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歴代調教師の記録①

先日の矢作先生の記事を書いていて思ったのが、そういえば調教師の記録って滅多に見ないな、という事。そこで調教師の記録をいくつか調べてみました。なお、戦前、戦後の混乱期における記録は不明、不詳なものも多く、日本中央競馬会が発足した1954年以前の記録も公式に含まれていたりいなかったりラジバンダリするので、基本的に公式に準拠した内容となっている点をご了承下さい。

まず、肝心要のGⅠの勝利数からいきましょう。JRAおよび海外の国際GⅠをカウントしており、1984年にグレード制が導入される以前については八大競走(クラシック+天皇賞・春および秋、有馬記念)のみをカウントしています。グレード制導入以前の安田記念や宝塚記念、朝日杯3歳Sなどは除外している点に留意してご覧下さい。

最多勝はご存知、尾形藤吉先生の39勝です。ダービー8勝を含むクラシック26勝、天皇賞11勝、有馬記念2勝で、延べ28頭のGⅠ馬、クリフジとハクチカラという2頭の顕彰馬を育て上げた名伯楽ですね。現在と比べると当時は競走馬も少なく、馬房数制限もなかったため、馬を集める事が重要とされていましたが、その中で尾形先生は100を超える馬房数を管理していたと言われており、それだけ有力馬を多く預っていた事になります。そのため、この結果も納得できますね。

続いて2位は現役トップタイの31勝を誇る藤沢和先生です。先週の安田記念前までは海外を含むと角居先生に1勝差を付けられていましたが、グランアレグリアのおかげでキッチリ並ぶ事ができました。2歳戦から古馬まで満遍なく勝利を挙げていますが、特に古馬になってからの勝利数が多く、馬の成長を優先する藤沢先生のスタイルを証明する形になっていますね。また、天皇賞6勝はグレード制導入後は最多、天皇賞・秋6勝は尾形先生の7勝に次ぐ数字となっています。

そして3位は上で出た角居先生の31勝ですが、JRAのGⅠを優先したい派なんで同数3位とさせて頂きます。角居先生も2歳から古馬まで幅広いカテゴリーで勝っており、藤沢和先生と違いダートGⅠの勝利もあるのが特長です。また、海外GⅠも5勝挙げており、米国、香港、豪州、ドバイと様々な国で勝っている点は非常に評価できると思います。飲酒運転のポカがなければサートゥルナーリアのホープフルSが上乗せできたんですがね。

4位は池江寿先生の20勝です。とにかくグランプリに強い先生で、宝塚記念3勝、有馬記念4勝、合計7勝は歴代最多です。また、GⅠ複数勝利馬が多く、6頭で17勝を挙げていますが、ここ2年は重賞勝利は少なめで、アルアインに次ぐ新しい有力馬を抱えられるか注目ですね。

5位は同じく20勝の松田博資先生です。ブエナビスタ、ハープスターでお馴染みですが、アドマイヤドンやアドマイヤムーンで近藤オーナーともども武豊とやりあったお方ですね。2歳3歳で12勝と若駒に強いイメージがありますが、数字では6割とそこまでではありませんでした。個人的には、勝つよりも実力を見せれば負けても良い的な考えで好きになれません。

6位は池江泰郎先生の19勝です。2011年2月の定年なのでもう10年近く経つんですね。池江郎先生と聞くと、どうしてもディープよりマックイーンが先に思い浮かんでしまいます。時代の違う日本競馬でマックイーンとディープという2頭の顕彰馬を育てた名伯楽ですが、ディープの失格事件という問題も引き起こしており、手放しで評価できない点もあります。なお、個人的には今でもマックイーンの天皇賞・秋の降着劇はおかしいと思っています。

7位は堀宣行先生の18勝です。堀先生はJRA調教師最多の海外GⅠ6勝という記録を持っています。その内5勝は香港で挙げたもので、香港といえば堀先生といったところでしょうか。ただ、国内ではそれほどパッとした管理馬がいるわけではなく、若駒はドゥラメンテ、サリオスの3勝に留まるなど、競走馬を完成させるまでがもう一歩、といった印象を受けます。

8位は国枝栄先生の17勝です。国枝先生も藤沢先生と同じく満遍なく各カテゴリーを勝っていますが、ダートGⅠは未勝利ですね。牝馬三冠馬を2頭育てた唯一の調教師でもありますが、アパパネとアーモンドアイの2頭に引っ張られている印象が強いです。ただ、17勝中8勝が金子オーナーの持ち馬でもあり、そうした有力な関係者とのパイプを持つ関東有数の調教師である事は間違いないでしょう。

9位は石坂正先生の15勝です。こちらも正直ジェンティルドンナに引っ張られて、あまり他のGⅠ馬が思い浮かびません。2017年以降は重賞勝ちも無く、重賞49勝のまま来年2月定年は残念過ぎます。海外含めりゃ50勝ですが、なんとかあと1勝してJRA通算50勝に乗せて欲しいですね。

10位は藤本冨良先生と田中和一郎先生、松田国英先生が同数の14勝で並びました。いずれも海外GⅠ勝利はないため、管理したGⅠ馬の多い方から順に紹介します。藤本冨良先生は1930年~1987年に調教師をされており、顕彰馬のメイヂヒカリをはじめ12頭のGⅠ馬を育て、八大競走はダービー3勝を含む14勝を挙げています。メイヂヒカリ以外は全て違う馬でGⅠを勝った稀有な成績が特徴です。

田中和一郎先生はクモハタ、セントライト、トキノミノルと史上唯一3頭の顕彰馬を管理した調教師です。当時は八大競走のみが大レース(GⅠ級)として認識されていた時代で、顕彰馬の選定にも【繁殖成績】が多分に加味されていたという事もありますが、それでも十分な成績だと思います。また、ダービー3勝を含むクラシック10勝、9頭のGⅠ馬を管理するなど優秀な成績でしたが、通算勝利数については明確な数字が分かりませんでした。調教師顕彰者にも含まれていないので1000勝未満だと推測できますが・・そこまで低評価だとは思えません。不思議ですね。

松田国先生はクラッシャーとして名を馳せた調教師ですが、競走馬の将来を自分なりに考えた上でのスタイルでしたので、評価は各人の好みに分かれると思います。管理馬には史上初めて芝、ダートでGⅠを勝ったクロフネ、史上初めてNHKマイルCとダービーを勝ったキングカメハメハ、牝馬として最多となる全レース連対記録(12レース)を持つダイワスカーレットなどがいます。

13位以降にも素晴らしい調教師がたくさんいます。調教師顕彰者の稲葉幸夫(15位タイ)、伊藤雄二(19位)、久保田金造(23位タイ)、武田文吾(23位タイ)、橋口弘次郎(26位)、二本柳俊夫(27位タイ)、松山吉三郎(27位タイ)などがおりますし、それ以外にも瀬戸口勉(15位タイ)、白井寿昭(18位)、境勝太郎(23位タイ)などですね。10勝以上を挙げた調教師を表にまとめると下記のようなになります。

調教師2

なんだかちょっと見辛くて申し訳ないのですが、通算勝利数が同数ならJRAの勝利数が多い方、それでも同数ならGⅠ馬の数、顕彰馬の数が多い方を上にしています。JRAの勝利数だけを見ると堀先生が大きく下がる程度で、他に大きな変化はありません。

続く

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