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毎年恒例グラミー賞企画第1弾!第64回グラミー賞主要4部門ノミネート予想(その1:新人賞、レコード・オブ・ジ・イヤー)

いやあやっぱり大谷翔平選手、AL MVP受賞しましたね!当然そうなるとは思ってたけどこうやって実現するともう偉業と言うしかない。そしてこれが彼にとっては更に高みを目指すための通過点というのもすごい。投票した記者30人全員が一位投票ってヤバいよね。既に来年が楽しみです。

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さて、話題は変わって(笑)今年ももうすぐ最終月に入るタイミングになって、これからこのグラミー賞関連企画のブログをはじめ、年間チャート予想、年間アルバムランキングの発表などなどこのnote.com2021年の洋楽総決算の企画を例年どおりお届けするタイミングになってきました。ということでまずは来週発表予定の第64回グラミー賞の主要部門ノミネート予想を2回に分けてアップしようと思います。

1.第64回グラミー賞の概要について

グラミー賞およびその主催団体であるレコーディング・アカデミーに関しては、昨年1月のデボラ・デューガン新会長(当時)の電撃解任、その後1年以上空席だった会長職に暫定会長だったハーヴィー・メイソンJr.の就任と激動の組織変化を経験し、その間には昨年ガン無視されたザ・ウィークンドグラミーを公式にボイコットするなど(今年彼はアカデミーに対し、グラミー賞対象作品の提出を全く行ってないそうで。まあ無理ないですな)多くの激震と変化を経験して来ました。今回のグラミーはそれらの事件の教訓を踏まえて新たに生まれ変わるのか?グラミー・ウォッチャーとしては興味が尽きませんが、まずは、今回の第64回グラミー賞についてのいくつかの基本情報と、昨年までとの変更点を簡単にまとめてみました。

* 受賞対象作品の発表対象期間

昨年の第63回グラミー賞2019年9月1日から2020年8月31日までの12ヶ月間に発表された作品が対象でした。実は第61回までは対象期間は10月1日から9月30日だったんですが、第62回の授賞式開催を、通常の3月だとアカデミー賞の授賞式とバッティングして視聴率等の関係マズい、ということで1月に繰り上げた関係で、第62回の対象期間を2018年10月1日〜2019年8月31日と1ヶ月短縮したために、対象期間がずれちゃったんですね。それを受けて昨年は対象期間のスタートを9月にしたわけです。

でもねえ、そもそも11ヶ月対象というの62回のやり方はアーティスト達からの非難ゴウゴウでしたし、前回の63回も1月開催予定だったのがコロナの関係で結局3月開催になっちゃったために、授賞式の時点では対象作品が半年以上前より以前の作品ばかりで「2020年のグラミー」というより「2019年後半と2020年前半のグラミー」的な何ともピンボケな賞になってましたね。ということの反省もあったんだろうと思うんですが、今年は62回とは逆に、対象期間を2020年9月1日から今年9月30日までの13ヶ月間に伸ばしてます。これでやっと次回からは従来の10月〜翌9月のサイクルに戻れるわけです。やれやれ。

* 開催日時・場所

今年のグラミー賞授賞式開催は、来年1月31日(月)(日本時間2月1日火曜日)が発表済です。あれ?いつもグラミーって現地日曜日、日本時間月曜日じゃないの?と思ったあなた、よくご存知で。そうなんです、本来TV視聴率等の関係で、現地日曜夜開催だったグラミー賞、なぜか今年は月曜日開催ということで何でだろうなあ、と思って調べたところ、どうやら1/30の日曜夜ってアメフトNFLの、両コンフェレンスの優勝決定戦の開催が決まってるのが判明。なるほど、MLBでいうとリーグ優勝決定戦にあたるこのイベントとはさすがにバッティングは避けたかったんでしょうねえ。しかもグラミーを放映するCBSはこの日AFCの優勝決定戦を放映予定ですから。

ちなみに開催場所ですが、去年はいつものLAのステイプルズ・センターではなく、コロナ仕様ということでLAコンベンション・センターを貸し切って、三カ所の無観客ライブスペースと屋上のオープンエアのメインステージを使って、コロナ対策万全で何とか乗り切ってました。今年もコロナ陰性要件やマスク着用などのコロナ対策は取るでしょうが、一応今のところはステイプルズ・センターでの開催ということらしいです。

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* カテゴリーとノミネーションプロセス

今年新たに2つの部門が追加になったんですがいずれもワールド系ラテン系のジャンルの追加なのでまあアカデミー自慢のダイヴァーシティ強化の一環という意味では理解できるところなんですが、やたら部門増やすのもねえ、って感じしますけど。それより今年はノミネーションプロセスに大きな変革があったんです。それは、

1995年以来存在してたノミネーション・コミティーが廃止されたんです!

