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JRA理事長の功罪は?⑤

やっと2019年まで進みました。結構不満が溜まっていたのでしょうねぇ。かなりズラズラと書き殴ってしまいました。下手したら今週終わらないかと思いましたが、ダービーの時のあの長々とした記事のようにはしたくない!との一心で、何とか短くまとめています。ただ、昨年も色々と面倒な制度改正があるんですよね。あと2回で何とか終わらせましょう。

2019年(平成31年)
1月 一部OP競走をリステッド競走に格付け
1月 若手騎手競走の騎乗資格を見直し、勝利度数を撤廃
3月 女性騎手の減量制度を導入
6月 降級制度を廃止
   降級制度の廃止に伴い、クラス呼称の変更
   飼料添加物への禁止薬物混入が発覚し、156頭が競走除外に
   それに伴い、給与の10%を3ヶ月返上
11月 ジャパンCの外国馬出走0頭を達成

2020年(令和2年)
2月 ジャパンCに参戦した外国馬の褒賞金を一部変更
3月 弥生賞の名称をディープインパクト記念に変更
9月 馬場情報の追加【芝馬場のクッション値】


2019年1月にリステッドの格付けを導入しました。これにより重賞とOP競走の間に事実上の新しいクラスが誕生した事になります。リステッド競走は海外競馬では良く目にする機会がありましたが、日本では【準重賞】と訳されるように、OP競走よりは重要だが重賞格付けを得ていないレースに対して付けられます。

つまり、重賞に次ぐ重要な競走である事を示すと同時に、レーティングの対象となる事で広義にはレースの格付けだけでなく、競走馬の評価にも影響する事になりますね。さらに、リステッドの勝ち馬は国際セリ名簿基準において太字で記載される、いわゆるブラックタイプとなりますので、引退後において一定の評価を得る事ができます。そのため、生産界も反対する人はいないでしょう。

また、リステッドの格付けの基準は日本グレード格付け管理委員会が決定しているそうで、過去3年間のレースレーティングの平均が100ポンド(2歳戦および牝馬限定戦は95ポンド以上)以上であればリステッド分類されるそうです。逆に、これが97ポンドを下回った場合は自動的にリステッドの格付けを失うとの事です。ただし、レーティングが100を超えたとしても、当該レースをリステッド競走とするかどうかはJRAが判断する事になります。

私個人は大いに賛成ですが、あくまで重賞ではなくOP競走だという点を周知徹底してほしいと思います。前述のように【準重賞】だからほとんど重賞馬だろ、という考えの素人がわめき散らすのは勘弁して欲しいですからね。

それから先ほど述べた『リステッドの格付けはJRAが判断する』という点については、格付けにおいてJRAの恣意的な介入が認められるという事です。『理事長の功罪③』で取り上げたホープフルSの怪しいGⅠ昇格と同じように、格付けに恣意性が介入するのは好ましくないのですよ。もちろん、GⅠの昇格・降格など止むを得ない部分はあります。日本は毎年同じ条件で繰り返す競走を重賞(重ねて行う賞)としているので、一時的にレートが上がったからと言って5年間だけGⅠにしますとかはできませんし、そんなレースを格上のGⅠだ、GⅡだとした所で、周りから認められるのは困難でしょう。

しかし、リステッドは重要なレースである事を示す事を目的としており、それはレーティングで機械的に判断できるじゃないですか。JRAが興行上の目的等でレートの高いOP競走を恣意的にリステッドから外す事は、その勝ち馬は恣意的に過小評価するのと同じだと思うのですよ私は。

例えば、メイSや巴賞はリステッドになっていませんが、過去3年の平均レートは102.75ポンド、103ポンドと高レートですし、勝ち馬の最高レートは共に109ポンド、過去3年の勝ち馬の平均レートは108.3ポンド、105.6ポンドですから、十分リステッドとしての伝統と格式を有していると思います。それなのにリステッドから排除されるなら、リステッドの格付けの必要性が問われかねないのでは?と危惧してしまいます。

