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タクシー・9

 



恥じる事はありません、元より〝利胆〟の徒たる者は標準型の唐変木ではなく、臆す、人の目、自分の目を気に病む、そんな感性を持たない進化の先頭を行く、或いは反対に脳に羞恥点を増設しようとするエヴォルションの手先、ダーウィンの犬たる進化ビールスを丈夫一式且つ機能不全の前頭葉と落ち着きのない小脳が阻止した、そのいずれかである筈の、いや非常に強力な筈の、否もっと絶対的な筈の超特級唐変木なのです、いいえこの際思い切って、おたんちんこなすびの佐渡おけさめ、と云い放ってしまいましょう、気おくれする輩が真性な遊園地を持つ事はかないません、わたしもわたし自身を丸のまんま魅惑の粋を極めた胆どもに持って行かれるのはこの際必至だと認めざるを得ず、自律神経の協力が絶たれ、声帯の操作ボタンの位置を失念し、叫ぶ事もままならず喘ぎ涎し、いつの間にか右手に握りしめていた白旗を今日只今は揚げてしまうのかと落涙に及ぶ幕、恥ずかしながら幾度か、しかしもういけない、という際きわで、絶たれたはずの自律神経がエマジャンシ・バトンの在りかをはたと思い出したものか、先方の意表を突く恰好でひょいと体をかわしました、わたしは今まさに持ち去られようとしているわたし自身に思いもかけず無関心を決め込んだのです、知らんぷりで横座りに座り、生意気そうに吸わない煙草をふかしながら目を細め、軽く鼻歌でボレロなんかをやりながら足を組み替えたりと、まるでの平気をしたのです、大げさでないアクトはいっぱいいっぱいの果てにふと出たもので、てきめんの効果がありました、聴覚に問題のある先方は、この野郎さんざいい歳ををしやがってどうも変だな、ここでバナナ・ボートのハミングもないもんだと訝った当にその瞬間、わたしは無理だと観念した知恵の輪をするりと外したのです、頑固なヒックを人知れず吾知らず編み出した技で押さえつけた時ほどの満足でした、離れ業によって生還を果たした一例です、わたしどもオタンコの脳内には電子を頼んだ拡大鏡が本来的に組み込まれており、何でもないと思われる空気の中に潜む情を販ぐ組織が送り込んだと見られる粒を調査、品質の確認、グレード別けを安全管理として行っております、無意識ではありますが、この情報のお陰でふとした気の迷いからつまらない女郎を買って処世の判断を誤る愚を確信犯として楽しめる、或いは傾城のため身辺この上なく身軽になる幸運を迎えるという極稀少な例もないわけではないのです、ともかく入り用な時に届く確率も内容の精度も能う限り低レベルですが、一往はこの安全管理のお陰で安全の取り扱いを自己判断するチャンスを得ているのです、その極めて希な偶然を取り込み逆手に取ったかどうだかははっきりしませんが、ともかくも私ども同好の志にとってこの上なく同時にこの下もなく、つまり絶対で愛しいのは〝利胆〟です、何ものにも先んじて愛情を注ぎ、安全、健康、財産を総てすっぺりぽんと擲ち守るべきは、何千何万の光年を過ごそうとも天下天上に日の目みるを夢想だにしない、漆黒の闇にチラと、鱈子の一粒にも満たぬ、太陽に縁を切った光なる〝利胆〟、選ばれて在る者の網膜、直腸、喉チンコ他、〝利胆〟認定粘膜のみが認識可能な、見返りを一切絶たれた、仮に何処かの不具合で報酬の申し出があったとしても断じて取り合わない、この高邁なるラリ助朴念仁が一手占めの道楽です、選民としての恍惚は遠慮はばかりなく享受して堂々なりといえども、趣味手慰みの本分、道をわきまえ金輪際肝どもが演じる劇場の舞台へ上がってはなりません、



つづく


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