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夏のぐんぴぃさん

ぼくらの家では僕、篠原、木田さんの3人が部屋を所有しており、奈良田はリビングに住み、ぐんぴぃさんは篠原と木田さんの部屋をローテーションで間借りしています。

そのような部屋割りは候補として今の部屋があがっていた時から話し合いで決まっていました。ぐんぴぃさんと奈良田は家賃が安ければ自分の部屋が無くても構わないという意見で、それに対して僕は自分がルームシェアに耐えうる人間かわからなかったため1人部屋はどうしても確保したいと思っていました。

もちろん家賃はそれぞれ住環境に応じて変えており、金額は僕>木田さん、篠原>ぐんぴぃさん>奈良田の順で、話し合いで全員納得する形で決めました。

現在まで住んでみて、特に誰かが耐えられなくなるくらい不満を抱えるというような事は僕が見る限りは無さそうですが、一つ明確な問題をこの家は抱えています。

それは「夏のぐんぴぃさん」です。ぐんぴぃさんは体が大きく、太っているので、夏の暑さにはめっぽう弱く、汗も大量にかくことが予測されています。

しかし、現在この家にエアコンが設置されているのは篠原の部屋だけで、他の部屋にはエアコンが設置されていないのです。

真夏にエアコンが無いという環境下におけるぐんぴぃさんはどうなってしまうのか。このままいったら悲劇は避けられません。エアコン設置などの「夏のぐんぴぃさん対策」に向けて動き出さなくてはいけないのですが、皆なかなか重い腰を上げず、夏のぐんぴぃさん問題から目を背けて過ごしてきてしまいました。

まだ夏は先だし、まだ大丈夫...。と、先伸ばしにしていき、夏の話をすることが何となくのタブーになり始め、いつしか皆、この家に夏が来るという事自体を忘れているようにすら見えました。

しかし、そんな僕達の背筋を凍らせる出来事が今朝起きてしまったのです。

昼頃、夜勤から帰って来て木田さんの部屋で眠ろうとしていたぐんぴぃさんが

「今日暑いっすね!もう夏だな!」

と言ったのです。僕はその時リビングにいたのですが、言葉を失ってしまいました。今日は4月の22日。季節で言ったらまだ春です。

確かに少し暖かくなってきてはいましたが、夏というにはまだ早いのです。しかし、ぐんぴぃさんは夏だと言っている...どういうことだ...?僕はある絶望的な事実に気づいてしまいました。

「ぐんぴぃには僕達よりも早く夏が訪れる...!」

先ほど述べたようにぐんぴぃさんは太っているので、その分少しの暑さでも僕らよりも遥かに暑く感じるのです。そのズレを想定していなかったのです。

僕達は「夏」を7月8月と認識していましたが、それは大きな認識のズレで、ぐんぴぃさんの「夏」はもう始まってしまったのです。希望的に見積もっても、ぐんぴぃさんにとって今は「初夏」...。5月はもう「真夏」...。

僕は自分達のこの問題への対応スピードの遅さを悔やみました。もっと早く対応しておかなければいけない問題だったのです。

「僕達はこの夏を乗り越えられるのか...。」

考えた瞬間、身体中から汗が噴き出してきました。聞こえるはずのないセミの鳴き声も聞こえてくるような気がしました。「夏」はもう始まっているのです。

お付き合いありがとうございました。次回は4/24更新予定です。

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