JRA理事長の功罪は?⑥
予想外に延びてしまった・・・リステッドと減量制度は簡単に終わると思ったんだけどなぁ。ちょっと熱がこもってしまいました。というか今日で終わるのかコレ。降級制度なんて言いたい事山ほどあるんですけど。とにかくできれば今日で終わらせたい。
2019年(平成31年)
1月 一部OP競走をリステッド競走に格付け
1月 若手騎手競走の騎乗資格を見直し、勝利度数を撤廃
3月 女性騎手の減量制度を導入
6月 降級制度を廃止
降級制度の廃止に伴い、クラス呼称の変更
飼料添加物への禁止薬物混入が発覚し、156頭が競走除外に
それに伴い、給与の10%を3ヶ月返上
11月 ジャパンCの外国馬出走0頭を達成
2020年(令和2年)
2月 ジャパンCに参戦した外国馬の褒賞金を一部変更
3月 弥生賞の名称をディープインパクト記念に変更
9月 馬場情報の追加【芝馬場のクッション値】
2019年6月に、残念ながら降級制度が廃止されてしまいました。何でこのような事になったのでしょうか。そもそも降級制度って何ですか?古い時代、まだ競走馬が少なかった時代の名残りだという意見を耳にしますが、それを理解できる程のソースはないんですよね。サラブレットの生産数は1964年に年間わずか2000頭でしたが、そこからたった10年で3.5倍の7000頭まで増加させていて、バブル末期には10000頭を超えるまでになりました。その後、緩やかに減少していくのですが、それでも降級制度は維持されていたじゃないですか。つまり、競走馬が少ない時代に数を多く使ってもらう事、競走生活を延長させる事を目的とした降級制度が、いつの間にかそれぞれの競走馬の能力に適したクラスで出走させる事に変わったのではないでしょうか。
もちろん、その弊害として下級クラスがダブつく事はやむを得ません。しかしですね、上級クラスが多ければ良いってわけじゃないのですよ。無理矢理レース数を増やして上級クラスが増えたところで、競走馬の能力が低ければハイレベルな戦いが見られるわけじゃないのだから。上級クラス=ハイレベルな戦いという図式は頭から捨てましょう。
逆にハイレベルな戦いって何?と言えば、それは実力が同程度の馬同士の白熱した戦いだと私は思います。ファンが条件戦に望むのは、特定の馬が圧勝する競馬ではなく、同程度の能力を有する馬同士の白熱したレースであり、そのためには馬券に絡む事が重要です。ところが、馬券に絡んでも昇級しない馬がいます。そう2,3着馬です。10頭以上が走るレースで勝つのは基本1頭ですから、条件戦の2,3着馬はいつまで経っても昇級できませんが、そのクラスでは明らかに地力上位ですし、上のクラスでもバンバン活躍できる馬かもしません。そうした馬を降級させる事は、能力の不均衡を招き、白熱した戦いから遠ざかってしまいます。
一方で、若かりし頃の激走のおかげで賞金だけ持っている馬も白熱した戦いには参加できません。そのクラスにふさわしい実力がある、あるいはそうなるだけの成長の見込みがあるという馬ならまだしも、そういった馬の多くは上級クラスで跳ね返され続けて、馬場掃除屋のような扱いを受ける事が散見されます。普通に考えたら、そうした馬にハイレベルな戦いを望むのは酷でしょう。しかし、降級することで自分の能力に合ったクラスに出走できる事となり、同程度の能力を持った馬が戦う事になります。
つまり、降着制度はそうした馬達を拾い、適切なクラスに配置換えをさせるための制度にするべきなのです。それがファンの望む白熱した戦いとなり、結果、売上増に繋がるため、降級制度は廃止していけなかったのです。
たしか以前、他の記事でも書きましたが、私が昔から提言しているように、降着制度は世代別限定戦で得た賞金のみを半額にするべきです。こうすれば上記の配置換えは比較的容易にできるのですよ。それはなぜかと申しますと、3歳馬は6月以降、古馬との戦いがメインとなります。クラシック戦線など重賞競走で走ってきた馬はともかく、それ以外の条件馬などは各クラスで歴戦の古馬と戦って勝つ事でクラスを上げていきます。その戦いは全世代を相手にした戦いであり、そこで得た賞金は特定の世代同士で争った賞金とは価値が違うのです。弱い世代もあれば強い世代もあるだから、価値が違って当然ですよね。
