見出し画像

ゲートルーラーのちょっと気になったところ

みなさん、こんにちは
私は普段マジック・ザ・ギャザリング(MTG)というカードゲームを中心に遊んでいるカードゲーマーです。
といっても、MTGだけでなくほかのカードゲームも(ほとんど大会には出ていませんが)ちょこちょこカードを集めたりしています。
DCGなんかもそれなり(?)に手広くやっています。
ですから、当然新しく発売されるカードゲーム情報も一応チェックはするわけです。
最近であればデジモンカードゲームやサモン&マジックなんかですね。
特に関心が強いのはゲームのルールデザインで、チュートリアル動画なんかを見るのが好きですね。

そんな私が何年か前からひそかに期待していたカードゲームがあります。
それが池っち店長(知らない人はググってね)という方が制作していたドミネーターというカードゲームです。
紆余曲折あって、このドミネーターというカードゲームはゲートルーラーというカードゲームに引き継がれることになるのですが、まぁそのあたりの話は横に置いておきましょう。

とにもかくにも、ゲートルーラーというカードゲームが新しく発売されるに至ったわけです。

そんなゲートルーラーですが、発売日が近づくにつれ情報がどんどん解禁されていき、カードリストも公式サイトから見ることができるようになりました。

https://gateruler.jp/search/

この記事はそのカードリストについての内容になります
(あらかじめお断りしておきますが、本記事では池っち店長のツイッター上での言動については特段の取り扱いを行いません。)

「カードリストについて」とは言っても、どのカードが強いとかそういう内容ではなく、「カードゲームのデザインとしての問題点(ルール上の問題とか、プレイ上の問題とか・・・)」という観点からカードを眺めていきたいと思います。
(どのカードが強いかなんて、メタゲームが進まないとわかりっこないですからね)

前置きはこれぐらいにして、さっさと進めたいと思います。よろしくお願いいたします。

イベントカード全般

画像4


ゲートルーラーにはイベントカードというカードがあります。(遊戯王で言うところの魔法・トラップ、デュエマで言うところの呪文)
そのイベントカードの一部には上記のような「〇〇の時に使うことができる」という発動条件を持ったカードがいくつか存在しています。
これは非常にルール上の問題が発生しやすいデザインです。
なぜなら、「カードの解決時に何が起こるかは解決時にならないとわからない」というのがカードゲームにおける大原則だからです。
このことは「カードの効果そのものを参照するようなカードはルール上の問題を起こしやすい」ということになります。
遊戯王で非常にわかりやすい実例があるのでご紹介します。

画像2

これはスターダストドラゴンというカードで「フィールド上のカードが破壊される効果」が使われたときに発動できる効果を持っています。
先ほど挙げた「カードの効果そのものを参照するようなカード」ですね。
さて、ここにスナイプストーカーというカードがあります。

画像3

サイコロを振って、出た目が2~5ならそのカードを破壊できるというカードです。
さて、(遊戯王プレイヤー以外の)皆さんは、このカードを見て「スナイプストーカーの効果に対してスターダストドラゴンの効果を使うことができる」と思ったかと思います。しかし、実際には「効果処理時にカードが破壊されるかどうかが確定していないためスターダストドラゴンの効果を使うことはできない」というルールになっているのです。
これは非常にわかりにくいというか、直感から著しく外れたルールです。
もちろん、これは遊戯王のルールですからゲートルーラーで同様のカードが作られたときに「確定していなくても使うことができる」というようなルールにすることもできるでしょう。
しかしながら、それでもなお「プレイヤーにとって混乱の原因になる」「ルール上の整備が大変」という点には変わりません。
例えば「クリーチャーが破壊される効果に対して発動できる」カードは「フィールドのカードを一枚破壊する効果」に対して発動できるのでしょうか?
あるいは「破壊されないクリーチャーに対してクリーチャーを破壊するカード」を使ったときに「クリーチャーが破壊される効果に対して発動できる」のでしょうか?
そのほかいろいろなシチュエーションが考えられますが、いずれにせよ問題は残ったままです。

この問題の解決方法は実にシンプルで、置換効果という手法を使うことです。
置換効果とは、ある処理を別の処理に置き換える効果です。
この置換効果の良い点は「置換効果を設定するだけならカードの内容を直接参照しなくてもよい」「カードの処理が実際に確定する段階において判断できる」という点です。
例えば、前述の「フライング・シールド 」のカードであれば以下のようなテキストに変更することで、ほとんど同等の機能を実現することができます。

変更前
使用タイミング:セットして、君か味方ユニットに、ダメージが与えられる時に使える。
■次のダメージを2軽減する。

変更後
使用タイミング:いつでも使える
■このターン、君か味方ユニットに、ダメージが与えられるなら、1度だけそのダメージを2軽減する。

このような方法をとることで、カードの内容を直接参照することなく、置換処理の一種として実装することができます。
つまり、「何をするカードか」を参照するのではなく「何が実際に起きたのか」を参照するほうがルール上の取り扱いが簡単だということですね。

