赤ちゃんとすかし

「すかし」

お笑いの技術。

ボケを重ねていき、お客さんがこのフリには、このボケがくると思わせて、あえて、ボケないことでお客さんの気持ちを裏切り笑わせる手法。

あまり多くやりすぎたり、出だしから使うと、お笑い界では良くないとされている。

なぜ多様してはいけないかは謎である。



今日、電車で帰っていた。

電車は比較的空いていた。
私の座席に腰を下ろした。

隣は、1歳か2歳くらい赤ちゃんが座り、ボタンのおもちゃで遊んでいた。

その隣には、お母さんがその赤ちゃんの遊び相手になってあげていた。

赤ちゃんはまだ言葉を喋れないようである。

何かにつけてこちらを見てくる。

私も、赤ちゃんを見る。

赤ちゃんは笑う。

どうやら赤ちゃんに好かれたようだ。

私の隣でボタンのおもちゃをして遊んでいる。

シリコン性だが4つボタンがある

赤ちゃんはそのボタンを順に押していく、全部押し終わるとこちらを見てくる。

どうしていいか私はわからず、
困った挙句、
私は小刻みに揺れるというよくわからない行動をしてしまった。

赤ちゃんはおもしろかったのか声を出さずに笑う。

赤ちゃんはシリコン性のボタンをひっくり返し、また順にボタンを押していく。

4つボタンを押し終わると、赤ちゃんはこちらを見てくる。

私は、小刻みに揺れる。

赤ちゃんは笑う。

五回くらい連続でやってきた。

おそらくだが、赤ちゃんにとって生まれて初めての「のり」なのだろう。
ずっと続けてくる。そして、ずっと笑う。

お母さんは、私たちの「ノリ」に気づかず、ずっと赤ちゃんのボタンを押すと言う行動を見て、「よく押せたね」と赤ちゃんを褒めている。

ただ、私と赤ちゃん考えは同じだったと思う。

お母さんが褒める、誉めないの問題ではなく。

「ノリ」がただ、したいだけなのだ。

10回目くらいで私も飽きてきたので、「すかし」てやろうと思った。

赤ちゃんがボタンを押し切っても揺れないでやろう。そう心に決めた。

赤ちゃんがボタンを押す。そして、私を見る。

しかし、私は、小刻みに揺れなかった。

赤ちゃんはそれを見て、衝撃を受けたのか、泣き出しそうだった。

私は泣き出しそうな赤ちゃんを見て、まずいと思い、少し多めに揺れてあげた。

赤ちゃんは笑ってくれた。

間一髪泣かなかったが、あのまま揺れなかったら泣いていただろう。

赤ちゃんですら、すかされて泣いてしまいそうになるのだ。

芸人ですかしすぎるのは良くないと聞くがその答えは謎だったが、

赤ちゃんですら「すかし」を嫌うのだ。

人間のDNAには『すかし』を嫌うDNAが入っているのかもしれない。


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