という事は、古馬相手に戦って得た賞金は半額にする必要がないのです。古馬が古馬相手に戦って得た賞金はそのままで、3歳馬が古馬相手に戦って得た賞金は半額にしますって不公平ですもんね。斤量の差云々は、その時の能力差をなるべく均等にするためのもので、決してハンデではないですし、その理屈を持ち出すなら、牝馬が牡馬混合で得た賞金も毎年半額にしなきゃいけないですしね。
例えば、3歳馬が古馬相手に重賞を勝ったとします。明け4歳でもいいです。そうするとそこで得た賞金は半分の半分になるのですよ?3歳夏のハンデ戦中京記念や北九州記念では勝てば1950万、2着でも800万が加算されますし、明け4歳で賞金の低い京都牝馬Sや中山牝馬Sでも1着1800万円、2着700万円が加算されます。しかし、降級すればさらに半分に減額されてしまいます。
仮に、1000万条件から挑戦した馬でも勝てば降級したとしてもOP入りは間違いありませんが、重賞の出走順位を決める賞金面からすればさらに半額とされるため大きな不利益を被ります。重賞を勝って1800~2000万を加算できたと思ったら900~1000万と言われるわけですからね。また、2着だったとしても降級するとOP入りどころか準OPに昇級するのがやっとです。賞金面ではわずかに900万+350~400万=約1300万ですからね。重賞2着となったのにOP入りすらできず、重賞より下のOP競走にも出走できないなんて、重賞の価値が疑われると思いませんか。このように古馬相手に戦って得た賞金を半額にする従来の降着制度は公平性を欠きますし、OP競走や重賞で活躍した、あるいは活躍できる馬をないがしろにする欠陥制度なのです。
一方、世代間の戦いで得た賞金というのは疑問符が付く賞金です。クラシックにも出走できなかった馬が次々に条件戦でブッコ抜き、古馬重賞までかっさらう世代もあれば、クラシックで掲示板に乗るような馬が同年の夏、秋の古馬相手けちょんけちょんにやられる世代もありますから。しかし、賞金面ではどちらも同じ様に扱われます。おかしいですよね。
全世代を通して戦った得た賞金は価値がありますが、レベルの低い世代同士で戦って得た賞金の価値はそれと同じではないのです。それを適正化するには世代間で得た賞金は半額にし、それ以外の全世代を相手に戦って得た賞金はそのままにする必要があります。それにより、全世代を通じた評価が可能となるので適切なクラス配置ができ、それがファンの望むハイレベルな戦いに繋がります。
ちょっと話はズレますが、昔、3歳時に未勝利、500万特別、1000万特別を勝ったバンデという馬がいました。デビュー時から全て2000m以上のレースを使い、しかも逃げ馬という長距離戦では堪らない馬だったのですが、準OPの身でありながら菊花賞に挑戦しました。そこでステイヤーの片鱗を見せつけ、3着に逃げ粘る力走を見せたのです。その後、年明けの準OPを勝ってOP入りすると阪神大賞典でも3着に入る好走を見せ、ステイヤーの大一番であるよ天皇賞・春を目指す形になりました。ところが、残念ながら賞金が不足しており、出走が微妙な状況でした。そりゃそうです。バンデは準OPまでしか勝っていないのですから。
しかしですね、良く考えてみれば前年の菊花賞で3着、前哨戦の阪神大賞典でも3着、しかも長距離戦にもってこいの逃げ馬で、上がり最速をバンバン出す逸材です。普通に考えたら、出走すれば人気になりますよね?メンバーにもよりますが、5~7番人気辺りのダークホースの扱いを受けると思いますよ。しかし、賞金面ではOP実績は無しという扱いなので、出走が危ぶまれる事態となったのです。
結局バンデは本番3週前の大阪HCで賞金の上積みを狙いましたが、アホのシュタルケが控えたために3着に敗戦。天皇賞・春への出走は断たれる事となりました。これを見て私は何てもったいないのだろうと思ったのですよ。こういう馬こそ拾ってあげるべきですよね。売上至上主義であるなら、なおさら重賞で馬券に絡んだ馬こそ重宝するべきであって、それに合わせた収得賞金制度にするべきでなのです。
閑話休題、まとめると降級制度を廃止する必要は無かった。世代間で得た賞金のみを半額とする事で、適正なクラス分けが可能になる。下級条件がダブつく事も減少し、ハイレベルな戦いが増える。という事ですね。それなのにJRAは降級廃止を強行するなんて、若くして稼いでしまった馬のその後は不安になりますね。おそらくハイレベルな戦いが増えるというのは建前で、競走馬のサイクルを早める事に主眼を置いた施策なのでしょうが、多様性を無視するJRAらしい策にただただ唖然としますよ。理事長、本当に日本競馬の事考えています?