え?それってどういう意味かって?つまりですね、これまでのノミネーション・プロセスは、数万人のアカデミー・メンバー(アーティスト、プロデューサー、エンジニアなど業界のメンバー達です)が主要4部門および各ジャンル部門のノミネーション投票を行って上がってきた結果を「もとに」、最終的に今回廃止されたノミネーション・コミティーが「決定する」というもの。そう、つまりノミネーション・コミティーによる恣意性が大きく影響するという仕組みだったんですわ。この問題が大きくスポットを浴びたのが、去年のザ・ウィークンドの完全ノミネーション無視事件。どう考えても昨年主要部門で彼のアルバム『After Hours』や大ヒットの「Blinding Lights」がノミネートされなかっただけでなく、どの部門にも一切ノミネートされなかったというは絶対変だし、本人がブチ切れてボイコットするのも大いに判るところ。また、去年のブログでも書きましたが、対象期間前のリリースなのにデラックスバージョンが対象期間に出たからと言う理由で主要三部門にノミネートされたブラック・プーマズとかも明らかにおかしかったしね。

ということで今年はその諸悪の根源だったノミネーション・コミティーがなく、アカデミー・メンバーの投票結果がそのままノミネートに反映されるので、例年に比べて「ええ、何これ?」というのが少なくなるでしょうね。まあ健全だと思います(でもザ・ウィークンドは、ボイコットしてて今回ノミネーション投票対象作品に自分の作品は一切提出してないので、彼はノミネートされませんw)。

ということで今年もいろいろな動きがありそうなグラミーですが、その第64回グラミー賞のノミネーション発表は、昨年同様11月23日NY時間正午(日本時間11月24日の午前2時)に、LAのグラミー博物館からのライブで、グラミーのサイト(https://live.grammy.com/)で見られるようです。夜更かししたい方、是非ライブでお楽しみ下さい。

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そして2017年以降毎年1月中旬に音楽評論家の吉岡正晴さんと一緒に新宿カブキラウンジでやってる、トーク&ミュージック・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ〜グラミー賞スペシャル〜」、今年の63回の時はコロナの関係で実験的にZoom開催で3/8にやりましたが、今回はどうするか、現在吉岡さんと相談中。また開催とその形態が決まったらここnote.comでも、また自分のFacebookページでもアナウンスしますのでお楽しみに!今年はフィジカル開催できればいいなあ。

ということでさっそくノミネート予想、まずは新人部門から。

2.最優秀新人賞部門ノミネート予想

昨年はおそらくノミネーション・コミティーの影響もあってあっと驚くミーガン・ザ・スタリオンがノミネートされただけでなく受賞してしまったこの部門。実は上でお伝えしたノミネーション・コミティーの廃止と逆方向の改定がこの部門ありまして、それは何かというと

去年の過去発表作品数の制限撤廃に加えて、今年の対象期間中に「ブレイクスルーした」とみなされればノミネート対象になる!

ということらしいんです。で、その「ブレイクスルー」は誰が判断するのかというと、これが「スクリーニング・コミティー」というのがありまして、そこが決めるらしいです、ハイ。そしてそのコミティーが「有資格者リスト(Eligibility List)」というのを作成したようで、アカデミー・メンバーに配布された投票用紙には、そのリスト(468のアーティストがリストアップされてるようですが)に載らなかったアーティストは掲載されてないということのようで。これで今回従来の要件だと対象にならなかったはずなのにこのリストに載っているアーティストがこの二人。

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* 2020年9月以前に2枚もアルバムがBB200のトップ10に入ってるポロG
* 同じく対象期間以前にナンバーワンアルバム2枚もあるヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン

一方、今回の対象期間以前に「ブレイクスルーしてた」ということでリストから除外されてるのがモーガン・ウォレン。まあこれは許すけど(笑)

ということでのっけから波乱含みですが、取り敢えず自分のノミネート予想は以下の8組です。

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Gabby Barrett
Glass Animals
The Kid LAROI
Maneskin
Arlo Parks
Polo G
Olivia Rodrigo
Rod Wave

