最期の唄

忘れてくれても構わない、だから少し話しをしないか?
小説みたいなものじゃない、よくある話の一つさ。
正しい事ばかりではない、でも噓偽りなど出来ない。
大切にしまう場所など無い、行き場を失くした心のお話。

水面の下から覗いた、世界はとても透明で、
微かな光で照らされた、命が乱反射してた。
映り変わる人々の顔、染まりゆく景色が怖くて、
僕が僕じゃなくなるには、時間はそうかからなかった。

いつの間にか明けた夜の中に。
忘れ物をしてきたみたいだ。

僕等が居なくて良い世界なら楽だったのかな。
最期まで歩けたら、もう一度だけ笑ってくれよ
もう一度だけ、で良いから。

微睡む頭で歩いた、朝焼けを背に何処へ行きたいんだろうか。
呼吸を始めた街並み、摩擦で擦れた心、ぶら下げて生きてる。
時折交差して、また離れていく、それでも一人じゃない証明だ。
それを悲しみなんて呼べない。
それが僕の最期の答え。

どうでも良い事ばかりに圧し潰されてしまった日々も、
悪くは無い、いつか言えるよ。暖かさの意味を知ったから。

いつの間にか過ぎた日々の中に、何を見つけられただろう。

いつかは忘れるだろう、特別なものなんて無いけど。
僕等は生きたから、出逢えたんだと信じたいよな。

きっとそうだよ。

「じゃあまたね。」

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