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落ち着かない聖夜【日曜礼拝】


《はじめに》

華陽教会の日曜礼拝のメッセージ部分のみをUPしています。購入しなくても全文読めます。

《聖 書》 イザヤ書7:10〜14、ルカによる福音書2:8〜15

日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、聖書箇所のみ記載しています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。

《メッセージ》

家族が家に帰ってこない、あるいは、自分が家に帰れない……そういう状況で、今日を迎えた人がいます。突然の入院、予想外の家出、仕事上のトラブル、身内の事故……国や地域によっては、戦争に、災害に、事件に巻き込まれ、落ち着いて寝泊まりできない中、今晩、過ごさなければならない人もいます。
 
クリスマスなのに、落ち着いて家に居られない。安心して心穏やかに過ごせない。他の人が、ワクワクしながら家に集まっているときに、自分はそれどころじゃなくて、余計に気が滅入ってしまう。余計に虚しくなってしまう……静かに、穏やかに、今日の夜を過ごしたいのに。
 
2000年前、同じことを考えている人がいました。その日、彼らは自分の家で、過ごすことができませんでした。いきなり移動を命じられ、宿屋は既に満室で、泊まれるところはありません。家畜小屋、あるいは物置小屋で、一晩過ごさなければなりませんでした。それが、救い主イエス・キリストを産んだ、母マリアと夫ヨセフです。
 
妊娠中に、住民登録のため故郷ベツレヘムへ帰らされ、身重なのに、泊めてくれる親戚はなく、部屋を譲ってくれるお客もいませんでした。もしかしたら、結婚前、婚約期間中に妊娠したことで、故郷の親戚から、白い目で見られたのかもしれません。マリアは家の外で、衛生的とは言えない小屋で、救い主の赤ちゃんを産みました。
 
この日の夜、家で過ごせなかったのは、マリアとヨセフだけではありません。同じとき羊飼いたちも、夜通し羊の番をするため、家に帰れませんでした。屋外で野宿していました。もしかしたら、マリアとヨセフのように、宿屋に泊まれなかった人たちを、家畜小屋で泊まらせるため、多くの羊が、小屋から出されていたのかもしれません。
 
外にいる羊を、狼や盗人から守るため、見張らなければならなくなった羊飼いは、何事もなく夜が明けることを願ったでしょう。しかし、落ち着いて夜を過ごすことは叶いません。突然、まばゆい光に照らされて、明らかに「人でないもの」が近づいてきます。彼らは恐れ慄いて、叫んだり、逃げ回ったりしたでしょう。
 
しかし、このとき近づいてきた存在こそ、救い主の誕生を告げる天使でした。天使は、「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる」と語り、ベッドではなく、飼い葉桶に、救い主が寝かされていると知らせます。羊飼いたちは、自分たちと同様、家に居られない、外で過ごしている人が、救い主の家族となったことを知りました。
 
さらに同じ夜、救い主を訪ねて、旅を続ける人がいました。それは、遠い東の国からやってきた、占星術の学者たちです。彼らは、新しい星によって、ユダヤ人の王が生まれたことを知りましたが、その子がどこで生まれたのか、どこへ行ったら会えるのか、何も知りませんでした。
 
エルサレムで、色んな人に尋ねながら、毎日、泊まるところに苦労しながら、赤ん坊を探していました。エルサレムの住民たちは、かつて、自分たちの国を滅ぼした、東の方から使者が送られてきたのを知って、不安を抱きます。おそらく、救い主が見つかるまで、学者たちを泊めてくれる家は、なかなか見つからなかったでしょう。
 
そう、救い主が生まれた夜、落ち着いて、自分の家で過ごせた人は、聖書の中に出てきません。むしろ、家から追い出され、泊まるところが見つからず、移動しながら過ごしていた人たちが、救い主を迎え入れ、拝みに行きます。最初は恐れ慄いて、あるいは周りに不安がられ、心穏やかに過ごせなかった人たちが、救い主のもとに集められます。
 
「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」……追い出されたあなたのもとに、家に居られないあなたのところに、救い主はお生まれになった。怖がっているあなたに向かって、不安がられているあなたに対して、救い主の誕生が告げ知らされた。
 
爆撃で家を失った人、災害で帰れなくなった人、身内から離れられた人、家族と引き離された人……今日、救い主がお生まれになったと聞いて、すぐには喜べない人に、それどころではない人に、神様は、「インマヌエル」(共にいる主)と出会わせました。それが、恐れている者を呼び集め、不安がられる者から献げ物を受け取ったイエス様です。
 
もし、教会に居ても、心ここにあらずの状態で、これからどうすればいいか、今夜どう過ごしたらいいか、分からなくなっている人は、安心してください。あなたの心が、ここから離れたところにあっても、今夜、救い主と共に過ごすことは変わりません。あなたがいるところに、イエス様がおられ、イエス様がいるところに、あなたが招かれます。
 
もし、クリスマスを迎えても、心が騒いでいて、落ち着くことができなくて、祈りが、願いが、叶わないことを恐れている人は、安心してください。マリアも、ヨセフも、羊飼いも、エルサレムの住民も、あの日、みんなが恐れました。みんな、落ち着いてその日を迎えられず、不安になったり、戸惑ったりしていました。
 
神様が、みんなの待ち望む救い主を遣わしたのは、そんな世界のただ中です。町に入っただけで、みんなを不安にさせた学者たちや、客のために、野宿を強いられた羊飼いのように、落ち着かない夜を過ごしていることは、救いが離れていくしるしではありません。むしろ、落ち着けない人たちのもとに、神様は、天使を、星を、遣わして導いたんです。
 
「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ」「あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう」……怖がって、疑って、期待できない人たちに対し、神様が告げた言葉は、今日まで生きています。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」「神は我々と共におられる」
 
その言葉は真実です。どうか今、ここに集まった人たちに、外でさまよう人たちに、祈りが届かないことを、願いが叶わないことを恐れている人たちに、主の栄光が照らされて救い主との出会いが導かれますように。今夜、天使の言葉が、星の光が、あなたを導いてくれますように。アーメン。

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柳本伸良@物書き牧師のアカウントです。聖書やキリスト教に興味のある人がサラッと読める記事を心掛けています。サポート以外にもフォローなどお気持ちのままによろしくお願いします。質問・お問い合わせはプロフィール記載のマシュマロ、質問箱、Twitter DM で受け付けています。