もう人生の折り返しは過ぎたんだよな

『なーんにも1番になった事がない』

僕が呟いた。そこまでの話の流れは覚えていない。

すると『でもさ、大体の人間はそんなもんだよ』と叔父さんが言った。

小学校の卒業間際だったと思う。すこし思い出した。中学になったら何部に入るんだ?みたいな流れだった気がする。
得意なスポーツは何か無いのか?その部活に入ればいいじゃないか?みたいな

その叔父さんは続けた『得意なスポーツが無いなら楽しいと思えるだけでもいいぞ』と


何故かこの会話は忘れずに残っている。


叔父さんは母親の一番下の弟。五人兄弟の末っ子でこの時点で唯一独身の叔父さんだった。定期的に家に顔を出しては母にお金を借りていた。

親戚の集まりがあると『いつ結婚相手を連れてくるんだ?』とか、もっと酷い言われ方とかコンプラ以前時代を象徴するような会話を聞いてたせいもあってか子供心にも、うだつの上がらない大人だと感じていた。

職も転々としていた気がする。

『じゃあ野球かな?』と僕が言うと

『いや野球部は辞めとけ、あそこは腕立て伏せと走ってばっかだぞ』とか訳のわからん事を言ってた。

ちなみにその叔父さんは『これから高校生とかになっていったらラジオを聞くようになるぞ。男はラジオ。女は手芸だ』と言ったのも覚えている。どんな偏見だよ。絶対うだつは上がって無かったと思う。
ま、後にラジオを聞くんだけど…


そんな叔父さんでも、大人に1番になる必要なんて無いんだと言われてホッとなった感覚はあった。

それから10年?15年?たったある日、叔父さんが独り暮らしのアパートで亡くなっているとの知らせが入った。

詳しくは知らない。母が言いたがらなかった。持病はあった様だが、近所の方から腐敗臭からの通報での発見との事で、まあ悲惨な状況だったのだろう。

少しは大人になってた僕も『うーん、、独り身で一生過ごすと悲しいけど、こうなる可能性もあるよな。。』と何か少し他人事のように(脳が直視から逃げていたのかも)俯瞰で想っていた。

いつもレディボーデンのアイスを手に持って家を訪ねてきた姿を思い出した。


あれからもっと大人になった僕は今だに何の1番にもなった事がないが、このまま人生終わるのだろうか。せめて今のまま幸せに真っ当したいものである。

でも心のどこかで、ちょっと何か頑張ってみようかとも思うので、葛藤が青春ならまだ青春なのかも知れない。

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