それから降級制度の廃止に伴い、クラス呼称の変更も行われました。これには激おこプンプン丸です。JRAの発表では『原則として勝利度数によるクラス分けとなることから、お客様にとってより分かりやすい呼称とするため』とその目的を説明していますが、これはアホとしか言い様がない。
まず、クラス分けについて皆さんはどうやって覚えました?私は曖昧にたぶんこうだろうなぁと思っていたものを、ダビスタにハマって攻略本を読んでいた時に覚えました。そう、最初は曖昧なんですよね。昔はそういった事を調べるのは大変でしたが、今はネットで簡単に調べる事ができます。クラス分けが勝利度数とイコールにならないって、ちょっとかじった初心者でも知っていますよ。にもかかわらず、『お客様に分かりやすいように』という責任をこちらに投げかける理由で呼称を変更した事は、逆にお客様をバカにしていると感じるのですよ私は。
それが完全に勝利度数によるものに変更されるのであれば理解できます。それなら重賞2着だろうが、地方競馬で勝利しようが、1勝したら500万条件(1勝クラス)、2勝したら1000万条件(2勝クラス)、3勝したら1600万条件(3勝クラス)になるわけですからね。
しかし、現状は違うじゃありませんか。呼称を変更しただけで、クラス分けの方法自体は変わっていないなんて、わざわざする必要のない変更をして最も大事にするべきファンを侮辱し、関係者を混乱させ、関係各所にもJRA組織にも無駄な費用を掛けさせるだけの愚かな方策ですよ。慣れれば良いという問題ではありません。
それにクラス呼称だって立派な伝統ですからね。昔から○○万円以下という形で連綿と受け継がれて慣れ親しんだ呼称なのです。それを変えるなんて、着物や浴衣をまとめて和服と呼ぶようなもんですよ。人力車を人力タクシーと呼ぶようなもんですよ。分かりやすいでしょ?って言われても実際には違うのだから、余計な事はせんでよいのです。
だいたいね、2歳重賞をたくさん増やして容易に賞金を獲得できるようにしましたよね?重賞2着となれば1勝馬でもクラス上がりますよね?地方競馬に転出して1~3勝後に戻ってきたら0勝馬なのにクラス上がりますよね?中央所属のまま地方競馬で勝利してもクラスが上がりますよね?地方との交流重賞でもそれは同じですよね?1000万条件や準OPの馬が半年ほど出走しないなぁと思っていたら、いつの間にか地方重賞で勝利、または連続2着とかでOP入りしてるの何回も見たんですけど。地方競馬の成績はJRAでは反映されないのに、賞金は反映されるから勝利度数とクラス分けは異なりますよね?
そこら辺が問題なのです。原則だからいいだろって話じゃありません。降級制度を廃止し、ついでにスーパー未勝利戦も廃止して地方への転出を加速させている上に、JBCを京都競馬場で開催するなど地方競馬との交流も深めているのですよ?それによってクラス分けが原則通りにならないケースが増加すること、そしてそれがファンや関係者の混乱を招くことが問題なのです。
あれ?GⅠなのに1勝馬が出ているよ?
2勝馬なのに何で2勝クラス(1000万条件)に出れないの?
0勝馬なのに1勝(2勝)クラスに出走しているのは何で?
