がらんどう

何も知らないから、何でも出来ると思ってた。
 死んでしまったあの子が、少し羨ましく思えた。
ちゃんと大人になっちゃった、出来る事が増えて来た。
今となっては何も、出来る気がしやしないんだ。

消費して、見限ってまで欲しかったものは何だ?
色彩を失って、街の雑音に掻き消えてしまった。

僕等には意味が無い訳が無い、と言えない。
根拠は無いけど、幸せな方が良い。
僕は空っぽを描くよ、歌うよ、それまで、
どうか世界よ、嫌わないでくれ。

幸せになりたいって事が、当たり前なのは当たり前だ。
それで十分だと教わった、幸せが何かも分からないが。
不器用ながらに生きて来た、聞こえは良いががらんどうで、
傷付けたものが多過ぎて、「痛い。」と言えなくなっただけさ。

擦り剝いた膝小僧の傷が癒えるのより早く、
気付いたら一人だった、あれからどれだけが過ぎてしまった。

僕は今此処に居て、呼吸をして、空を見てる。
変わらない青を、変われない僕が知る。
明日には消えちゃう様な、淡い証明を探して、
迷い歩いた、今日には戻れない。

僕等には意味が無い訳が無い、間違いない。
根拠等無い、それでも生きていたい。

いつか消える身体が、心が、言葉が、
命の証になり得るならば。
僕は空っぽを描くよ、歌うよ、それでも、
どうか世界よ、嫌わないでくれ。

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