29歳 8ヶ月 <2/4>エゴイズムの組織性

『ホテル・ルワンダ』を見た。
つい10年前、ルワンダで起こったジェノサイドが描かれている。歴史というのは、人間に何を学ばせているのだろうか。
と観客に問題を提起している。
個人が悪いのではない。個人を隠す組織が悪い。脆弱な個は組織に飲み込まれて悪の片棒を担いでしまう。
指摘しない。なぜならその大義が甘くて美味しそうだからだ。
だから大きな矛盾や差別や偏見などは自分に降りかからなければ黙って見過ごす。それが大人のたしなみというもので、大人の社交。ただし、同じような経験をあの小学校のクラスでも見た覚えがある。それは子供のたしなみ。子供の社交。
そういったことは忘れてしまう。振り返っていられないのだ。大人は忙しいから。
人を殺すのと同じくらい酷いことをしていても、別に構わない。そこには甘い大義があるから。
形なんかではない。
「大事なものは目に見えない」という言葉を信じられないのは諦観でしかなく、それは人に対する怠惰だ。そこにどんな理由があろうとも、そうやって諦めるしかない周りがあったとしても、それを言わせるために作られた世界観はやっぱり怠惰だと思う。
無情やはかなさ。
それを言うのは簡単だし、格好いいけれど、僕は下らない悲壮感としか思えない。
僕はやっぱり常に弁証法的に進んでいきたいんだ。
この映画を観て改めてそう思う。
ヒトラーがその演説法で繰り返し同じ言葉を言うことについて「民衆は頭が悪いから何度も同じ事を言わなければならない」と言っていた。芸術もそれと同じなのだろうか。
それをするしか能力がない人も必要だろうから、それはその人に任せようと思う。
映画の終盤の「Hello !」が僕の胸をつまらせた。
安堵する「H ello 」。その局地に出会えた「H ello 」。普通の会話が宝石よりも眩しく光る。
それは決して幸福ではない。

おしまい


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