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今週の全米アルバムチャート事情 #116- 2022/1/29付

とうとう出てしまったマンボウ。そして今週の感染者数の増え具合では、基本的に無策な今の政府だと、安易に緊急事態宣言に言ってしまう可能性が高く、また飲食の皆さんが苦境に立つのが気の毒でしょうがない。そう思って今週は地元の馴染みの呑み屋さんに顔を出して、多少なりとも売上に貢献してきました。先週も書いたように、吉岡正晴さんとのグラミー・トークイベントも無事に開催できるのかどうなのか、微妙なところです。そちらの告知は下記の吉岡さんnote.comの記事からどうぞ。

と言ってたら、うちの家族にコロナ陽性者が昨日出てしまいました。我々は濃厚接触者ということで今日午後にPCR検査に行きますが、いずれにしても10日間の基本自宅隔離ということに。いやなかなかいろいろ大変です。皆さんもお気を付けて。一方、やっと重い腰を上げて今年のグラミー賞大予想ブログも開始しました!こちらも下記のリンクからご覧下さい。4月3日のグラミー賞授賞式までに51部門予想完結を目指して頑張ります(^^)

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さて今週の全米アルバムチャート、Billboard 200の1月29日付チャートの1位ですが、先週の予想ではガンナがポイント減らすからザ・ウィークンドが1位獲得か?なんて言ってたんですが、当のウィークンドのポイントの減り具合がガンナ以上の減り具合(59%減対36%減)というありゃりゃな展開で、その間隙を縫って9%ポイントを増やして2週めの1位に返り咲いたのが、何とディズニー・アニメ『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』のサントラでした(104,000ポイント、うち実売17,000枚)。

いやこれは結構ビックリ。日本にいると、この『ミラベル』の人気沸騰具合というのはなかなか実感として伝わってこないんですが、全米そしてUKでも相当盛り上がってるみたいですね。トップ10で今週ポイントを伸ばしてるのはこのサントラだけですし。またこのサントラからの曲「We Don’t Talk About Bruno」はHot 100で先々週50位→5位に急上昇中、今週は何と2位に上昇する大ヒットになってますし、UKシングルチャートでは何と今週1位(UKで初のディズニー・アニメの曲の1位のようです!)になってる他、もう一曲のミラベルのお姉さん役のジェシカ・ダーロウによる「Surface Pressure」も今週UK5位、全米は10位と、英米でトップ10に2曲ランクインというスゴい勢いです。来週はヒップホップの強力そうなリリースがあるので1位維持は厳しいかもしれませんが、うまく行くとしばらく1位を維持するかもしれません。

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そして今週トップ10のもう1枚の初登場は、6位に入って来た実力派フォーク・ロック・バンド、ザ・ルミニアーズの4作目『Brightside』(37,000ポイント、うち実売26,000枚で今週のアルバム売上トップ)。2013年のデビューからこれまでのアルバム3作が全てBB200の1位か2位(2016年の2作目『Cleopatra』が1位でした)という確固たる人気を誇る彼ら、今回も既に先行シングルのアルバムタイトル曲が先週までオルタナティブ・エアプレイ・チャートで4週1位を記録するなど、今回もがっちり人気と評価を得ている様子が頼もしい。

そのアルバム冒頭のタイトル曲は、いつもシンプルなアコースティック・サウンドとシンプルな楽曲スタイルで湧き上がるようなエモーションを伝えてくれる彼らのスタイルからちょっと違っていて、いきなりファズの入ったエレクトリック・ギターの音色が聞こえてきて、ちょうど去年好きだったキラーズのアルバムとかを連想したのだけど、2曲目以降はいつものシンプルで情感ワクワクのルミニアーズ・サウンドがしっかりと楽しめるサウンドになっていた。今のところ最後に行った2019年のフジロックでサードアルバム『III』リリース直前の彼らのステージを見てから、一気にお気に入りのバンドだっただけに今回のアルバムもうれしい。しばらくマイ・パワーローテーション入りしそうです。

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今週のトップ10圏外100位までは久しぶりに6枚初登場と賑やかめ。そのトップを切って13位に初登場してきたのが、ノース・キャロライナ出身のラッパー、YBNコーデイ改めコーデイの2枚め『From A Birds Eye View』。何でもステージネームからYBNを外したのは、同じYBNを名乗ってたラッパー、YBNナーミアが主宰してたYBN軍団が解散したから、というのとそのナーミアとの仲が悪くなってたかららしい。

でもこのコーデイのアルバム聴いてみた感じ、今どき巷に溢れてるチキチキハイハットのトラップだらけでないのが結構いい感じ。トラックごとに曲の表情も違ってて聴いてて飽きないし、そうはいってもリードシングルの「Super」はちゃっかりトラップ仕様を前面に出したりしてて、なかなか工夫のあるそれでいて商売人な奴だなあ、って感じがした。「Want For Me」なんてちょっとオールド・スクールなアウトキャスト、みたいでね。結構好きかも。ゲスト陣もリル・ウェインH.E.R.に何とスティーヴィー・ワンダーエミネムというのもすごい。以外と今のところ今年のヒップホップでは気にいったアルバムに入るかもしれません。

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そのコーデイのすぐ下の14位に登場したのは来たねKポップ!7人組ボーイズ・バンドのエンハイプンの『Dimension: Answer』。去年の10月に初のフルアルバム『Dimension: Dilemma』が11位をマークしていた彼ら、どうも今回の『Answer』はその『Dilemma』に3曲ボートラを追加したリイシュー盤、ということらしいんですが、これって普通のBB200のチャートルールだと、前の『Dilemma』のポイント加算になって、『Dilemma』として再上昇!っていうパターンのハズなのに何で今回は別アルバムとして初登場してるんだろうなあ。

