奈良田の料理

外出自粛で家でご飯を食べるようになっていますが、そうなると自炊に力を入れ始めるようになっている人もいるかと思います。かくいう僕も、それまではスパゲティやうどんを茹でたり、何かを炒めたりといった本当に簡素な調理しかしなかったのですがほんの少しだけレベルを上がり、カレーを作ったり、野菜を沢山入れたポトフもどきを作ってみたりと、「煮る」要素のある調理をするようになりました。

ぼくらの家全体になんとなく料理に力を入れようという気持ちが芽生え始めているなとは感じていたのですが、その中でも特に奈良田の料理への意欲に凄まじいものを感じました。

ある日、リビングでテレビを観ていたら、キッチンの方から篠原が声をかけて来ました。

「古川さん、奈良田が...めちゃくちゃ旨そうなトンテキ作ってます...!」

慌てて駆け寄ると、奈良田が黄金色に輝くトンテキを悠然と焼き上げていました。物凄くいい匂いがしてくるとは思っていたのですが、奈良田がトンテキを作っていたのです。

僕と篠原は「何やってんだ!」と奈良田を叱りつけました。それほどまでに美味しそうなトンテキを作られてしまったら、自分が食べているものが貧相に感じられてしまい、嫉妬にかられてしまうからです。

奈良田は「何がですか笑」と余裕のある笑みを浮かべながら、トンテキを皿に盛り、付け合わせのもやし炒めも添えていました。見た目も完璧なトンテキに僕と篠原は悔しさに唇を噛みました。

それまで週5ペースで朝から夜までバイトしていた奈良田は、コロナ騒動で1ヶ月以上前からバイトが完全に休みになり、しかも給料は補償されるので新しいバイトをする必要もなく、ずーっと家にいます。元々料理はするほうではあったらしく、空いた膨大な時間を料理に注ぎ始めたのです。

奈良田の勢いは留まる所を知らず、木田さんと共同でチャーシューを作りました。共同とは名ばかりで、ほとんど奈良田が調理していたように見えました。

チャーシュー自体も味見させてもらったらすごく美味しかったのですが、奈良田はそのチャーシューの煮汁?を別の料理にも応用して、煮汁の旨味の効いたとんでもなく美味しいカレーや肉そばを作ったりもしていました。

完全にこの家で最も料理の上手い人間という立場を確立した奈良田の躍進はさらに続き、先日の僕の誕生日には奈良田がステーキを焼いてくれました。また、ぐんぴぃさんと木田さんから頼まれて、2人から材料費をもらってあの黄金色のトンテキを焼いて振る舞ったりもしていました。

それら全てを悠然とやってのけ、換気扇の下でタバコを吹かす奈良田を見て、僕はワンピースのサンジだと思いました。奈良田はこの家のサンジだったのです。

今日、奈良田がZoomでネタ合わせをしたいという事で僕の部屋を貸しました。そのお礼にと、奈良田が自分の夕飯用に作った麻婆豆腐を少し分けてくれる事になりました。

何でも、タレを自分で豆板醤や甜麺醤を使ってイチから作ったようで、これからそれを食べます。楽しみです...。

お付き合いありがとうございました。次回は4/30更新予定です。

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