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まっちんぐあぷりなおんなのこ


“私には見えません”

「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳した夏目漱石とは気が合いそうだ。


誰かと見る月ははっきりくっきり見える。
大きく見える。
1人では輝けないって忘れてしまうくらいに綺麗に見えて、時にはそうじゃないことも思い出す。
三日月だって満ちて見えて、
うさぎだって見つけられる。

いつかふと目の奥に現れそうだなと、思う。

彼とはきっと気が合うと思う。



意味が伝わりきった今ではなくて、
私も彼と同じ時に生きていたならば。彼より先に。
そばにいてほしい人にきっと、そう伝えたと思う。


周りくどく、面倒に。他愛もなく。
無邪気に月を褒める私を、伝える。



あなたの前だから。

あなたがそばにいるから。

あなたにかわいいと思ってもらいたいから。



真夜中のさみしいに寄り添うように、
夜空から1人で輝いて

「わたしも、」

なんて言ってくれるあなたを、利用する。



ちょっとぐらいいいでしょう?
今日のあなたはとっても綺麗だから。
うさぎもいるし、1人じゃないみたいだし。
伝えさせてほしいの。
伝えてあげたいの。


何回と、何人にも繰り返して
利用した月はどんどん欠けていくけれど
知らないフリを貫いた。
あのシミがなんだったのかなんて考えもしないで

そんな余裕はどこにもなくて。


気づけば今夜もまた、私は1人。

気づけば、なの。
毎回、ほんとに。

真っ暗な部屋で

満たされない何かがあって


端的思考


また1人だ、

どうして?なんで?

一旦落ち着こう。

どうしよう。

好きな音楽がうるさい。

寝たら忘れる?

待って無理しんどい。

前はどうやって乗り越えたっけ。

ぁ、

そうだ。


「あなたもよね...?」


いつもみたいに縋り付くように見上げた夜空。


いつものあなたはどこにもいない。


あぁ、今日は新月か。

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