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タクシー

19
宿泊していないホテルを三人の男達がチェックアウトするまでのしばしに命がけで繰り広げる雑談
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#宴の跡

タクシー・1

「嶋田畜農養育園出身のマルキドホマレですね、徳川晩期、当時咎人から人気をとっていた風光明媚で米が佳く、つまりは酒がいい、女賊もいい、あの悪太郎どもが憧れた流刑島は中部の縊れお仕置き地区にほど近い括れ部落で発見された野生種が発端の栽培物で、只今小僧さん躙り込みと共に香る裏日本系の、若やいではいるがやや陰気に湿った軽い黒煙臭は、雌の幼鳥つむりに冠した黄なる硬きトサカが為、炭は左胸、右腿のどっちつかずです、実に分かりやすい、わたしこの桃源島で畜農の養育に服務する嶋田さんとは懇意でね

タクシー・19 最終回

  「息子はいいとして納品された戦車の中で酔いつぶれたぼっちゃん鶏の肝がこの皿にのった炭なんですね」 「貴方は勘がいい、正にその通り、はるばる来たぜキキギモ、といったところでしょうか」 「なるほどそれで鶏にもかかわらず発電所の御曹司であるぼっちゃんが酒をめぐる旅をしたことで何でもこの肝が特別の中でも特に別になったんですね」 「いえ普通の炭だと思いますが」 「ぼっちゃん鶏の酒行脚あれこれは当然この肝に反映しておる故のお話だとじっと我慢して聞いておりましたが」 「ええ