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一緒に帰ろうよ

前回の投稿からかなり時間が空いてしまった。
さぼっていたわけじゃなく、納得のいく文章を書けずにいたからだ。
納得のいく文章を書けずに、ガンダムSEEDを観返していたからだ。
くそッ!僕がコーディネーターなら、ちゃちゃっと面白い記事が書けたのに…!
まぁ言い訳はこれくらいにしておこう。


ある日の撮影が終わった夜の1時をすぎた頃。
石井の家を出て帰ろうとすると、こんのが一緒に帰ろうと声をかけてきた。
引っ越したことで、途中まで家の方角が一緒だという。
あれ?そうだったかな?とは思ったが一緒に帰ることに。

性格が優しすぎるあまりに一緒に帰るのは気まずかった。
しかし人通りが少ない夜道であんな大男に襲われたらひとたまりもないので、機嫌を損ねないようにおべんちゃらを駆使して、それぞれの帰路に分かれるのを待った。

しかし歩けども歩けども、ロン毛の男はついてくる。
意を決して「そろそろ俺の家まで着いちゃうけど、どうする?」と聞いてみた。すると僕の顔を夜の闇よりも真っ黒な瞳でじっと見つめ
「てっせーの家の前まで送っていくよ」と。
暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い夜なのに、冷や汗が止まらなかった。

どうにかしてこの長髪の大男を撒かなければ。
家には愛する妻と愛する猫がいる。彼女らにまで被害が及ぶかもしれない。
そんな考えを読まれないようにしながら、僕は本来は使わない道を歩き、適当なマンションの前で立ち止まり、声が震えるのを抑えながらここが自分の家だと言い張った。
「なかなかいい家じゃないか」化け物はそう言って、僕が家に入るのを待っている様子だった。やばい、バレる。そこで僕は機転を効かせてタバコを買いに近くのコンビニに行くから、そこで解散しようと提案した。
「コ・ン・ビ・ニ?」
「そうコンビニ、美味しい食べ物や飲み物があるんだ。一緒に行こう。」
「オデ、タベル、スキ」

そうしてうまくコンビニで怪物の気を逸らし、食べ物に夢中になってる隙にどうにか自分の家に帰ることができた。
玄関を開け妻と飼い猫に迎えられ、安堵のあまり僕は泣いてしまっていた。


次の日の朝、玄関にある郵便受けのガチャンという音で目が覚めた。
新聞は取っていないし、郵便が届くにしては早すぎる時間だ。
恐る恐る郵便受けを開けると中には大量の長い髪の毛が入っていた。

異様な光景に腰を抜かしていると僕のスマホの通知音が鳴った。
嫌な予感は的中。あの男からのメッセージだった。
「君も昨日の夜から引っ越したみたいだから、引越し祝い入れておくね。」

やはり、家がバレてしまったようだ。
僕も本当に引っ越しを考えなければ。

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