さてここで自分の昨年のグラミー予想ブログを読んでてくれてた方は「え?何で去年ノミネート予想で新人賞部門に入れてたギャビー・バレットが入ってるの?」と思われたでしょうね。そう、自分もビックリしたのですが、今回の新人賞部門の「有資格者リスト」にギャビーが入ってるらしいんですわ。彼女の去年の大ヒット「I Hope」(Hot 100最高位3位、カントリー1位通算25週)がカントリーで1位になったのは2020/7/25付で、昨年の対象期間の最後の5週間1位記録してたし、Hot 100でもその頃までにはトップ10入りしてたんで、昨年のノミネート予想では自信持って彼女を新人部門に挙げたんですがガン無視。それでなぜ今年新人賞有資格者リストにスクリーニング・コミティーが挙げているのかがかなり意味不明なんですが、ビルボード誌によるとリストに入ってるらしいんです。敢えてこじつけると、Hot 100で最高位の3位付けたのが2020年11月で今回の対象期間、ということくらいだけど、いやこれいかにも無理筋じゃないの?と言いたくなりますよね。それでも才能あってブレイクスルーヒットした彼女が対象なのは喜ばしいことなので、まずは彼女をノミニー候補に一番で挙げますよ。

さてギャビーの話で長くなってしまいましたが、今年2021年の新人賞部門で普通に真っ先に名前が挙がるのがやはりオリヴィア・ロドリゴ。正しくオリヴィア旋風、と言っていいくらいの勢いだったですからね。受賞もかなり堅いと思いますよ。彼女は後でも主要4賞の他の部門でも出てきます。下手すると一昨年のビリー・アイリッシュの再現もあり得るかもしれません。大分スタイルは違いますけど。

一方自分が個人的にダントツで推したいのは、UKに今年突然現れ、女性黒人シンガーとしてはあのローリン・ヒル以来の突出したリリシストぶりと素晴らしい楽曲で今年のブリット・アウォードの新人賞や、マーキュリー音楽賞の最優秀アルバムなど、特に音楽メディアに絶大な評価を得た、アーロ・パークスいや彼女いいですよ。アルバム『Collapsed In Sunbeams』は僕の2021年前半の超パワロテで、まだ決めてませんけど今年のDJ Boonzzyの年間アルバムランキングでもかなり上位に入れると思います

オーストラリアから登場していきなりマイリー・サイラスとのシングル「Without You」(8位)、そしてジャスティン・ビーバーとの大ヒット「Stay」(7週1位)で大ブレイクしたザ・キッドLAROIも必ずノミネートされるでしょう。オリヴィアいなかったら受賞最右翼だったかもしれません。ヒップホップの香りも漂わせながら、堂々としたインディ・ロックっぽいメインストリームな楽曲スタイルはポップ部門でも何か一個くらい受賞するかも、と思わせます。

あとロック系では、ちょうど先週チャートインから通算42週目で初ヒット「Heat Waves」がHot 100のトップ10入りして、それまでのトップ10入りまでの最長週数記録だったキャリー・アンダーウッドの「Before He Cheats」(2007年に38週かけて8位到達)の記録を14年ぶりに更新したUKのインディ・ロック・バンド、グラス・アニマルと、今年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストでの優勝をきっかけに世界的にブレイクしたイタリアのロック・バンド、マネスキンの2組がかなり目立っていて、彼らもノミネート間違いないのでは。

ヒップホップ・シーンも今年は新顔が群雄割拠した一年でしたが、いかにも芸のないトラップ一辺倒のスタイルの連中は難しそうだなと思いますが、冒頭に名前の出た、有資格かが結構微妙なのにリストに入れてもらったポロGあたりはメインストリーム・ヒップホップ方面からの支持が強そうなんで、ノミネートされそう。それからコロナで職を失ってやることないんでラップでも始めたら売れちゃった、というフロリダ出身の(だけどベース系じゃなくて、R&B的要素の強い楽曲がリリシストぶりを引立ててる)ロッド・ウェイヴが、アルバム『Soulfly』も1位になってるし、ノミネート来そうです(彼も去年4月にその前のアルバムが2位になってるんですけどね)。

以上8組。でもそれ以外にも2021年にブレイクスルーした新人アーティスト、今年はいろいろいて、Kポップのブラックピンクや、日本生まれのUK女性シンガー・ソングライターのリナ・サワヤマエルトンとの「Chosen Family」のコラボで今年一気にブレイク)、去年注目集めたフィービー・ブリッジャーズとのコラボでも素晴らしい作品を出したジュリアン・ベイカー、今風エレクトロ・ポップが素晴らしかったLANY、そして(これもやや資格要件が疑問ながら)出せば必ずトップ10にアルバム入れてきていたヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインあたりは、次点グループ(Honorable Mention)として名前を挙げておきましょう

