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2022年も顕彰馬は選出されず!!

先日、2022年度の顕彰馬選定記者投票が行われ、昨年に引き続き該当馬なしという結果に終わった事が発表されました。今年は、2020年に引退したアーモンドアイの初参戦が注目されていましたが、残念ながら一発通過とはなりませんでした。個人的には驚きでもありますし、納得できるとも言えます。顕彰馬制度については過去にこんな記事を書いておりますので、お時間ご都合よろしい方は是非ご一読頂けたらと思います。


さて、今年もこの言葉から始めましょう。

コレ意味あんの?

とね。


顕彰馬制度とJRA賞の共通する問題

毎年、同じ事を繰り返し書いていて恐縮ですが、顕彰馬制度とは『中央競馬の発展に多大な貢献のあった競走馬の功績を讃え、後世まで顕彰していくこと』を目的とした制度です。その選考は、年に一回『報道関係者による選定投票を行い、3/4以上の得票を得た馬が選定される』こととなっています。

一方、JRA賞は『中央競馬における活躍を讃えること』を目的とした年間表彰制度です。その選考は、『報道関係者による記者投票(各部門ごとに一人一票)』に基づいて決定されます。

これらの制度に共通するのは『JRAが内部の競走馬を表彰するにあたって、外部の投票に選出を任せている』という点であり、それが両者の問題点でもあります。

なぜ外部任せなのでしょうか。
なぜ内部の評価はまるっと無視するのでしょうか。
そもそも投票する外部の人間はしっかり評価できるのでしょうか。

毎年JRA賞がどんな結果になっているか、JRAはご覧になっているでしょう。一人一票という制約のため想像以上に偏った結果となっていますし、おおよそファンに説明できない、明らかに場違い、勘違い、筋違いな馬に投票される、特別賞の基準が曖昧などの問題が散見されていますよね。そうした問題から、ファンの心理とかけ離れた、あまり価値がない賞とファンに認識されつつあるのがJRA賞と言えるでしょう。

同じ『報道関係者による記者投票』によって選出される顕彰馬制度も同様のことが言えます。200名前後も投票者がいる中で、毎年のように投票数がわずか一票、二票というケースが見られますし、GⅠを1~3勝しただけで繁殖成績が乏しい馬も多く見られます。また、GⅠを5~6勝しても目立った産駒を出せずにいる馬や、GⅠ馬を10頭以上輩出しても競走成績が乏しい馬は票が伸びずに、ネット上で門番などと揶揄される始末です。

そうした投票を疑問に思うファンはネット上で散々声を挙げていますが、いつまで経っても制度の改善が見られず、毎年、溜息が出るような投票内容が散見される顕彰馬制度は、JRA賞と同様にファンの心理とかけ離れた表彰になってしまうのではないでしょうか。


改善案を考えてみる

こうした問題について、多くのファンが様々な改善案を提示しているため、私も同じように改善案を考えてみます。前述した2つの記事と内容が被る部分もあると思いますが、ご勘弁ください。


まず、以前の記事で述べた改善案は下記のとおりであり、現在の考えもおおむねこの通りです。

現在のGⅠ数は、グレート制導入以前の八大競走時代の3倍。1999年までの顕彰馬選考委員会が選出した顕彰馬の平均GⅠ勝利数は約3.2勝だが、2000年以降に始まった現在の選考方法では約6.4勝(特例分を除く)。これでは委員会で選出できる範囲を超えている。

そのため、第一に一定の基準に該当する競走馬をJRAが選出し、その競走馬について一定の成績を残したJRA関係者や報道関係者の投票を行い、その投票総数の3/4以上の得票を得た場合に選出する

一定の基準とは、1.競走成績が特に優秀(おおむねGⅠ6勝)、2.競走成績が優秀であって、繁殖成績が特に優秀(競走成績がGⅠ3勝以上、繁殖成績が種牡馬であれば5頭以上輩出し、かつGⅠ10勝以上、繁殖牝馬であればGⅠ馬を3頭以上輩出し、かつGⅠ5勝以上、3.中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬)を指す

過去の顕彰馬選考委員会の時代と現在ではGⅠの数も違えば、レースの価値も違いますし、海外遠征でも結果を出す馬もいれば、国際GⅠとJPNⅠを混同する輩も多いです。そんな現在において、GⅠ3勝馬が特に優秀と評するのは無理があるでしょう。さらに大ベテランの記者は旧八大競走の価値を重視するかもしれませんし、比較的若い記者はGⅠ勝ち星だけを価値として評価するかもしれません。このような価値観の変遷は人によって異なるため、基準を設けないことには取っ散らかって収拾がつかないと思いますね。

また、繁殖成績を考慮するという姿勢はとても重要です。なぜなら競馬はブラッドスポーツであり、血の継承こそが競馬の本質の一つだからです。現在の記者投票を見ていると繁殖成績が全く軽視されており、競走成績や記録、人気を他馬と比較してどうかという点にフォーカスされた投票が非常に多いように見えます。それは競馬そのものをを軽視していると同じではないでしょうか。

そうした部分に線引きをし、顕彰馬に相応しい成績の目安となる基準を顕彰する組織であるJRAがしっかりと示す事で、選出過程に明瞭性を持たせられます。これは健全な顕彰馬選考過程においては重要だと思います。


