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素敵な人に出会えたよって話

こんな寒いのに早朝から人身事故で詰んでる。早くしないと一限間に合わないのに。てかあいつ今日出席取るって言ってたよな?マジで最悪なんだけど。までも思い出して良かった。しかしなんで今日なのかなぁ…
田舎のそこそこのターミナル駅は大勢の人でごった返していて人臭さに息が詰まる。慣れた手つきでスマホを開き、いつものSNSに一通り目を通し終え、早速手持ち無沙汰な時間が流れる。隣のオジサン臭い。勘弁してよ本当。
あー違う違う、出席カード取っといてって学科の子にLINEすんだった。
つーかしんだ人、なんで今日いったんだろうな。タイミングと理由はもう誰にもわからないとして、やっぱり大勢の人に迷惑っていうか人生最大の注目をされて最期を迎えたかったのかな。
生きてきて深刻に死にたくなったことがない私は小学生からスポーツと学力共に平均値。今はそこそこの大学行ってて学部の友だちとサークルは割と仲良いし、バイトもまぁ実家の最寄りのボロ居酒屋だけど店長以外みんな好きだし、終わったらお酒飲めるし、深夜回るけど体力あるから全然行けるし。
変わり映えのない日常に飽きたから金髪にでもするかってツイートして、最近髪、金髪にしてみたんだけど。お金ないのに。周りの目はまるで変わんないし、可愛い子は金払わなくても奢りだけで生きていけるってあれは本当なのか?同じ東京に住んでてそんなに世界違うことあるのか?今までの人生別に負け続けてはないけど特別勝ってもない、平凡な人生。狂うほどの恋愛とはたぶん生涯無縁だし、なんかおもしろいことないかなー。とりあえず今日ゼミあるからその後いつもの奴らと麻雀か、、いや違うわ、今日16時から教習じゃん、、ああ、だるいなぁ。しかも仮免かぁ。そういやこのあいだ彼氏から仮免のテスト中に教習の講師にナンパされた女友達の話されたけど、あれ聞いてる時間まじで何だったんだすぎて思い出すたびに吐きそう。その後その子のインスタ見せてきたりして、まあ可愛いからわかるけどなとか言い出して一人で盛り上がってたな。私のこと好きすぎて訳のわからない話題を出してきたとしか思えない。ちょっとだけ頭のおかしい彼、大丈夫か?今は元気にしてるか?
そんなこんなで仮免終了。落ちるわけがなく特段事件も起こらず、無の心でバイトへ。店内、いつもと若干違う雰囲気。「準備中」の札を確認していつも通り裏口から入る。やけに騒がしい。聞くと1時間後に新人スタッフの初出勤らしい。みんなソワソワしてる。人手不足だからありがたい、と人前ではカッコつけるけど内心みんなと一緒にソワソワ。できれば同年代かめっちゃ歳離れてると接しやすいな〜とか期待しつつ店長にそれとなく年齢を聞いてみるとなんと私の一個上とのこと。先輩だけど後輩って、一番難しいやつ。まあいいか、何にせよ今日は初対面なんだからコミュニケーション全開で行かないとか。しんどいけどやるしかない。
18時、店が賑わい始めた頃にその人は現れた。見た目、少しキツそうな感じ。新しい学校のリーダーズのパーマの子みたいな感じの女の子。コミュ力フル回転させてタイミング見計らってたけど、結局忙しすぎてあんまり話せず。今日に限って雑談する暇がなかったから少し残念、用意周到にしてる時に限っていつもこうだよな、、と思ってたところに4つ上の先輩が私のところに来た。なんと帰りコンビニで肉まん奢る約束してくれた。この前シフト代わってあげたお礼だって。よって締め作業捗りまくり。まずシンプルに肉まんが嬉しいし。スイーツもつけようかな。
バイト終わり、私と先輩と新人の子と3人で駅まで歩く。両手に肉まんとバスチーで幸せな私。新人ちゃん、名前は水橋さん。年下だしタメ口で良いですって言ったらあっさりおっけーって言ってくれた。既にめちゃくちゃ話しやすい。ずっとハキハキ喋るしよく笑うし、声が通る(羨ましい)し、とにかくノリがいい。一個上ということも忘れて3人でたくさん話をした。初メンツでのコンビニなのにちゃんと肉まんとチキン奢ってもらってた。私にはできない。いいなあ。話したことは、大学のこと、部活のこと、出身地とかいろいろ。水橋さんは田舎の出身で大学からこっちに出てきたらしい。隣駅でバイトしてたけど閉店しちゃったからこっちの居酒屋に応募したんだって。一人暮らしいいなあ。実家太いのかな。