よくわからないけど、彼らは今回も王道メインストリーム・ポップ路線で頑張ってます。ちなみにこのアルバムの日本語バージョンも出てて、オリコンで前作に続いて見事1位になったみたいですね。他のKポップのボーイズバンドほどトラップ系とかに寄ってないのがいいのかもしれません。

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続いてちょっと下がって38位初登場は、メンフィス出身のジョンコーリークーパー夫妻を中心にした4人組クリスチャン・ロック・バンド、スキレットの11作めになる『Dominion』。ちょっと聴いた感じではドートリーあたりをもう少しドラマチックに、ちょっとハード目にしたロック・サウンドかな、と思いきやこの「Surviving The Game」なんて、何かリンキン・パークみたいですねえ。

90年代後半から活動してたんですが、2009年に出した7作目の『Awake』がいきなりBB200で最高位2位を記録してブレイク、この頃からシングルがロック・チャートの常連になり始めたようです。そこから3作連続でBB200のトップ5にアルバムをランクインしてたんですが、続く前作『Victorious』(2019)は17位、そして今回は38位ということでやや人気自体は下降気味ですかね。

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さらにずっと下がって何と60位に登場してきたのはリル・ウェインが2011年にデジタル・ダウンロードオンリーでリリースしたミックステープ、『Sorry 4 The Wait』が4曲ボートラを追加してストリーミング・リリースされてチャートイン。最初のリリースではチャートインしなかったんですね。

当初このミックステープが出たのは堂々1位を獲得して売れに売れたアルバム『Tha Carter IV』リリースの1ヶ月前で、なかなかこのアルバムが出せないんで「待たせてわりいな」ってんでつなぎで出したようですが、まあ一番リル・ウェインが乗ってた時期なんでトラックのクオリティは高いですね。トラップトラップしてますがこのレベルなら許せます。彼は2020年『Funeral』で1位をしっかりマーク、今年は『Tha Carter VI』と『 I Am Not A Human Being III』のリリースも控えてますから、今回もそれまでのつなぎという位置づけなんでしょう。

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そして80位に登場したのは、タイラー・ザ・クリエイターに匹敵するくらいオッド・フューチャー軍団の中ではキャラの立ったラッパー、アール・スウェットシャートの4作目のフルアルバム『Sick!』。例によって独特の音像といろんなサウンドバイツが打ち込まれたトラック使いなんかはタイラーに通じるところ大ですが、今回も音楽メディアの評価は高く、メタクリティックでは何と86点を獲得してます

自分なんかはこの人はフランク・オーシャンの「Super Rich Kidz」でフランクスティーヴィー・ワンダーばりに熱唱している横で淡々と「しゃべってる」というか「つぶやいてる」って印象が強くて、それはこの最新作でも何ら変わってないね。基本つぶやいてるけどそれがバックの音像やループやサウンドバイトと化学反応を起こして不思議なグルーヴを醸し出してる。でもこれだけ評価高い、充実作にしてはこの順位、低いなあと思うのは自分だけ?

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同じことを思ってしまったのは、91位に初登場してきた、FKAトウィッグスの初のミックステープ『Caprisongs』。2014年の『LP1』(30位)、2019年の2作目『Magdalene』(54位)とエキセントリックでかつ魅力的ながら、楽曲によっては思いっきりラジカルに振り切る、フューチャリスティックなR&B作品で高い評価を集めてきた彼女。昨年のグラミー賞授賞式でのプリンス・トリビュートでは、ダンサーとして登場、アッシャーのバックで妖艶なポールダンス(ストリッパーがスチールのポールに絡みながらやるダンス)を披露するなど、いろんな形で存在感を顕にしていただけに、彼女の新作への期待は高かったのは間違いない。

そして今回のこの『Caprisongs』、ざっと聴いてみたところ、多分これまでの作品の中では一番メインストリームR&Bに近いスタイルの楽曲満載の作品で、でも彼女らしいエッジもちゃんと感じさせる作品。メタクリティックも80点つけるなどメディアの評価も高いのにこの順位というのは正直えー、という感じですね。この作品は多分来年のグラミーでは複数部門でノミネートされますよ。ホント。

ということでお届けしてきた今週1/29付Billboard 200のトップ10と11位から100位の初登場アルバム、ここでいつものようにトップ10のおさらいです。相変わらずドレイク、3桁の実売でトップ10、すごいです(笑)(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (3) (8) Encanto - Soundtrack <104,000 pt/17,000枚>
2 (1) (2) DS4Ever - Gunna <96,000 pt/1,122枚*>
3 (2) (2) Dawn FM - The Weeknd <61,000 pt/16,675枚*>
4 (4) (9) 30 - Adele <43,000 pt/18,000枚>
5 (5) (54) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <41,000 pt/1,729枚*>
*6 (-) (1) Brightside - The Lumineers<37,000 pt/26,000枚>
7 (6) (49) The Highlights - The Weeknd <34,000 pt/1,757枚*>
8 (8) (20) Certified Lover Boy - Drake <34,000 pt/110枚*>
9 (7) (35) Sour ▲2 - Olivia Rodrigo<33,000 pt/9,000枚>
10 (9) (30) Planet Her - Doja Cat <32,000 pt/1,267枚*>

さて今週の「DJ Boonzzyの全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週1位予想。来週の集計対象期間は1/21-27ですが、リリース予定の中で一際目に付くのが、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインのセルフリリースから数えて16作目になるミックステープ。この間のアルバムが初週13万ポイント(もちろんほとんどストリーミングですが)稼いでたことを考えると、今週10万ポイントの『Encanto』が多少伸ばしても多分YBNBAが1位持って行きそうですね。ということでまた来週。

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