それに投票には自組織の人間も加わるべきです。私は記者投票が悪いわけではなく、記者だけに限定するのが悪いと思うのです。やはり報道関係者には利害関係が絡みますし、社の意向や虚栄心などもないとは言い切れません。そうしたものは騎手や調教師などでも多少はあるかもしれませんが、騎手や調教師は説明を求められますし、矢面に立つ側としてSNS等で疑惑や悪評が広まれば騎乗依頼にも影響がある可能性も想像できますので、あまりにも酷い投票行為は見られないでしょう。

重要なのは、JRA関係者が投票することによってJRAが責任を負うという立場を示せる点です。自組織で顕彰を行うのですからその選出に参加する事は当然ですし、基準を設けて明瞭性を持たせた事と合わせれば、健全な組織運営をしているとアピールするのに十分な方法と言えるでしょう。

ついでに一定の成績を残さないと投票に参加できないので、例えば、その成績をリーディング50位以内や同年のGⅠ勝利騎手などにすれば、年末にはそうした争いも話題になると思います。こうした改善をしていくことで、JRAにとっても、ファンにとっても中身のある顕彰に繋がるのではないでしょうかね。重要なのは多大な犠牲(笑)を払って日本競馬を根底から支えるファンの共感や納得を得られるか否かですから。


最後に、今年の投票を見て感じた事を書いていきます。まず、アーモンドアイは一発で通ると思っていただけに驚きを禁じ得ない一方、単にGⅠ勝利数だけでは評価されない点を示したという意味では納得できます。JRA賞とは異なり、一人四票まで投票できるので特定の馬だけに投票が偏ることもありません。そのため、純粋にアーモンドアイが顕彰馬に相当すると判断されなかったと解釈できます。

では、アーモンドアイが顕彰馬に相応しいか否かといえば、正直微妙だと思います。特にGⅠ勝利の大半が東京に集中している点や牝馬GⅠの多さ、両グランプリの回避や大敗は評価を大きく落とす要因です。史上初のGⅠ9勝は素晴らしいのですよ。しかし、ウオッカもそうですが、古馬になってから東京以外で走ったのは海外を除いてわずか一戦というのは中身が乏しいとも言えます。

戦った相手もキセキやダノンプレミアム、スワーヴリチャード 、フィエールマン、クロノジェネシス、コントレイル、デアリングタクトなど一見華やかに見えます。しかし、フィーエルマンは東京2000m、コントレイルとデアリングタクトは3冠達成直後の3歳馬と東京2400mで対戦するなど、アーモンドアイに有利な条件であり、同水準の相手はクロノジェネシスぐらいでした。

これだけ多くのGⅠが乱立して数を稼ぎやすい時代に、距離適性の名の下に守備範囲から外れたレースを使わない、苦手なレースは徹底的に避けるなどの一貫した姿勢を見せられたら、単に数を揃えただけではダメだと拒否されても仕方ありませんし、やはり文句なしで一発通過とならなかったのは投票者の良心が残っていたと思いたいです。


一方のキングカメハメハは、どんどん票数を上積みしています。過去5年分の得票数と得票率は以下の通りです。

2017年(平成29年)度 投票数11票、得票率5.3%
2018年(平成30年)度 投票数14票、得票率7.4%(ロードカナロア選出)
2019年(平成31年)度 投票数20票、得票率10.4%
2020年(令和  2年)度 投票数80票、得票率40.8%(キタサンブラック選出)
2021年(令和  3年)度 投票数141票、得票率69.5%
2022年(令和  4年)度 投票数144票、得票率71.3%

見てくださいこの伸びを。この間、選出された2頭は確実視されていましたし、定年まで門番を勤め上げたスペシャルウィークが退職された事も影響しているのでしょうが、強烈な末脚ですよ。先日、サンスポの柴田章利記者が得票率5%未満は候補から除外できないか、と提案していましたが、2017年のキンカメはあと一票足りなければ4.8%で候補から除外されていたことになるわけで、そう考えると除外寸前からの華麗な復活を見せたという事になりますねぇ。見事な後方一気です。

アーモンドアイと比べると競走成績は雲泥の差なんですが、同じ得票数を得たのは間違いなく繁殖成績を加味されてのことでしょう。ただ、ちょっと遅いですよね。キンカメの抹消は2004年秋でしたから、チャンスはあと3回しかありません。来年はコントレイルと再挑戦のアーモンドアイが強敵となって立ちはだかるので、非常に厳しい戦いになるでしょう。

ディープを除いた日本馬では、GⅠ馬の輩出数や産駒のGⅠ勝利数は歴代最高クラスですし、牝馬三冠や顕彰馬、芝ダートを問わないなんて、これ以上ないほど評価できる成績なんですが・・・頑張ってほしいですね。


あとブエナは毎年、得票率が50%前後なので完全に門番でしょう。定年まで変わらないと思います。モーリスはその下位互換、残りは団子ですねぇ。今年で定年となるステイ、クロフネ、再来年定年のアグネスデジタルの分がどこに行くかが顕彰馬選出レースの鍵となりそうです。


というわけで、この顕彰馬制度は改正が必要だと思います。国税庁に対してなんら有効な手立てをしていないJRAなんですから、少しはファンの関心を引くことをしろと言いたいですね。

えっ?ウマ娘があるじゃないかって?そりゃ他力本願やろがい!!他の人の力ではなく、JRAの力を使ってファンが納得する何かを見せろって事!!!ホントに分かってんのかな・・・この組織は。


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