その後も何回かシフトかぶって一緒に働いて、帰りは駅までの10分くらいの道のりを一緒に帰る日々が続いた。
今思い返すと何をきっかけに仲良くなったかは正直覚えてない。けど、友だちは狭く深くでいい、サークルみたいにたくさんの人と話すのが苦手な私は、昔からどうがんばっても大勢に明るく楽しくは振る舞えなくて、でも絶対にこの人と仲良くなりたいって思ったら持ってるコミュ力を総動員させて猛アタックする、それが常だった。
だから水橋さんと仲良くなりたいって思った、そのスイッチが入った瞬間から、他の誰と接する時よりもコミュ力を全開にしていて、そもそも苦手な「先輩」である水橋さんともご飯に行けるようになったんだと思う。
中学時代、部活の先輩は怖い存在(あの頃は怖い演技で上下関係を教えてくれて感謝しかない)という認識を刷り込ませられ、その反動からか高校の先輩は優しすぎる女神(まじで全員大好きだった)=お友だち感覚なんて滅相もない、っていう感じだったからどちらもプライベートで遊ぶまでは発展せずだった。年上とは常に一歩離れている存在で、ずっとそう思っていたからこそ水橋さんがフランクに話してくれるのが嬉しくて、バイトに行くのが楽しくなっていった。
2人ともハタチ超えていたからバイトの打ち上げ以外にも2人で飲み行ったりもした。私と違って水橋さんは大学が忙しく、部活でやってるフィギュアスケートの練習もほぼ毎日あるみたいで、そんなに頻繁にはシフトに入ってなかった。だけど休日に別の店舗に飲みに行ったり、カラオケで飲みなしでオールしたり、もうそれはそれは本当にいろんな遊びをした。カラオケで、狂ったサークルで強制的に覚えさせられるような飲み歌を水橋さんは一切知らなくて、水橋さんほどノリの良い人がさくらんぼ知らないのか!とか思って一人で感動した。そしてそんなくだらない時間に一瞬でも人生を費やしてこなかった水橋さんを心から尊敬して羨望した。化粧が上手でお洒落で、渋谷とか新宿とかキラキラの一等地にいそうな見た目なのに、長いこと付き合ってる彼氏がいたりして、それもギャップというか、私の中で素敵だなと思えるところだった。なんせ一年毎に彼氏が変わるような私だったから、自分にない恋愛観に興味深々で、水橋さんが彼氏と別れたときあけすけにいろいろ聞いちゃってたと思う。あの時の私は本当に子どもすぎた。
家にもよく遊びに行った。そのまま泊まることがほとんどだった。コンタクトのカラをいつも捨ててよく怒られた。夜ご飯は近くのスーパーで買い出しして、それも女子会っぽい手の込んだ料理を作ろうとかではなく、ただ缶チューハイと漬物の惣菜とかを買って、この大根うま!とか言って、深夜まで音楽流してずっと歌ってた。共通点はあんまりなかったけど昔聴いてた曲がたまたま同じで、合唱曲とかも大声で歌ってた。隣の人、ごめんなさい。
っていう楽しすぎる日々が始まって、水橋さんと親しくなってから2年くらいが経った。今でも思うけど、幼少期に出会えなかったことだけが本当に悔やまれる。恋人の過去に自分がいないのが辛いって考える人の気持ち一切解らなかったけど、心から尊敬できる先輩に出会えた今、その気持ちめちゃくちゃわかります。あ、注釈入れると、私は恋愛対象はストレートなので水橋さんに対しては全くそういう感情を持っておりませんので。
恋愛的に好きな人ではないけど、こんなに一緒にいて楽しくて話も尽きない人と、なんでもっと早くから!の気持ちはある。とてもある。取り返しのつかない過去。抗えない時間の概念。でもその過去も、今の私や水橋さんを作ってると思ったらなにも悔しがることはないんだな、といつもの都合いい私理論に戻る。今日も病み予定無し。
水橋さんと出会ってから友だちという存在がいかに大きいかを知った。私は悩みもあんまりなく、辛いこととかしんどいことをあんまり深く捉えないから、つねにぼーっと生きてると思われるけど(おそらく本当にそう)こんなに人間味あって、悩んで、感情を表して、言葉にする人を私はこれまで知らなかった。今更人格は変えられないけど、水橋さんみたいな人間臭い人を知ってから、気付かされることが本当に多かった。これからもずっと関わっていきたい人。そう思える人にこの歳になってから出会える人生ってやっぱりいいな。
来週の部活の大会 がんばれ!

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