知らないよーだ!

早すぎる桜開花宣言に置き去りにされてしまった。季節の変わり目、抗えない巨大な力の移ろいは無力さの鈍器でぼくを殴る。鈍痛の最中、知らない感情に支配されていた。

また春が来た。今年も春風は冷たい。知らない感情は精査される間もなく桜と共に吹き飛ばされていく。長い冬に凍てついた身体を溶かしてくれるほど春風は熱を帯びていない。

帰りたい、と思う。どこへ?見当もつかない。
珈琲を淹れる、日差しを浴びる、掃除機をかける。そうして時間を塗り潰す。訪れた事のない土地への思慕を拠り所にする。暮らしから目を背けないようにする。ふらつきながらも明日を築いていく。

帰る場所がない。もう作るしかない。あの頃みたいに無力じゃない。生活は形而上にない。ないことばかりだ。

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