7年の月日が過ぎて
夢を見た。僕は遅れて学校に来て、校歌を歌う列の1番後ろに立つ。すると担任が歌詞カードを配りに来て、僕に驚いたような顔を向ける。「お前、もう大丈夫なのか。」僕はしばらく学校に来ていなかった。もう大丈夫だぞ、と自信ありげな、そして誇らしげな気持ちでいた。――目が覚めた。7年後の部屋。僕は高校を辞めた未来に居た。ものごとを一瞬で理解した。言葉に表すなら、未練。この気持ちとは距離を置いたと思っていた。整理出来たのだと勝手に思っていた。全て処分して、ようやく決別できたのだと思っていた。いつまでも引きずっている過去。知ってる過去。知ってる過去。知ってる過去、未来、未来、未来、、、あ、だめだ、呑み込まれそう。7年という月日にまで膨れ上がった、彼らと僕の別々の時間。その中身はまるで違う。彼らは仲間たちと時間を共にし、あらゆる知識を吸収し、高い技術を身につけ、作品を作り続けただろう。一方僕は地の底で、汚濁にまみれた怠惰な日々を過ごしていた。かつて眠れないほど後悔に苛まれたが、今は狂おしいほどの執着はない。だから、僕の胸の奥底でたゆたう感情、「彼らとやり直したい」…それが霞んでしまって、無視できるようになってしまった。首の付け根まで伸びきった髪を揺らし、ぼんやりと毎日を過ごしている。あの時、踏ん張りが利かなかった為に頑張らない時間を重ねた。黒いすすの塊が、永続的な線となって――いつしか僕を笑えなくした。失った時間を、少しでも取り戻したい。彼らに追いつきたい。僕にとっては途方のない時間だとしても、きっとまだやり直せるはずだ。時たま浮かび上がる彼らの顔を、消さずに。きっと僕のことを応援してくれよう。実際には忘れていようとも。見てしまった電車の広告に吐き気を催したら、次は僕の番だ。そして、彼らにも思い出して欲しい。あの教室に、確かに僕が居たことを。再開の日を渇望して、ただそれだけを夢見て。