処分を下すには相応の根拠が必要であり、様々な事象に対応できるように競馬施行規程をはじめとした様々なルールを定めています。

しかし、今回のケースはこれらのルールでは対応しきれない事象であり、これらの法令の基づかず処分を行うことはできない、だから処分なしという結論とのことですね。JRAとしても非常に難しい対応だったと思いますし、できる事なら処分をしたかったと思います。

それから騎手クラブからの出席者がいない点については、なぜレースが行われている日曜に説明会を開いたのか不思議でしょうがないですね。調教師会から出席していた手塚先生だって管理馬をレースに使ってますし、こうした大きな問題の会見は定例会見にプラスして行うより、日曜のレース後、もしくは平日に行うべきでしょう。

というか、騎手クラブは事務方も全て現役騎手が行っているのであれば、組織として大変じゃないかなぁ。会長はともかく、副会長や支部長には外部から人を招いても良いかなと思います。あくまで組織としてのガバナンスの問題ですがね。


そして処分の重さについて、考え得る最大限厳しい処分だと断言しました。この考え得るという言葉が、処分について手も足も出なかった事を物語っていると思います。JRAと同様に、ルールは備えているが、それで対応できる範囲を超えていたので口頭注意以外できなかったわけですから。色々と弁護士やら税理士やらに相談したのでしょうが、難しかったと思います。

ただ、JRAと異なり、公的支援を受ける際は事前申告を義務付けるという改善点を提示した点は大いに評価したいところです。問題発覚から時間が掛かりすぎだと非難する声もありますが、実際に理事会も通過しているそうで、予想以上に早い対応だと思います。

なお、スポニチの記者が記者クラブの記章およびトレセン通行証を返却したそうですが、これはお上が何かしたのかもしれません。普段は牛歩戦術ですが、こうした動きは早いのはお上らしいですねぇ。しかも競馬に関与することは今後はないと発言しているのは非常に重い。仮に何もしていなくてもお上に逆らおうとは思わないのが日本の競馬記者ですから、スポニチが忖度して動いたとも考えられます。

一方、JRAは処分の重さについて、過去の事例と比較して判断したと述べています。これは組織として当然でしょう。逆にその時々の炎上度合いや感情によって処分を下す方が大問題です。今回の処分は、ふさわしくない非行があったという条文を根拠にしており、過去には飲酒運転、交通事故、暴行事件といった問題に対して適用されていたそうで、それらと比べるとそこまで重い処分は下せなかったという事ですね。この処分が妥当か否かは人それぞれ考える部分があると思いますが、組織としては適切かつ妥当な判断だと思います。


最後に、JRAの後藤理事長、日本調教師会会長の橋田先生、日本騎手クラブ会長の武さんのコメントが、JRAのHPにて発表されています。

【日本中央競馬会 後藤正幸理事長】
「3月6日の持続化給付金問題に係る記者説明会後、改めて厩舎関係者全員に対する事実確認等を行ってまいりました。
 この結果、中央競馬の賞金に由来する収入の減少を理由に持続化給付金を受給していたにもかかわらず、虚偽の申告をした者が判明し、これらの者に対して戒告するなど厳正に対処しました。
 持続化給付金制度の趣旨・目的を逸脱した受給は、社会の良識に欠ける行為であり、今般の事案が中央競馬の信頼に関わる問題となったことにつきまして、お客様ならびに社会の皆様に心よりお詫び申し上げます。
 この度の問題に対して寄せられたご意見等を真摯に受け止め、お客様や社会からの信頼回復に向けて全力で取り組んでまいります」

【日本調教師会 橋田満会長】
「先般、持続化給付金の制度の趣旨をよく理解しないまま、安易に申請・受給した調教師や厩舎従業員、また厩舎従業員への持続化給付金に関する注意喚起が十分でなかった調教師について、さらに本会の持続化給付金に関する調査に対し誠実に回答しなかった厩舎従業員について、日本中央競馬会と連携し、それぞれの経緯や内容を精査しました。
 そのうえで、本会の規定等に従って厳正に処分し、再びかかることのないよう厳重に指導をしました。
 今後、私たちは中央競馬の置かれた立場をよく理解し、社会規範の遵守やモラルの向上を図り、皆様方からの信頼回復に努めてまいります」

【日本騎手クラブ 武豊会長】
「今回の給付金事案について13名の者が当給付金の申請および受給をしておりました。今回の事案による不適切な申請・受給をしていた当該騎手については、日本騎手クラブの規程に抵触するとして『戒告』の処分を科すこととしました。
 今後は騎手としてだけでなく社会人として責任を持った行動・判断をしていくよう騎手全員に対しても厳重注意を致しました。また、コンプライアンス強化を目的とした講習会について定期的に実施することも予定しております。
 競馬サークルの社会的信用を一日でも早く回復することが、今の我々の責務であると考えております。以後このようなことが無いよう努めてまいりますので皆さまのご理解ご支援を今後ともよろしくお願いいたします」


まぁこんなもんでしょうね。これで幕引きにしたいので、丁寧な説明に終始したんじゃないかな。これ以上騒いでも、結果的に不正受給は自主的に解消されたわけですし、某野党の面々のように何でもかんでもギャアギャア非難する競馬記者は日本にはいませんし、何よりそこ掘ってもリターンがほとんどないわけですからね。

信用を取り戻すのは大変ですが、しかし、はやり病になってからも、それ以前からも日本競馬界は日本社会に多大な貢献をしてきた組織である点は忘れてはいけません。毎年数千億円の国庫納付金、災害時、非常時には100億以上の支援金、義援金を拠出している組織なんて日本中探してもないと思いますよ。

悪い事は悪い、でも良い事は良いし、感謝もするという事を忘れないでほしいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?