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小品盆栽、東京支部講師陣の楽しみ方 (03 -前編-)

自宅で過ごすことが推奨されてきたここ数年、家で小さな桜盆栽を愛でることから始まって盆栽に興味を持つ方も増えたのだとか。
植物と素敵な出会いをして、仲間と出会って、わくわく楽しく盆栽を愛好し続けてほしい。初心者から経験者まで楽しみ方は人それぞれです。

ということで、東京支部例会で講師を務める盆栽愛好家それぞれの盆栽の楽しみ方などについてお伺いしてみました。
これが正解!それは間違い!という話ではありません。個を尊重し、楽しんでいただければ幸いです。


講師インタビュー 第三回目は当支部支部長 畔柳 嘉武氏です。
畔柳氏は、東京支部発足前から当協会所属盆栽愛好家であり、ブランクを経て再加入後、役員、支部長としてご活躍されています。また、グリーンアドバイザーとして関連団体にて講師を10年以上務めておられ、横浜パシフィコのイベントでは、ちびっこに苔玉作成体験を手ほどきされることも。
そんな畔柳氏の盆栽ライフ、その楽しみ方を覗かせていただきましょう。

第三回 畔柳 嘉武 氏

日本小品盆栽協会 東京支部 支部長 / 日本小品盆栽協会常任理事
盆栽歴:54年 東京支部歴:約20年+15年

【 きっかけ・環境・アラカルト 】

ーー盆栽との出会い、興味を持ったきっかけを教えてください
中学生の頃、盆栽花木生産者の家の同級生宅で。眺めていたら「お?お前こんなの好きなのか」と。その家人から紅白の枝を接木した花桃をもらったのです。今思うとそれが初めての盆栽かと思います。もっとも育て方もわからないうちに、親が庭に下ろしまして。数年間開花を楽しんだ記憶があります。

ーー中学時代から盆栽が身近にあったのですね
神田川と善福寺川に挟まれた自然豊かな武蔵野台地で、幼少の頃より動植物との触れ合いを遊びの道具として育ってきました。

ーー本格的な盆栽とのお付き合いはいつ頃でしょうか
会社勤めを始めた昭和43年頃、折からの皐月ブームを目の当たりにして、皐月盆栽にのめり込んでいきました。私が師事したのは、ハウスで苗を150センチ以上に伸ばし銅線で独特の曲をつける板橋皐月の名人、塩野谷という職人さん。休日になると、練馬の皐月園に入り浸っていました。
小品盆栽へのシフトは、手狭な棚場の環境に限界を感じたため。とある盆栽書で日本小品盆栽会(※1)を知り、当時の事務局である岡田晃さんにコンタクトしました。昭和46年のことです。

当時は盆栽一途だったので、朝出勤して「お客さんのところに行ってきます」と言い残して車でぴゅーっと盆栽園に行っちゃう。で、午後3時頃まで帰ってこない。そんな生活でした。

ーー棚場の環境を教えてください
車庫の上に自作した3×5mの棚場(※注:畔柳氏はDIYアドバイザーの資格も所持)。
陽当たりが良いので、トレーに鉢をびっしり並べて乾かないように工夫しています。ちなみに、この時期は半分ぐらい野菜の鉢が並びます。

畔柳氏宅棚場のごく一部を撮影いただいた。きっちり並んだトレーの中に、樹や草が同種類ごとまとめられている。上段奥に大きめの鉢が並び、青空の広がる開放的な棚場だが、全貌は秘密。

ーー実用的ですね。笑。畔柳さんは房総方面に畑をお持ちですよね。畑で盆栽も育てているのでしょうか
昔はね。皐月とほかの木を植えて。太めのボリュームある木を作る時に。
でもその土地はもともと若い時に遊び場として購入したのです。農作業をしたかったし、釣りも趣味だったから釣りのできるところでと。
縁あって建ててもらったプレハブに、自分で、床を張って風呂場とかトイレとかを増築して、ね。

【 興味を持っているコト・好きなコト 】

ーー小品盆栽で、もっとも興味を持っていることは何ですか?
東京支部の名人たちはある意味達観しちゃってて「無の境地」かと思いますが。それに私も近くて、あるからやってる。とりあえず枯らさないように、とか。日常になっている、です。

ーー畔柳さん流の、小品盆栽の楽しみ方を教えてください
同じ樹種をたくさん作って、ひとつでも気に入ったものができれば嬉しい。

ーー丁寧かつ熱い指導で初心者思いな畔柳さんの実践講座ですが、盆栽育成上、押さえておくとよいポイントなどお聞かせください
とにかく夢中になること。指導する立場からは、いかに夢中にさせるか、です。

ーー畔柳さんといえば「松」がお得意の印象です。黒松、赤松、五葉松、どれがお好きですか?
盆栽はなんでも好きです。一番はなくて、雑木でも松柏でも草でもなんでも好き。
作りやすいのは、黒松。丈夫だし「盆栽の型」を追い求めなければ、たとえ持ち崩してもだんだん自分の好きな木になっていく。そんな懐の深さが黒松にはありますね。

ーー本日お持ちいただいた「お気に入りの1本」も黒松ですね。
この木は、仕事で忙しい合間を縫って買った三河黒松で、盆栽らしい盆栽を買った第1号です。すでに65年は経過しています。蒲田の盆栽園で購入したときは鉛筆ぐらいの太さの模様木で3,000円だったかな。当時としては高価でした。
ねぇ、この枝とこの枝、どっちかを落とそうと思ってるんだけど、どう思う?笑

古さのにじむ素晴らしい幹肌の黒松。さて落とす枝はどうしましょう。笑

ーー模様木からここまで改作されているのですね。
この木はあちこち手を入れて何度も改作をしています。
下枝が弱ると改作をして。模様木が文人木っぽくなっていきます。
5年後同じ木を飾っても、それとわからないほどにはリフレッシュしていくのです。

ーー都内のベランダで松を育てる際、培養のコツがあれば教えてください。
小品盆栽は,文字通り小さな木です。その木の特徴を表現するためには、葉の大きさをできる限り小さくしたいですよね。松で言えば色々な技を使った短葉法といわれるものです。これに欠かせない要件が、日照です。これを満たすためには…できる限り陽当たりの良いベランダの前面に置くのが良いでしょう。

後編へつづきます



※注1:当時は、「日本小品盆栽会」の名称であった。(1977年「日本小品盆栽協会」と改称。)

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