見出し画像

悪魔になってしまった篠原 後編の前編

(思ったより長くなってしまい、後編の前編になってしまいました。申し訳ありません。)

僕は慌てて自分の部屋を飛び出してリビングに行きました。リビングには篠原、奈良田、ぐんぴぃさんの3人がいました。奈良田は全て諦めたような微かな笑みをこちらに向けてきました。僕はその表情を見て一瞬で状況を理解しました。

ぐんぴぃさんのリレーが奈良田に回されてしまったのです。最も恐れていた、家の中でリレーが回るという事態が現実になってしまいました。ぐんぴぃさんから奈良田、そして、次は、僕...。そのリレーはリレーの中でも僕が恐れていたリレーでした。

「奈良田、やめてくれ!本当にやめてくれ!」

僕の声は恐怖でうわずっていました。こんなにも早く迎えが来るとは思っていなかったのです。心の準備が何も出来ていませんでした。

「いや、やめてって言われても...。」

奈良田はニヤニヤと笑いながらそう言いました。もう何もかもどうでもいいというゾッとするような笑顔でした。既に何もかも晒され終わったぐんぴぃさんはそんな奈良田の傍らで横になり、ぼんやりと見るともなしに携帯を見ていました。部屋全体に退廃的な空気が漂っていました。

その部屋で篠原だけがイキイキと楽しそうにしていました。「奈良田のリレー撮った後古川さんのリレーを撮ればいいからその方が効率的だよな。」「古川さんに色々と迷惑かけられたりしただろ?」等と奈良田をそそのかすような事を言っていました。やはり、奈良田が僕にリレーを回す流れを作ったのは悪魔の仕業だったのです。

悪魔が作り出したその流れに逆らうような自我は既に奈良田から失われており、ニヤニヤと笑いながら「そうですね...」と答えていました。このまま行ったら確実に僕にリレーが回って来てしまう。僕は奈良田の前に膝をついて土下座しました。土下座する事に何のためらいもありませんでした。

「頼む。今ここで殺さないでくれ。どうせ俺も何かのリレーに当たって死ぬ。もう少しだけ生きさせてくれ。」

必死に命乞いをしたのですが、奈良田に響いている様子はありませんでした。「やめてくださいよそんな事、頭を上げて下さい」と言われて頭を上げましたが、不気味な微笑は消えていなかったのです。

もうだめか...。諦めかけたその時、ひとしきり笑い終えた悪魔が口を開きました。

「とりあえず奈良田のリレーを手伝ってあげましょうよ。色々アイディアとか出して協力してあげたら奈良田も回さないでくれるかもしれませんよ。」

と、提案してきたのです。奈良田もそれを受けて「まあまあ...」と言っていました。どれだけ信じて良いものかわかりませんでしたが、僕はもうそれにすがるしかありませんでした。

かくして、奈良田のリレー撮影が始まりました。音楽の必要なリレーだったので、僕が音響を担当し、ぐんぴぃさんが撮影を担当しました。

悪魔は協力せずにどっかりと横になって漫画を読み始めました。リレーをやるやらない、回す回さないの醜い人間の姿が悪魔の好物で、リレーの内容自体にはさほど興味は無いようでした。

僕とぐんぴぃさんは奈良田のリレーを見届けました。僕は「この曲が1番ぽいかな!?」「別バージョンも一応撮るか!」「ああ、こっちの方が良いね!」等、協力しているというアピールをするのに必死でした。ここでの協力度合いによっては生き延びれるかもしれないからです。

撮影があらかた終わり、いよいや奈良田が自分のリレーをあげて、次の人間を指名するツイートをする時が来ました。最後の交渉の時だと思って再度許してもらおうと奈良田に話しかけようとしたその時、悪魔が言いました。

「奈良田、やれ。」

続く

お付き合いありがとうございました。次回は4/20更新予定です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?