第一子の異所性妊娠について
その日は、久しぶりのデートで、コロナでサボっていたメイクもきちんとして、両家食事会以来のワンピースを身にまとった。
結婚して一年。
翌週には旅行を計画していたけれど、せっかくなので当日はディナーに行くことにした。近くのイタリアンレストランで一番高いコースを予約した。買い物や食事で一緒に出かけることは多いけれど、デートらしいデートは久しぶりだった。
そしてもうひとつ。生理が遅れて一週間。もしかしたら赤ちゃんができたかもしれないという期待も持っていた。だからお酒や生物は控えて、食べたいなと思う反面、この子のためと思えば、それすらも楽しかった。
病院は予約制で、初めてだし女性のお医者さんがいいなと思って予約した。当日は夫は仕事で、わたし1人で病院に向かった。さらっと妊娠の診断をしてもらって帰る、という、少し浮き足だった想像だけをして向かったのを覚えている。
順番が来て、エコーで確認が始まった。初めてだから、なにも分からなくて、やたら長いこと確認するなと思った。暫くして、別の先生も来て、一緒に確認している。この時ですら、最悪の想像をするに至らないくらいに、わたしの知識は浅かった。
エコーが終わってから、胎嚢は確認できたけれど、子宮外の可能性が高いと言われた。その瞬間に頭が真っ白になった。とりあえず、確認のために造影剤でレントゲンを撮りたいと。その時も、わたしはまだ望みを失ってなかった。調べて、大丈夫でしたとなるはず。不安をかき消すように、何度も自分に言い聞かせながら、採血をしてレントゲン室に向かった。
その段階で、とっくにお昼は過ぎていたけれど、お腹は空かなかった。大丈夫、という言い聞かせだけで動いていた。結果が出るまでの間、待合のソファで、ゲームをしながら気を紛らわせた。そのせいで充電がどんどん減っていった。
呼ばれて中に入ると、異所性妊娠と言われた。子宮外に着床する病気で、子宮外だから成長すると破裂してわたしも死の危険があるから、すぐに緊急手術をすると。
わたしは突然のことで、目を背けていた現実を目の当たりにして涙が止まらなかった。泣きながら震える声で夫に電話した。すぐ行くと言ってくれたけど、仕事の関係で手術開始には間に合わなかった。
再度、採血とルート確保をしてもらった。ちょっと貧血でくらっとしたのを覚えている。そのあと病室でコンタクトを外した。まだ開けたばかりでもったいないからって看護師さんが保存液とかを用意してくれた。病院着に着替えてから、自分で歩いて手術室まで向かった。背中から麻酔を打たれて、すぐに意識はなくなった。
気がついた時は、リカバリールームのベッドに寝ていた。異常な寒気に襲われて、温めてもらったのと、化粧落としを貸してもらって顔を綺麗にしてもらった。たぶん私物だったと思う、ありがたい。夫が来てくれて、やっと会えたのに、先生の説明があるからと呼ばれて、そのままコロナのため面会謝絶。退院まで会えなかった。それなら、もうちょっと時間欲しかったよね、となった。
そこから意識が朦朧としたまま朝を迎えた。そして病室に移った。まだ動けなくて、ずっと寝たきり。カテーテルが外れてから、ようやく立つ練習をはじめた。内視鏡手術だったのでそこからの回復は早かった。夜になるとまだ受け止めきれなくて涙することもあったが、数日で退院できました。
後にわかったことだけれど、わたしの場合、よくある卵管ではなく、卵巣に着床していたそうで、通水もしたけど問題ないとのこと。卵巣も残せているらしいが、もらった写真を見る限り大丈夫なのかは不明と思ってます。
4年も前のことだし、いまだに思い出すと涙が溢れるけれど、わたしたちの第一子のこと、ちゃんと残しておきたくて、ここに記します。
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