まぁこれは降級制度の廃止と大きく絡んでくる問題なので、機械的に判断するのは難しいのは分かりますが、少なくとも導入後5年を経過する2024年までには、しっかりとリステッドを分類してくれる事を期待します。


続いて、2019年3月から女性騎手に減量制度が導入されています。俗に言う菜七子ルールですね。『女性騎手の騎乗機会の拡大をはかり、長く現役を続けられる環境を整える』事を目的として、永続的に2キロ減を適用するこの制度ですが、私個人はぶっちゃけ差別だと思っています。

そもそも、混合競技を除けば男女が同じ競技を同時に行う事自体がスポーツ界では珍しいのですが、そこに抗いようの無い理由で差を付けてしまったらただの差別ですよね。男性はどう頑張ったって女性と同じ様に取り扱われない、同じ様に取り扱われたいのであれば性という根本的で、かつ簡単に変更できない部分を変えなければいけないわけです。それは単に男女差別と言うのではないでしょうか。

また、JRAの見習い騎手に対する減量制度は、下記のようなものです。

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見習い騎手の時点で既に斤量以外に勝利数でも差を付けられています。これを差別と言わずなんと言うのでしょうか。勝利度数は現場の習熟度を測る指針ですから男性でも女性でも変わらないハズで、勝利度数も変更する必要はどこにもないのですよ。仮に男性の30勝、50勝、100勝の区分で減ずる斤量に女性は2キロを加算するってんなら、まだ理解できます。しかし、ただでさえ性別を理由に恩恵を受けているのに、勝利度数でも追加で恩恵を受けるってのはやりすぎでしょう。個人的には止めてもらいたいくらいです。

この制度についてJRAは『柔軟に見直していくことも考えている』としていますが、それなら『1年ないし2年毎に見直しをする』と明確にした方がよっぽど納得できますよ。というか柔軟に見直すなんて事をJRAがしますかね?柔軟に見直さなければいけない制度なんてかなりありますが、見直しが面倒だから放置するか、もしくは降級制度のように適当な理由を付けて廃止にするか、でしょう?そんJRAの言葉を真に受ける人はいないと思いますがね。

それに減量が適用されるのは平場のみですが、現在JRA唯一の女性騎手である藤田がどれくらい平場で勝っているか知っているのでしょうか。全113勝の内、106勝が平場ですよ?8/26現在、見習い騎手を脱した若手騎手は藤田を除いて11名いますが、その内リーディング50位以内に入っているのは6名です。その6名の勝利数と平場の勝利数、その割合を見てみましょう。

横山武 163勝中135勝、82.8%
西村  103勝中  88勝、85.4%
坂井  133勝中105勝、78.9%
松若  332勝中256勝、77.1%
鮫島克 195勝中147勝、75.3%
武藤  122勝中113勝、92.6%

藤田は113勝中106勝、93.8%なので、他の若手騎手より重賞や特別戦で勝利する事ができず、平場でしか勝てない騎手という事になりますね。事実、今年に至っては、特別戦の勝利は得意の新潟で挙げた1勝のみです。なぜ平場でしか勝てないのか?と言われれば、それは減量の恩恵があるから、というのが正解でしょう。

ちなみにルメールや川田、武さんは60%台ですし、戸崎、三浦、和田、幸などは70%台です。ここから推測すると、概ね80%前後ならいっぱしの騎手、75%前後でそれなりに特別戦で活躍する(信頼できる)騎手と言えます。

こうして数字を挙げてみれば、確かに女性騎手の騎乗機会は拡大していますし、勝つ事で現役を長く続けられる事でしょう。しかし、JRAが目指す目的は『女性がそこそこ乗れて、そこそこ長く現役を続けられる』事ですかね?『女性騎手が活躍する』事が目的じゃないのですか?

