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今週の全米アルバムチャート事情 #100- 2021/10/9付

気が付いたらこの「全米アルバムチャート事情!」のここnoteでの記事も今週で100回目を迎えることになったようです。本当は100回の記念に何か特別なことをしたかったんですが、実は今週身内に不幸があった関係で、そのような祝い事っぽいことは控えさせて頂きます。次の節目の150回の時にはコロナも落ち着いてるでしょうから、その時は盛大に

今週も何とか週末までには連動のポッドキャスト、配信したいと思っていたんですが、上記の個人的事情もありその時間が取れませんでした。申し訳ないですが今週はお休みということで、来週はその分濃く行きますのでどうかご容赦を。取り急ぎ今週は上記のリンクからこれまでの配信内容でお楽しみください。

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さてさて今週10/9付のBillboard 200全米アルバムチャート、思ったより大きな動きがありました。正直今週も50%以上の確率でドレイクの『Certified Lover Boy』が4週目の1位をキープするだろうと思っていましたが、今週思いの外ドレイクのポイント減衰が大きかったことを受けて、先週予想で1位を奪い取る可能性4割と予想した、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン(YBNBA)の『Sincerely, Kentrell』が見事ドレイクを退けて1位に初登場。先週の予想ではドレイクは初週の25%程度のポイント、153,000ポイントを確保するのでは、と言ってたのですが、蓋を明けたら135,000ポイント、初週の22%という予想以上のポイント減で、137,000ポイント(うち実売10,000枚)を叩き出したYBNBAにわずか2,000ポイント差という僅差で1位をさらわれてしまいました

ルイジアナ州バトン・ルージュ出身の若手ラッパー(21歳)のYBNBA、実は現在ルイジアナの更生センターに薬物と銃器不法所持の容疑で勾留中で、公判を待ってる状態というから何だかなあ、という感じですが(ちなみにこの1位で2パック、リル・ウェインに並んで入獄中に1位を取ったラッパーになったらしいですがw)、この1位で2019年のミックステープ『AI YoungBoy 2』から2020年の『38 Baby 2』と『Top』に続いてこれでわずか2年の間に4枚のナンバーワンを記録するというえらい勢い。実は2019、2020、2021と3年連続でナンバーワンを記録するというのは、ヒップホップ・アーティストでは彼だけ。もう一人2019、2020、2021の3年連続で4枚のナンバーワンを記録してるのは、何とテイラー・スウィフトだけ(2019年『Lover』、2020年『Folklore』と『Evermore』、2021年『Fearless (Taylor’s Version)』)という記録です。肝心の内容ですが、今回自分の本名をタイトルに入れるなど、ちょっとエモっぽいサウンドとテーマで普通にトラップしてますね。サウンドやフロウはなかなかキャッチーではあるんですが(それが売れてる理由か)でも何で入獄中でアルバム出せるんだろう。いつもこういう話を聴くと不思議に思うんですが。

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で、今週のトップ10内初登場は1位のYBNBAのみ。続いて11位以下100以内の初登場アルバムのご紹介に行きます。まずは11位初登場で惜しくもトップ10を逃したのが、今週も来ましたKポップ軍団。今週来たのはあのTWICEと同じJYPエンターテインメント所属の5人組ガール・グループ、iTZY(イッツィ)のデビュー・アルバムにして初チャートイン・アルバム『Crazy In Love』。

ほぼTWICEと同じ、2000年代っぽいメインストリーム・ポップ路線なんですが、このITZYは5人全員がラップもできることになっている点で、楽曲の感じも、ファースト・シングルの「Loco」なんか聴く限りにおいてはTWICEよりはややエッジが立ってる感じ。まあ同じ事務所から全く同じキャラのアーティスト出すはずがないので、微妙に差別化しているのかもしれません。後で書きますが、来週のチャート対象期間には、TWICEのEPも出るので、来週もトップ10にKポップのガールグループが登場する可能性大。すごい時代になったもんだ。

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続いて19位に初登場してきたのは、先週トップ10入予想したけど惜しくも逃してしまった、G-イージーの4作目のアルバム『These Things Happen Too』。彼の2014年のデビュー・アルバム『These Things Happen』(3位)の続編的な位置づけらしく、いくつかトラック聴いた感じではなるほど結構気合入れて作ったんだろうなあ、というテンションが感じられる作品。