もちろん、置換処理にもルール上の問題はあって、例えば
「破壊されるときに代わりに手札に戻る」というカードと「クリーチャーを破壊してそのパワー分ライフを得る」というカードの相互作用などが考えられますが、置換処理というテクニックを使わずにカードデザインをすることは事実上不可能(置換処理のルール整備は必須)なので、「置換処理とカードの発動タイミングの2つのルール整備」をするよりも「置換処理のルール整備」だけをするほうが問題は少なくなると思います。

話はそれますが、「でも遊戯王はカードの効果を参照するカードをたくさん作ってるよ」という意見があると思います。
その答えは遊戯王の誕生経緯にあります。遊戯王はご存じのように漫画から出発したカードゲームです。
ですから、「漫画の表現としてかっこいい表現」が一番大事なポイントになるわけです。
漫画としてなら「このターン次に与えるダメージを~~~」なんて言うよりも「ダメージを与える効果を無効にする!!!!」って言ったほうがやっぱかっこいいわけですよね。
ですから、その漫画としてのカッコよさを再現するという点で生み出されたカードゲームでは出発点が異なってくるわけです。
後は、単純に20年以上前に作られたカードゲームですから、ノウハウの蓄積がない中で作られたカードとの整合性を保つってのもなかなか難しいことだと思います。
一方でゲートルーラーはメディアミックスも特にしてないようですし、こういったノウハウが十分蓄積された時代のカードゲームですから、やっぱり少し気になってくるわけです。
もちろん、ゲートルーラーがその点も含めて「それでもカードとしてのスタイリッシュさを優先した」ということであれば、それはそれでいいと思います。
ただ、「ルール上の問題が常について回りますよ」ということです。


オープンカード

画像4

画像5

オープンカードとは、要するに引いたときに必ず公開してプレイするというカード群のことです。
このカード群、他のTCGでも似たようなものがいくつかあります。
代表的なものは以下の通りです。

画像6

マジック・ザ・ギャザリングの奇跡

画像7

デュエルマスターズのビビッドロー

画像8

遊戯王のインフェルニティ・デーモン

いずれも似たようなカードですが、ゲートルーラーのオープンカードとは大きな違いがあります。
それは
「引いたときに見せるかどうかが任意」
「見せるとプレイヤーにとって有利な恩恵がある」
という点です。
この2点は極めて重要な点です。
まず、引いたときに見せるかどうかが任意という点で不正の余地がなくなります。
うっかりミスだろうと何だろうと、見せなかったことに対してルール上の問題はありませんし、反則行為としてペナルティを受けることもありません。
また、自分にとって有利な恩恵があるため、プレイヤーが積極的に公開するインセンティブが発生します。
その一方でゲートルーラーの場合は強制かつプレイヤーに不利な内容となっています。これによってプレイヤーが不正をするインセンティブを与えることとなってしまっていますし、仮に「うっかり公開するのを忘れてしまった」場合に「反則」という重たいペナルティが発生してしまいます。
この懸念は特に初心者がプレイする上で無視できない点でしょう。故意ではなく過失なのにプレイヤーが大きなペナルティを負ってしまう、あるいは故意に公開せずに利益を得たとしてもそれがばれない可能性がある。
という問題が発生するのです。

ちなみに、mtgではルールレベルでこのような「うっかりミス」に対して過剰なペナルティを与えないルールがあります。
それが「誘発忘れ」というルールです。ここでは解説しませんが、気になった方は調べてみてください。
いずれにせよプレイヤーというのは間違ったりミスをするものです(だから、勝負は下駄を履くまでわからないわけですよね)。なので、そのミスに対して寛容になるようなゲームデザイン・カードデザインにしてほしいなと思うわけです。
「うっかりだろうがミスをするのがダメ」というのであれば、お互いにデッキをシャッフルした瞬間にゲームを終えて、ミスがないという前提でデッキの並び順を検証して勝敗を決めればいいわけです。でも、そうしないんですよね?なぜなら人間はミスをするし、それこそが勝負の醍醐味なんですから。

OD/TD

画像9

画像10

なんのこっちゃと思うかもしれませんが、それぞれオーバードライブとタッチダウンというキーワードの略称で、「場に出たとき」という効果をキーワード化したものです。
これにはいくつか問題があります。
まず、OD(オーバードライブ)ですが、これはドライブゾーンという領域を経由して出たときに発動する効果です。
この効果の問題点ですが「ドライブゾーンは目に見えない領域」ということです。
例えば、手札・デッキ・墓地・フィールドという領域は実際に目に見えている領域です。
その一方でドライブゾーンというのは目に見えない領域です(まぁ、もちろんフィールドのどこかにカードを置けば目に見える領域にはなりますが・・・)
この点の何が問題かというと、目に見えない領域というのはプレイヤーにかかる認知負荷が非常に大きいということです。
他のカードゲームであればMTGのスタック、遊戯王のチェーン、デュエマのトリガーのストック
などが代表的ですね。
(私はMTGを人に教えたことが何度かありますが、やはりスタックの説明だけは難しいです)
とはいえ、カードゲームにおいて目に見えない領域を全く使用しないというのもそれはそれでデザイン上難しい問題です。
ですから、必要最低限の要素以外はカードの実体として表現するほうが良いわけです。
これの解決策は単純で、プレイマットに「ドライブゾーン」って領域を置くだけでいいので、これは大した問題ではないとは思ってますが・・・

