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ぼくらの家の冷蔵庫 食べ物の神隠し

ぼくらの家には冷蔵庫が2台あります。5人で住んでいると1台では足りず、木田さんとぐんぴぃさんが前の家から持ち込んできてくれた2台をそのまま皆が使わせてもらっています。

食料は基本的にシェアしていないので5人分の食料が雑多に詰まっている冷蔵庫はトラブルの火種を時折生み出します。

オーソドックスなトラブルは食料の消失です。あるはずの食料が消失するという事件は冷蔵庫内に限らず台所周辺で頻繁に発生します。食料の消失は「犯人が判明するパターン」と「犯人が判明しないパターン」の2つに別れます。

前者の場合、大抵は犯人が自分のものだと勘違いして食べてしまうという事が原因で起こり、犯人が持ち主に謝罪して、消費してしまった食料を新たに購入することで解決します。

最近僕も間違って自分のうどんだと思って奈良田のうどんを一玉食べてしまうという事件を起こしてしまいましたがその後しっかりと謝罪して対価を支払う事で解決しました。

後者の「犯人が判明しないパターン」となると話は少々厄介です。自分の食料が無くなっているのに犯人が現れないのです。まるで神隠しにあってしまったかのように食料が消失してしまうのです。

この「神隠し」がいつ頃から起きるようになったか思い返すと、僕が知る限り1番最初に神隠しにあったのは確か篠原の米だったかと思います。

ルームシェアを初めて何週間か経ったある日の朝、僕はキッチンで朝食の準備をしていました。まだ皆寝静まっていて、静かでした。僕はイヤホンをしながら準備をしていたのですが、突然僕の真横にヌッと人影が現れました。驚いて横を向くと立っていたのは篠原でした。

「僕の米知りませんか?」

篠原は微かな怒りの表情を浮かべながら尋問のように僕にそう聞いてきました。僕はこの家で米を炊いて食べた事が無かったので、はっきりと自分は潔白であると伝えました。

「僕の米が明らかに減っているんですよね。この家の中に米泥棒がいます。」

篠原はルームシェア仲間の事を「米泥棒」呼ばわりするほど憤りを感じていました。他のメンバーへも尋問を行ったようですが、結局「米泥棒」は見つからず、篠原の目減りした米が返ってくることはありませんでした。

最近も誰かのキムチが神隠しにあうという事件が発生してしまったようでした。キムチの神隠しに関係があると思われる木田さんぐんぴぃさん篠原の3人が言い争いに近い話し合いをしていました。

何故このような事が起きてしまうのか。本当に神隠しあってしまったという原因は除いて、現実的に考えられる原因は2つあります。「食料の持ち主の勘違い」か「犯人が自首しない」の2パターンです。

前者であればまだ良いのですが、後者だった場合、それはとても恐ろしい事です。食料の消失は基本的に証拠の残らない犯行なので、犯人が勘違いして食べてしまって、後でそれを認めて謝罪する性格の持ち主という、性善説に基づいた解決法しかありません。

この家の中に、性善説の通用しない、仲間の食料を意図的に食べ、それを平然と隠し通す悪党がいるとは信じたくありません。それでも、神隠しは時折、忘れた頃に起きてしまいます。

実は今日も僕がラップに包んで半分残していたはずの玉ねぎが消失しているような気が...。勘違いだと思う事にします...。

お付き合いありがとうございました。次回は4/14更新予定です。

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