3.最優秀レコード賞(Record Of The Year)部門ノミネート予想

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Peaches - Justin Bieber Featuring Daniel Caesar & Giveon
Butter - BTS
Happier Than Ever - Billie Eilish
Positions - Ariana Grande
Stay - The Kid LAROI & Justin Bieber
Good 4 U - Olivia Rodrigo
Bad Habits - Ed Sheeran
Leave The Door Open - Silk Sonic (Bruno Mars & Anderson .Paak)

さっきも触れた、ノミネーション・コミティー廃止が多分最も大きく影響するのがこの部門でしょう。その年を代表するレコード、というこの部門の観点からいって、自分がこの1年ずっといろんな作品、ヒット曲を聴いてて、出てきた瞬間に「あ!これは絶対ROYにノミネートされるしかないな」と思ったのは2曲。一つはシルク・ソニックの「Leave The Door Open」、そしてもう一つはオリヴィア・ロドリゴの「Good 4 U」でしたね。シルク・ソニックはもう70年代80年代のソウルミュージック・ラバーを聴いた瞬間にとろけさせる楽曲をあの時代のスタイルで完璧にやってくれてて、これがROYにノミネートされないなんてあり得ない、って感じのインパクトでしたからね。そしてオリヴィアの場合「いやいやこれじゃなくて「Drivers License」の方なんじゃないの」という声もあるでしょうが、何と言っても今年マシンガン・ケリーだとか、ウィロウだとか若い子たちがこぞってメロコアパンクに回帰するようなサウンドで大受けした皮切りが彼女のこの曲だったと思うので、トレンドセッターとしての存在感充分という意味でこっちがROY候補としてはふさわしいんじゃないかと思いました。

そしてこの2曲とはまた別の意味で今年圧倒的な存在感を見せていた2曲が、ビリー・アイリッシュの「Happier Than Ever」とBTSの「Butter」。ビリーの2年ぶりの同名アルバムは、そのジャケからしてデビューの黒のイメージから、一気にブロンドになって明るい色のイメージになっておっ、と思ったのだけど、彼女とお兄ちゃんのフィニアスの紡ぎ出す楽曲は以前ムーディでダークなスタイルとリリックで、タイトルとは裏腹な鋭さと陰鬱さを秘めてるんだけど、このタイトル曲はそれを象徴しているような印象的な曲でしたね。そして2021年更に大躍進を果たしたBTSの4曲目の全米ナンバーワン・ヒットとなった「Butter」。折から同時期に大ヒットになったシルク・ソニックとも相通じるような70年代80年代ソウル・ミュージックへのオマージュを今風のエレクトロ・ポップ的音像で上手に料理した、まあヒット曲のお手本のようなこの楽曲で、去年は主要部門ノミネートを果たせなかった彼らも初のアジア出身アーティストとしての主要部門ノミネートを決めるか。そして今年は彼らだけじゃなくて、後に続くKポップ勢の活躍の先鞭を付けたという点も業界人のアカデミーメンバーには評価されるんじゃないかな、と思いますね。あ、そしてこの後彼らは今年もう2曲ナンバーワン決めてますから。

新人賞のところでも触れたザ・キッドLAROIジャスティン・ビーバーの「Stay」はその「Butter」の大ヒットの後に、今年の対象期間の最後の1ヶ月半ほどをHot 100のトップで過ごした、言わば今年を締めたヒットだったし、若干18歳のオーストラリアの少年の感情的不安定さとコロナ時代だからこそ聴く者に響いてくる「あなたに、ここに、いてほしい」というメッセージを今的に最も気持ちいいエレクトロな音像にのせて歌うこの曲は、冒頭の2曲に匹敵するようなROY受賞候補だと思うな。

ちょうどバイデン新大統領が誕生した大統領選のタイミングに合わせて、ホワイトハウスで執務するアリアナ大統領のMVが話題になったアリアナの「Positions」もある意味今回のグラミー対象期間を代表する楽曲の一つでしょうね。曲作りとプロデュースにロンドン・オン・ダ・トラックが参加してるのに、単純なトラップ・ポップになってなくて、アリアナのボーカルワークが圧倒的なコンテンポラリー・ポップ・ソングになってるあたりが凄いと思います。彼女も今年5月にめでたく結婚して、今年後半は静かでしたが、来年あたりまた一線に戻ってくるでしょう。

そして今年の終盤を飾って、今月リリースされた新作『=』の先行シングルだったエド・シーランの「Bad Habits」も今年のROY候補には欠かせない楽曲でしょう。エドは来年のグラミーでもいろいろ暴れてくれそうです

ということで結構長くなってしまったので、ここで一回切ります。残りのソング・オブ・ジ・イヤーとアルバム部門のノミネート予想、週末にはアップしますね。お楽しみに!

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