GRヤリスを諦めた話

東京オートサロン初日に仕事を休んで実車を見に行き、少し悩んだけれど1月13日にはデポジット10万円をカード決済して申し込んだ。2月には大阪オートメッセにも赤いヤツを見に行った。その後も機会をとらえて各地の展示場に通った。
けど結局、悩みに悩んだ末、1st Editionの申し込みはしなかった。できなかった。

一つにはやはり、自分の身の丈からすると大きな買い物であるということもあった。正直長期のローンの支払いはしんどい。けどリセールも多少は期待できるだろうから、そこは何とかなるだろうと思っていた。
それよりも、GRヤリスの過剰な性能に恐れをなした、というのが実際のところだった。

申し込み期限である7月が終わったタイミングで、モータージャーナリストの方々の試乗動画が一斉にYouTubeにアップされ始めた。実に楽しそうにダートやサーキットを走る姿を観て、率直に羨ましく思いながらも、一方で、やっぱりこれは僕の望むタイプの車とはちょっと違ったな、と得心した。

速すぎるのだ。僕の技量では、とても乗りこなせない。
いや、おそらくトヨタのことだから、普段使いに神経を使うような仕立てにはしていないだろうし、別に懸念する必要はないはずだ。
だが普段の街乗りでは、GRヤリスはおそらくその性能の片鱗を味わうことすら難しい。高速道路の流入でその凄まじい加速力を一瞬見せ付けるのがせいぜいだろう。とっておきのその尖った高性能を発揮する場所は、日本の公道上にはほぼ存在しない。GRヤリスの1.6Lターボは、その性能の余裕を内に秘めながら大人しく走るには、キャラクターが強すぎた。

だから僕はむしろ、1.5LノンターボでCVTで前輪駆動のRSグレードに、改めて心惹かれた。
確かにパワートレインは普通のヤリスと同じだから、正直、スペック的には物足りない。でもボディと足回りはガチ仕様だ。サーキットを走る動画を見て、自分にはこれで充分だと理解できたし、こっちのほうが安全マージンも大きいだろう。
というわけで、酸っぱいブドウ理論そのままなのかもしれないが、1st Editionの購入を見送った判断は妥当だったと思っている。縁がなかったのだ。

コロナの影響もあったのだろうが、結局、購入手続きまでに試乗する機会が与えられなかったことも残念だった。個人的にマニュアルトランスミッションとクラッチペダルの使い心地が気になっていたので、試乗して事前に確かめておきたかったが、それも叶わなかった。

半年間めいっぱい悩ませてくれたGRヤリスの話はいったんここまで。
次に僕が注目するとしたら、GRーFOURの8速ATモデルなんてのがもしリリースされたら、あるいは、1.5Lハイブリッドを載せたGRヤリスRSが登場したら、そのときだろうか。カラーバリエーションももう少し増えていたら嬉しいな。

何にせよ、モリゾウ選手じきじきのトヨタの本気の車づくりを見ることができたのは良かった。もうこんな車は本当に近い将来出せなくなるだろう。その最期の時が近づいてきたときに、もう一度購入を考えてみたいと思う。

実は、なぜこんなにあっさりとGRヤリスを諦めることができたのか、その理由にはもう一つの話があるのだけど、それはまたそのうちに。

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