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レーンの斜行問題の処分は妥当か?

ヴィクトリアMで2着に入ったソダシの鞍上ダミアン・レーン騎手に対し、JRAは『発走後まもなく内側に斜行したことについて過怠金50,000円。(被害馬:15番・12番・11番・9番)』と発表しました。

被害馬はルージュスティリア、ナムラクレア、ナミュール、クリノプレミアムですが、ナミュールはレース直前に2番人気に上がった有力馬であり、この処分発表後にはネット上でレーンに対する様々なコメントが寄せられています。その多くが、

「過怠金5万円じゃ処分が軽い」
「騎乗停止にしろ」
「短期免許組は騎乗が荒すぎる」
「やったもん勝ちかよ」
「某大手馬主への忖度かよ」

というものでした。ナミュールの馬券を買っていた人たちの怨嗟の念が聞こえてくるようですが、正直なところ、辟易しますねぇ。こうした言い分は事象がどうとかではなく、結果がどうだったかを重視した言い分に聞こえるのですよ。

例えば、A馬が内のB馬に対して接触せずにほんの少し寄せたら、B馬が驚いてさらに内に寄せて行って、それにより他の複数頭が接触して落馬した場合、接触せずにほんの少し内に寄せたA馬を降着にしろって言うのと同じじゃないかなぁと思うのです。つまり、被害馬の騎手のコメントや押圧や接触があった一部分だけにフォーカスして物事を見て判断するため事象を正確に判断できず、罪と罰のバランスが著しく悪くなってやいませんか、と思ってしまうのですよ私は。


■事象の整理
今回の斜行がどんなものだったか整理しましょう。まず、スタートしてからソダシが内へ向かいます。大外枠の馬がスタートして内に行くの当然ですし、隣の15番ルージュスティリアも呼応するように内に向かっています。前後の位置関係で見るとソダシの方がルージュスティリアより1馬身弱ほど前、左右ではソダシはルージュスティリアから遅れて内に向かっています。

斜行の場面の正確な時計は分かりませんが、レース映像とPⅤ双方の公式映像から検証するに、実況の『3番手は外からソダシです。あとはララクリスティーヌが行って・・』という部分で斜行し、その後の『ルージュスティリア、クリノプレミアム・・』の部分でナミュールの鞍上横山武が手綱を引いているのが分かります。

この斜行部分をPⅤで見ると分かりますが、ソダシがルージュスティリア、ナムラクレア、ナミュール、クリノプレミアムの前をカットしたという事象はありません。それどころか、どこをどう見ても並走するルージュスティリアに寄っただけで、接触すらしていません。


ナミュールが受けた不利の原因と責任
ではなぜナミュールの横山武は手綱を引いたのかと言えば、外からナムラクレアとルージュスティリア、内からクリノプレミアムという3頭に同時に寄せられたからです。さらにクリノプレミアムは、ルージュスティリアが外に戻ってからも執拗に外のナミュールを押圧(肘で押しているようにも見える)し、ナムラクレアもナミュールが自分の方に来ないようにブロックしています。これがナミュールが下がった原因ですね。

これを見ると確かに事象のきっかけを作ったのはソダシですが、被害馬4頭が接触した主な原因はルージュスティリアとクリノプレミアムです。ソダシの鞍上レーンは勢いが付いていたとは言え、他馬に対する前カットも接触も無く、声がした方を確認しながらレースを進めていますので、これで降着や騎乗停止を求めるのはまず無理です。

ルージュスティリアはソダシに勢いがあったとはいえ少々敏感な反応で内に寄せてしまいました。前カットどころか接触もしていないソダシに驚いたのか、あるいは避けようとしたのか分かりませんが、鞍上の川田もすぐに外に誘導していますので、どちらに転んでも川田が処分を受けるほど悪くありません。ナムラクレアの浜中も、左右から押されたのを押し戻してポジションを確保しただけなので問題ありません。

残るクリノプレミアム松岡はソダシはもちろん、ルージュスティリア、ナムラクレアにも前カットされていませんし、押圧もされておらず、実は寄せられる前から外に寄せています。それがたまたま外から寄せられたタイミングだったわけですが、そこからナミュールを潰すかのように激しく押し返したのは、そこまでやる必要があったのかどうか甚だ疑問です。クリノプレミアムの左前方にララクリスティーヌが居たので、それを避けるためだったかもしれませんが、ルージュスティリアがソダシにした以上に外に対して過剰に反応したという印象を受けますので、松岡には大なり小なり処分があっても良かったのかなと思います。


以上のことから、レーンが過怠金5万円というのは妥当であると考えられますし、また、松岡にも戒告~過怠金5万円程度の処分があってもいいかなと思いますね。


■降着・失格のルール
降着と失格についてはJRAのHPに詳しく載っています。それによると

降着「裁決委員が、加害馬の違反行為により被害馬が走行を妨害されたと認める事象で、かつその妨害行為がなければ被害馬が加害馬より先に入線していたと判断した場合

失格「極めて悪質で他の騎手や馬に対する危険な行為によって、競走に重大な支障を生じさせたと判断した場合

という条件を満たした場合に降着・失格となります。また「なお、審議においては、加害馬・被害馬の着順や着差だけでなく、被害の程度、事象が起こった場所、事象前後の加害馬・被害馬の走行状況などの要素を総合的に勘案して決定」とも記載されています。


この事から見ても、今回の斜行の被害馬はいずれも加害馬ソダシより着順が下ですので降着がないことが分かります。また、騎乗停止については裁決委員のさじ加減一つではあるものの、今回は過怠金の上限どころか下限に近いレベルだと判断されましたし、映像等を見るとそれが妥当だと判断できますので、レーン憎しの私でも騎乗停止にしろとは言えません。残念。


■まとめ
結局、メジャーリーグやJリーグの審判同様に、JRA裁決委員の独断と偏見によるジャッジをしてきた事がこうした批判の原因になっていると思うのですよ。近年ではマシになったものの、まだまだ物議を醸すジャッジについて、審判側(ここでは裁決委員)から事情を説明するという姿勢が欠けています。ドイツかどこかのサッカーの審判が自分のジャッジについて取材を受け、自身の考えを説明している記事を見かけますが、JRAもそうした姿勢を見せる事が公正競馬への第一歩じゃないですかね。

仮に今回ナミュールにジョッキーカメラが付いていたとしても、公開しないでしょ?そういうトコだぞ。というか、ジョッキーカメラも騎手のスタイルによって視点がバラバラだから、もう少し改善して欲しいなぁ。

まぁジョッキーカメラもいいですが、まずは自分たちにとって良い事も悪い事も最大限詳らかに公開する姿勢を見せ、それについて丁寧に説明できるようになってもらいたいですね。


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