未だに毎週のように『菜七子○○勝目を挙げる』『菜七子、2週連続V』『菜七子の今週の騎乗馬』などの偏向報道が目立ちますが、藤田の成績は男性なら見向きもされない成績ですよ?女性だから注目されているのです。それは女性騎手が活躍するという大きな目標から見れば、むしろマイナスにしかならないのでは、と思わざるを得ません。

現在、競馬学校でデビューを目指す女性騎手候補生は、藤田のように競馬が好きで真摯に取り組める輩ばかりではないでしょう。実力以上にチヤホヤされる事に勘違いする人も、逆にプレッシャーになる人もいると思います。そうした女性騎手をフォローする意味でも、JRAとして『この減量制度を導入する事で、まずは平場で勝ち星を挙げてほしい。そしてそこから特別戦や重賞で活躍できるように切磋琢磨してほしい』と言えばいいのです。そこまで言えば、いくら頭の弱い女性騎手がいたとしても『ハンデをもらっているからこその成績』と気付くでしょう。

そこまでして初めて『女性騎手の減量制度導入』が『女性騎手の活躍』という目的に繋がると思います。そうでなければ、ただの客寄せパンダを確保したいという魂胆にしか見えません。というかJRAの真の目的はそれかもしれませんね。どうせ女性騎手の活躍なんて無理だから、せいぜい売上と広告に貢献してくれたら良いとか考えてそうです。

まぁ、もし女性騎手の騎乗機会の拡充を目的とするのであれば、減量を増やす事ではなく、優先出走権を付与する事が適していると思います。短期免許の時に少し書きましたが、見習い騎手は乗れてナンボです。乗れないと技術の向上もクソもありません。だから減量を付ければ乗せてもらえるだろうとJRAは考えていますが、見習い騎手が乗るのは平場の下級条件ばかりです。平場の下級条件は頭数が多く、除外数も多いので、見習いや女性騎手に優先出走権を付与すれば優先的に騎乗依頼は来ますよね。ついでにスリーアウトの対象から外すなり、緩和するなりすれば減量以上に騎乗機会の確保はできると思いますよ。

そういえば、2019年1月に若手騎手限定競走の騎乗資格が見直されてましたね。今までは免許取得後7年未満の見習い騎手に限定されてきましたが、勝利度数が撤廃されたため、若手騎手なら誰でも騎乗する事ができるようになりました。ただ、横山武や坂井瑠星、松若風馬などの重賞勝ちの経験がある通算100勝以上の若手も騎乗できるのはどうなの?と思いますが。

いずれにしろ、女性を含めた若手騎手の騎乗機会の確保は、組織の新陳代謝に繋がる重要な問題です。それをろくに対策もせずに放置し、あまつさえ外国人騎手を受け入れては若手騎手は育ちませんよ。関東と関西でも若手の育て方に違いがありますし、統一する制度があればと思いますよね。

例えば、私が前々から言っている若手騎手に一定期間の海外遠征を義務付けるとか、デビュー後に関東と関西のそれぞれにフリーで所属するとか、やりようはいくらでもあるのです。何か問題があっても、騎乗機会を得るために優先出走権を付与すれば騎乗機会は確保できますし、武さんはおろか、川田や浜中、北村友や松山より下の世代を発掘しないと、5年後には上位陣の顔ぶれが悲惨なものになるかもしれません。

武さん、福永、ルメール、ミルコ、池添、和田、ノリさん、岩田父、戸崎、北村宏、内田、幸など40歳後半~50歳後半になって軒並み引退したらどうします?TOP20が川田、松山、横山武、藤岡兄、岩田Jr、吉田隼人、田辺、団野大成、三浦、西村、坂井瑠星、北村友、松若、藤岡弟、菱田、亀田、石橋、丸山、鮫島克、大野ですよ?ちょっと笑えないですよね。

継続して組織を運営するには、継続した人材が必要で、JRAという組織ではそれが出来ていても、自分たちの商売の基本となる肝心要の騎手の人材が不足しているなんて滑稽もいいとこです。これこそ理事長が真っ先に取り組むべき問題だと思いますよ私は。

⑥へ続く



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