こういう疑問は絶対出てきますよ。初心者であればあるほどそう思います。その結果、よく分からなくてインターネットで調べるのです。そして『なるほど、収得賞金でクラス分けしてるのね』となり、疑問を浮かべるのです。『クラス呼称は前の方が分かりやすいんじゃね?』とね。
なぜ、そうした部分には頭が回らないのでしょうか。初心者に分かりやすくという目的すら達成できていないのですよ?これを承認した理事長も頭おかしいと思うのは私だけかなぁ?できる事なら、次の理事長の鶴の一声でクラス呼称を再変更してほしいくらいですし、これから出るであろう競馬ゲームは全て以前のクラス呼称を使用して抗議してほしいもんです。
ちなみに私は○○万条件と言い続けます。400万以下が500万以下になったのと意味合いが違いますからね。断固として拒否します。
続いて、同じ6月には前代未聞の薬物事件が起こりました。6/15,16に行われる東京、阪神、函館の出走予定馬の中に、禁止薬物が含まれた飼料添加物を摂取した可能性がある出走予定馬がいる事が判明し、疑いのある出走予定馬全156頭を競走除外とする措置が取られました。
事の経緯はこうです。6/14に日本農産工業㈱がJRAファシリティーズ㈱を含む計4社に販売した飼料添加物「グリーンカル」の一部に、禁止薬物テオブロミンが混入している事が判明しました。本来であれば公益財団法人 競走馬理化学研究所の薬物検査を結果を待ってから納品されるべきものですが、検査結果を待たずにトレセンに納品されていたそうです。そしてそれを摂取した可能性のある出走予定馬は、公正性競馬の観点から全頭が競走除外となりました。
原因は日本農産工業がJRAが示す薬物検査実施要領を遵守しておらず、競走馬理化学研究所およびJRAファシリティーズからの確認要請に対しても問題なしと回答した事が最も大きな原因です。しかし、競走馬理化学研究所およびJRAファシリティーズも薬物検査実施要領に適合していない製品を流通させない体制を整えていない事に対して責任があります。貰い事故のように考えられては同じ事を繰り返します。アホな業者にはもっと突っ込んで確認できるようにしてもらいたいですね。
JRAからすれば貰い事故のような形になりましたが、競走馬理化学研究所はJRAが設立した組織であるため、少しでも怪しいとなれば調査および流通の中止を行える権限を与えてもいいかもしれません。
この件に関しては理事長は6/18、7/5の二度にわたって声明を発表し、陳謝していますが、本人はこの前代未聞の事件の最中、私用で英国のロイヤルアスコット開催を楽しんでいたそうですね。しかも、事件の一報を受けても予定通りに休暇を満喫してから帰国したというじゃないですか。これがもし本当なら理事長としての資質どころか、組織のトップとしての資質を疑いますよ。後に給与10%返上を三ヶ月の処分をしたという事ですが、これには適切な対応を怠ったという意味も含まれている気がするのは私だけでしょうか。
さらに一部報道では、これに対するJRAと理事長の責任を追及した某生産者が理事から『そんなこと言うなら理事長は天下りに戻りますよ!』と言われたとあります。これガチなら相当ヤバイですよね。天下りに戻る=生産者が恐れるという図式が透けて見えますが、それって生え抜き2代目の理事長が生産者に恩恵のある施策を講じてきたという事になりませんか?じゃあ私がこれまで長々と書いてきた内容は、ファンのためではなく生産者のためにやってきた事なの?
おいおい・・勘弁してくれよ。というか本当なら理事長以下、全員辞任してくれ。公正競馬は謳う組織なのに、その組織の経営陣が公正から遠い場所にいるなんて滑稽どころの話じゃないだろ。
よくよく考えてみれば、理事長が就任した直後に起こったピンクブーケ事件も、コレと同じ案件じゃないか。新馬戦で一位入線したピンクブーケから禁止薬物が検出され、賞金や手当を没収した上で、当該厩舎の出走予定馬も取り消したのに、調べてみたら製造段階で混入していたから調教師はお咎め無し。ただし、賞金も手当も戻ってこないし、JRAからの補填もなし。JRAの処分もなし。再発防止策を公表して終わりしたのが、ピンクブーケ事件です。
この時のJRAの発表はこうです。
こちらはラジオNIKKEIさんのニュースから引っ張ってきたものです。きちんと書いてあります。『適正なロット管理を行っているか確認したうえで販売する』、『薬物検査実施要領を遵守する』と。今回はどうでしたか?JRAファシリティーズは適正なロット管理を怠っており、日本農産工業は認識に齟齬があったと言い訳をして薬物検査実施要領を遵守していませんでした。貰い事故だと思ってなぁなぁにしてきたツケが、ここで回ってきたのです。
そうであれば前述した給与10%返上を三ヶ月の処分じゃ足りないですよね。同じミスを繰り返し、さらにデカイ問題を引き起こしたのだから。確かにいずれも業者に問題があります。ロットの確認という基本の認識に問題があるとはなかなか考えないでしょう。いずれの場合も容易にミスがあったと発見できる事象ではありません。しかしですね、一回経験していますよね。それで再発防止策を公表して遵守させたのですよね。それで同じような問題が起こるのであれば、それは対応が甘いか、もしくは指導力が不足しているかのどちらかです。もし、これくらいで良いと思っていたのであれば、その認識の甘さこそが根本的な問題だと思いますし、理事長の手腕を問われても仕方ないのではないでしょうか。
⑦に続く
終わりませんでした。
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