ビービー・レクサとのコラボ・シングル「Me, Myself & I」(2015年7位)のブレイク以降もっぱらフィーチャリング仕事が多いけど、エミネム・フォロワー的なキャラ(ロジックとかとはちょっと違う)が固定ファンを集めているのか、これまで3作は全てBB200のトップ5以内に入ってたんだけど、前作から4年空いたのが災いしたか、今回はやや振るわないチャートアクションになってます。

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36位初登場は、サンディエゴをベースにする4人組ロック・バンド、エンジェルズ&エアウェイヴスの6作目になる『Lifeforms』。このアルバム、今週実売13,000枚を売り上げて、今週のヴァイナル・アルバム売上ナンバーワンになってるあたり、しっかり固定ファンを掴んでることが伺えるバンド。

元々ブリンク182にいたトム・デロングが、2005年に一旦ブリンクが解散した時に立ち上げたバンドで、ブリンクほどストレートではないものの、パンク・ロックっぽいテーストを備えている一方、毎回コンセプトを持った作品で、スペース・ロックというかアート・ロックっぽいスタイルでもあるというなかなかユニークな立ち位置のバンドです。今回もアルバムジャケからして、あのミケランジェロの人体図を模したようなデザインで、リーダーのトムの説明によると、アルバム・タイトルの「Lifeforms(生命体)」というのは「この世界には我々人類だけじゃなくて、UFOのエイリアンとか、幽霊とかビッグフットとかいろんなものがあって我々の知らない生命体もいっぱいある」ということをテーマにしているそうな。うーんユニーク。全体サウンド的にはポップさ満点のポスト・パンク・ミーツ・ハード・プログレみたいな感じで悪くないですね。

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そして今週最後の100位までの初登場は、82位に登場した、ビリー・ストリングスの『Renewal』。彼は今年3月の第63回グラミー賞の最優秀ブルーグラス・アルバム部門で、前作『Home』が見事受賞し一躍注目を集めた、若手新進実力派のブルーグラス・ギタリストで、今回の『Renewal』は前作『Home』の受賞を受けての5作目で、初のBB200チャートイン・アルバムとなりました

楽曲や演奏スタイルは極めてオーセンティックなブルーグラスの世界ながら、ビリー自身はティーンエイジャーの頃はハード・ロック・バンドでプレイしていて、ジミヘンジョニー・ウィンター、ブラック・サバスなどのハードロックやメタル・ファンでもあるというからなかなか新世代ではあります。ジャンルは違いますが、何となくボーカルの感じがあのジョン・メイヤーにかぶるような感じもあり、アメリカーナ好きとしてはフォローしていきたいアーティストですね。

ということで以上今週のトップ10と100位まで圏外の初登場アルバムのご紹介でした。ここでいつものようにトップ10のおさらい、今週は1位以外ほとんど順位に変更がありませんね(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Sincerely, Kentrell - YoungBoy Never Broke Again
2 (1) (4) Certified Lover Boy - Drake
3 (2) (2) Montero - Lil Nas X
4 (4) (5) Donda - Kanye West
5 (5) (19) Sour ▲ - Olivia Rodrigo
6 (6) (14) Planet Her - Doja Cat
*7 (7) (38) Dangerous: The Double Album ▲ - Morgan Wallen
8 (8) (62) F*ck Love ▲ - The Kid LAROI
9 (9) (9) Happier Than Ever - Billie Eilish
10 (11) (27) SoulFly ● - Rod Wave

さて最後はいつも恒例の来週の一位予想。10/1-7が集計対象期間となる来週のチャート、いろいろ話題になりそうな盤のリリースはありますけど、14〜15万ポイント叩き出しそうな作品となるとやはりヒップ・ホップで、ミーク・ミルの5枚めか、リル・ウェインリッチ・ザ・キッドのミックステープかな。あと前回1位になってるトニー・ベネット御大とガガのデュエットアルバムも意外と来るかも。その他トップ10来そうなのはさっき名前の出たTWICEのEPとブランディ・カーライルくらいか。実は今週はイエスドゥービー(共に7年ぶり)の新譜も出てるんですよねー。ではまた来週。

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