画像11

(開発中のものとのことですが、ドライブゾーンが明示されてないので、プレイヤーにとっては「目に見えない領域」になってしまってます。)

TD(タッチダウン)については特に問題はないと思っています。

で、ここからがOD/TDの本題なのですが、このキーワードの問題は
単純にわかりにくいということです。
プレイヤーは「ほとんど同じ機能なのに用語が違う」ことによって混乱します。プレイヤーは「違う単語なら違う機能である」と考えやすいので、混乱してしまうわけです。
どうしてこういった「ほとんど同じ機能なのに用語が違う」ということになったかというのは、あくまで推測ですが、おそらくゲームバランス上の都合だと思います。
主にアプレンティスというルーラー(最初に選ぶカードのこと、mtgの統率者みたいなもの)がOD、ナイトがTD能力を使うことになるんですが
・開発当初は「フィールドに出たとき」で統一
・ナイトとアプレンティスの両方で使えるとゲームバランス上の問題が発生する
・ナイトならTDだけ、アプレンティスならODだけ使えるようにしてバランス上の問題を減らした
という経過だと思うんですよね
繰り返しですが、あくまで推測ですので、この点についての指摘はこれぐらいとして、もう一つの問題が「OD、TDというキーワードから機能が連想しづらい」という点があります。
オーバードライブ/タッチダウンというキーワードは「場に出たとき」という機能と結び付けづらいキーワードで、一度聴いたら覚えるというようなものではありません(しかもどっちがどっちかこんがらがっちゃう)。この点は無視できない点です。
例えば、ハースストーンであれば「雄たけび」、シャドウバースなら「ファンファーレ」、遊戯王やデュエマなどでは「フィールドに出たとき」といったテキストで表現しています。
このようにフレイバーを活用することでプレイヤーが理解する上でのハードルがガクッと下がるわけです。

アプレンティス

画像12

このカード、ゲームバランス上の問題も指摘されていますが、ルール上の問題は「手札が存在しない」というテキストです。
カードゲームにおいて特定の領域が一方のプレイヤーにだけ存在しないというのは非常に大きな問題を秘めています。
実際に、カードのルールを見てみると

画像13

と、あります。これ、最初に挙げた「カードの効果を参照するのはルール上の問題を引き起こしやすい」という点に類似しています。今後すべての手札に関係するカードを作るたびにアプレンティスを念頭に置くのは非常に負担が大きいと思います。
ですから、もっとルール上の問題が起こりにくいテキストにすべきだったと思います。
私ならこのように実装します
・ターン開始時も含めて君はカードを引くことができない
・君はカードを手札からプレイできない
・ターン終了時に君の手札をすべて捨てる
これなら、ほとんどルール上の問題を引き起こさずに実装できますね。

ライフ

最後はゲームのライフシステムについてです。
MTGから始まり、様々なカードゲームが作られてきましたが、勝利条件であるライフをどのように取り扱うかという点で試行錯誤が繰り返されてきました。
その中で到達した結論は「ライフポイントはカード実体で表現する」というものです。
これは先ほどのドライブゾーンで述べた「プレイヤーは見えない領域を取り扱うのが難しい」という点にもつながります。
ライフポイントというのも「見えない」ものなのです。
ですから、MTGや遊戯王ではライフを管理するためにメモ帳がいりますし、ことあるごとにお互いのライフが間違っていないかどうかを確認する必要があるのです。
この問題を解決したのが「ライフをカード実体で表現する」という技法です。
例えばデュエルマスターズのシールドが代表的なものでしょう。
ゲートルーラーでも同様にライフポイントがカードで表現されている・・・ように思えますが、実際に表現しているのはダメージです。
これは、プレイヤーがライフを把握するために「ダメージゾーンのカードの枚数を数えてライフからその値を引く」という作業が要求されることになります。
このたった1回の引き算の手間がプレイヤーにとっては面倒な手間なのです。
ですから、他のカードゲームのように、ライフ分だけカードを積んでいく方式にしたほうがよかったかなと思います(その場合はcntカードの機能も修正したりする必要がありますが・・・)
このライフの表現方法にはそのほかにも問題があって、例えば

画像14

こんなカードがあるんですけど、ダメージを受けたらデッキトップをダメージゾーンに置くというルールのせいで、この能力が「手札に来るカードを制御する」カードではなくて「ダメージゾーンに行くカードを制御する」カードにしかなってないんですよね。で、ダメージゾーンに行くカードに関しては「CNTか否か」というのが最大の関心なので、プレイヤーにとって「ゲーム中に悩む」カードでなくなってしまっているのが残念なところです。


以上、カードリストを眺めて思ったことでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?