ミキプルーン

小学生の時だったと思うが母親が更年期障害になってあらゆる体調が悪くなってしまい、病院、食事、生活習慣の改善などの果てに行きついた先がミキプルーンだったことがある。
入手方法は忘れたがある日母親が大量のミキプルーンを購入してきて、あらゆるものにミキプルーンを投入しだしたのである。そもそも食い方の分からないミキプルーンであったので入れられる余地があれば食卓をガンガン侵食。例えばコーヒーの中には砂糖の代わりにミキプルーンを。ヨーグルトにもミキプルーン。朝食のトーストなどは格好の餌食でパンの上にはミキプルーンがべっちょりである。それ以外にもあちこちにミキプルーンを塗りたくっていた気がするがコーヒーとトーストの印象が強すぎてそれ以外のミキプルーンの食い方の記憶がない。
最初は母親だけが一人でコーネンキ、コーネンキとミキプルーンを摂取していたからよかったのだが、次第に更年してもいないぼくら子供らに対しても体にいいから食えと半ば強制的にミキプルーン付きのトーストを食わせるようになるといよいよミキプルーンへの憎しみが増してきたというもの。ミキプルーン二世問題である。買いすぎて余ったから食わせてえんじゃねえのかという疑惑もあるほど未開封のミキプルーンは自宅に大量に余っていた。
それもそのはず、はっきりと言っちゃって申し訳ないがミキプルーンときたら全く美味くないのである。トーストやコーヒーとの相性がバツグンに悪かった可能性もあるが、いいや、あれは食べた感じ単独で相当マズい。
母親が体調を崩したきっかけで伝来してきたことも相まってなんというか薬を飲まされている感じしかしなかった。その前年にシロアリ駆除の詐欺に遭っていたりと当時ガバガバだった我が家なので、母親の狂ったようなミキプルーン信仰にはまたこれ怪しい健康食品ではないのかと子供ながらに思ったものである。ソースは味。なんせ激マズだったから。あんなものがシラフの消費者に大量に売れるはずがないのである。
そんなミキプルーン・べっちょりトーストを食わせられる生活がしばらく続いたが母親の更年期障害が実際にミキマジックで緩和されたのか、それともミキプルーンの不良在庫がなくなったのか、もしや塗料として家の外壁に塗ったのか、ある日を境に食卓にミキプルーンが出てくることはなくなった。母親はマインドコントロールが説かれたようにミキプルーンの話をしなくなった。
わずか1か月だけ我が家を支配したミキプルーンの事、時々こうして思い出す。

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