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小品盆栽、東京支部講師陣の楽しみ方 (02-前編)

自宅で過ごすことが推奨されてきたここ数年、家で小さな桜盆栽を愛でることから始まって盆栽に興味を持つ方も増えたのだとか。
植物と素敵な出会いをして、仲間と出会って、わくわく楽しく盆栽を愛好し続けてほしい。初心者から経験者まで楽しみ方は人それぞれです。

ということで、東京支部例会で講師を務める盆栽愛好家それぞれの盆栽の楽しみ方などについてお伺いしてみました。
これが正解!それは間違い!という話ではありません。個を尊重し、楽しんでいただければ幸いです。


講師インタビュー 第二回目は顧問の阿藤晴雄氏です。
阿藤氏は、かつての東京支部で積極的に役員(副支部長)として活動され、緑水会にも所属され、また盆栽清香会の会長も歴任されておられます。
20代より本格的に盆栽に親しみ、樹づくりだけでなく盆栽鉢作家(落款:藤晴)でもいらっしゃいます。
さあ、お楽しみ問答参ります!

「小さいの持ってきた!」と阿藤氏。「木一本」に込められた思いは…?

第二回 阿藤 晴雄 氏

東京支部 顧問
盆栽歴:約60年 東京支部歴:創立時より(前身の東京アマチュア小品盆栽会より50余年)

【 きっかけ・環境・アラカルト 】

ーー盆栽との出会い、興味を持ったきっかけを教えてください
出会いは、家業である材木店を通じた客先で。10歳です。五葉松の立派な盆栽が庭一面に並んでいて大変驚きました。もともと、父が皐月盆栽を嗜むなど植物が身近な環境でもあり、すぐにもみじの実生に挑戦しましたが当時はのめり込むほどではなく、その後意識したのが18歳頃。(中村)是好さんのドラマでです。すっかり感化されました。笑。
本格的に始めたのは23歳の頃。業者の競りに参加したご縁で、島崎さん(島崎武治氏:清香会初代会長)を紹介していただき、そのまま清香会発足(昭和38年)メンバーとしても参画しました。

ーー最初の一鉢は何でしたか?
10歳の時、空き缶に実生したもみじ。実は、水やりは父任せでした。

ーー棚場の環境を教えてください。屋上と伺っていますが?
そうです。朝から日没までずっと陽が当たっています。夏場は4回水やりが必要で、4時間しか水持ちしないので遠出できません。

ーー小品盆栽で、もっとも興味を持っていることは何ですか?
盆栽を作ること。

ーー阿藤さん流の、小品盆栽の楽しみ方を教えてください
私にとって盆栽は買うものではなく作るもの。飾りたくて育てているのでもないし、とにかく自分で作りたいのです。

今年3月の東京支部月例では、阿藤氏に真柏の講師を務めていただきました。お持ちいただいた盆樹それぞれに育て方、手の入れ方を変えておられ、「全部、違うんだよね」と阿藤氏。

ーー苦労する点をお聞かせください
ないです。(にっこり)

ーー笑。すがすがしいですね!
だって苦労しようとは思わないですよ。苦労はいやだもの。

ーー失敗談や悩ましいことなどあればお聞かせください
これはね、質問に答えるときに感じます。ウチではこうだけど、あなたのところではどうかわからない。答えることで失敗させてしまうこともあるので難しさを感じます。

【木づくり・鉢づくり・そして飾りについて】

ーー阿藤さんといえば真柏、というほどお得意樹種であるイメージですが
真柏に傾倒されるに至ったきっかけを教えてください

杜松づくりに没入していた時期も長いのですが、杜松はご機嫌を損ねるとすぐにダメになっちゃう性質があって。さらに一時、東京中を席巻していたジン性の杜松が一斉に枯れて、皆やらなくなっちゃった。
そんな折、国風展で12、3cmの明官さん(明官俊彦氏)の真柏を目にしたのです。真柏といえば大きくて大仰なジン・シャリが当然と思い込んでいたのですが、その真柏はとても自然で。うわぁいいな、欲しいなと。そこからのめり込んでいきましたね。

ーー盆栽鉢作家(雅号:藤晴)でもいらっしゃり、ご自身の盆樹にも自作鉢を多く使われている阿藤さん。
昭和44年頃今岡町直氏に師事したと伺っています。どのようないきさつだったのでしょう?
当時は小鉢がほとんどなかったですし、あっても大変高価で手が出なかった。だったら自分でこしらえたらいいじゃないと島崎さんに言われて町直(※注1)を紹介してもらって。教えてもらうついでに作業小屋を作ってあげたりして。
自分で釉薬を調合して、自宅の窯で焼いてダメだったら全部捨てて…。何度も何度も失敗しながらやっていく。大変だけど楽しい。大変になるほど面白いですからね。

青磁釉に辰砂がかかった隅切長方鉢は「奮闘の一鉢」。ピカピカなのは、大切に保管されていたためではなく、盆樹のサイズが小さくなり使えなくなってしまったからなのだとか。(幅約90ミリ)

どれだけ作ったか? わからないです。笑。ずいぶん作りました。とことんやってひととおり目指すところまで来た、ということで、鉢作りにはひとつ区切りが付いたのだと思います。

鉢を作るときは入れる木がイメージできている、と阿藤氏。
ご自身が使うために作られた鉢ですが、請われて売ることも多かったと伺います。


後編へ続きます


※注1:阿藤さんは今岡町直氏を称呼される際、親しみを込めて町直氏ご本人とも工房ともつかない表現をされます。

<盆栽会注記>
■盆栽清香会:島崎武治氏を初代会長に昭和38年発足。研究・交換会を前身として小品盆栽の会に改組されたのは昭和60年頃。当時の会長は三代目の窪寺一郎氏。阿藤氏は四代目会長。東京中野 新井薬師 梅照院にて開催された展示会は74回に及んだ。
■緑水会:昭和46年設立の小品盆栽と小品水石の愛好家有志会。年に一度東京銀座三越デパートでの陳列会を開催。席飾りに小品盆栽と水石を取り入れて飾ることを主眼とした独特の愛好会であった。



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