「MONEYMAKER」企画書

キャッチコピー:負けていると思っても勝っている、勝っていると思っていたら勝っている、それがポーカー。

あらすじ:20XX年大阪。
大阪にカジノができたことで世界のギャンブラーがこぞって大阪に集まり、日々切った張ったの勝負をしていた。
ちっぽけな仕事しか回ってこない地下アイドルをしていた七々子は、ある日カジノでバイトをしていた。
そこでは大きな賞金のかかった世界的なポーカーの大会が行われていたが、観客席でプレイヤーの持っている手札を次々言い当てる少年、一慶(いっけい)に出会う。一慶は偉大なポーカープレイヤーを祖父に持つ小学生で、小さい頃から英才教育を受けていた。
別の日に一慶に出会った七々子は、自分にポーカーを教えてほしいと一慶に懇願する。最初は断っていた一慶であったが、七々子の熱量に押され、承諾する。

第1話のストーリー:アイドルを目指している七々子はカジノでのバイトに入る。そこではポーカーの世界的な大会が開催されていた。七々子はポーカーというものを目の当たりにして興味を持つ。
そしてプレイヤーの手札を次々と言い当てる少年、一慶に出会う。
帰宅後、ポーカーの世界で最も格式の高い大会であるワールドシリーズオブポーカー(通称WSOP)のメインイベントの優勝賞金は15億円を超えていることと、日本人そして女性の優勝者がいないことを知り、WSOPで優勝し自分の夢を叶えることを思いつく。
次の日に多額の借金を背負ってカジノに乗り込む。
隣に座ったやさしいおじさんにポーカーの中で最も競技人口が多いテキサスホールデムというゲームのやり方を教えてもらう。順調に資金を増やしていたが最終的に資金のほとんどを失ってしまいカジノを後にする。実はそのおじさんはカモを見つけては高いテーブルに案内して仲間とともにお金を巻き上げるグループの一人だった。
帰り道で一慶に再度出会う。そして一慶が世界的なポーカープレイヤーを祖父に持ち幼い頃からカジノについて回っていたことやポーカーの英才教育を受けていたことを知る。七々子は一慶にポーカーの指導をお願いし、最初は断っていた一慶であったが、七々子の強い気持ちに押され、七々子への指導を承諾する。
一慶とのトレーニングを終えて、借金の返済日に再びカジノに乗り込む。一慶から教わったルールは一つ、「自分のイメージ像を上手く使うこと」であった。
例えば七々子のような女性の場合、強い手札(ハンド)でしか勝負せず相手からプレッシャーを掛けられるとすぐに降りる上に、ブラフをする頻度も少なく、正直なプレイが多い傾向が強い。
七々子はか弱い女性への変装を施して、そのイメージ像を利用する作戦を取った。七々子が座ったテーブルにはあのおじさんと仲間が数人座っていた。
初対面のふりをした七々子は自分のイメージ像を利用することで着々とチップを増やしていく。そして大きな勝負が訪れる。ベッド額が大きくなった状況でおじさんからさらに大きなベッドが入る。そこで七々子は変装を解き、正体を明かすとともに自分の資産を全て賭けてしまうオールインを選択する。
疑心暗鬼になるおじさんであったが最終的にコールを選択し、勝負を受けることを選んだ。結果は七々子の勝利。七々子は大勝して終えた。

第2話以降のストーリー:第2話以降も、しばらくは一慶が先生、七々子が弟子として、1話毎に1つのテーマを学び、カジノで実践するという展開が続く。
ポーカーの中でも特に競技人口が多いテキサスホールデムに焦点を当てて、初心者が知っておくべきベースとなる知識を掟のような形で一慶がテーマ設定することで紹介していく。

テーマの具体例をいくつか挙げていくと、

・「ポーカーは座学9割、実践1割」
ポーカーは特に確率が重要視されるゲームである。テキサスホールデムの場合、自分の手札2枚の勝率を正確に把握できているかが肝である。例えば、AAとKKが戦った場合、それぞれの勝率は80%対20%であり、いくつかの組み合わせとその確率を記憶しておく必要がある。そのため、特に最初のうちは座学に時間を費やす必要がある。
また自分のプレイが正しかったかどうか、シチュエーションごとにどういったアクションが最適であったかどうか、といった期待値の計算を、ゲーム理論をもとに行えるアプリが存在する。プロポーカープレイヤーは座学において様々なケースの検証を繰り返して実践に活かしているが、多くの初心者にとってファーストステップが重い作業であり、説明が必要なテーマである。

・「キャッシュゲームとトーナメントの違い」
ポーカーはテキサスホールデムやオマハといったゲームのルールの違いとは別に、キャッシュゲームとトーナメントというお金の賭け方の違いで分けられる。
キャッシュゲームはそれぞれのプレイヤーが自分がテーブルに置きたい資金量をルール内で決めることができて、プレイヤーのタイミングでその資金を追加したりすることもできるし、ゲームを抜けることができる。
トーナメントは参加費が決められていて、大まかなルールとしては全プレイヤーが同じ参加費を払って同じチップ量を渡される。つまりチップの総量は参加人数によって決められていて、最終的に一人の優勝者がそのチップを全て獲得するまでプレイヤー同士がのチップの取り合いをするゲームである。また最低ベット額が徐々に上昇していく点もキャッシュゲームとは異なる。
つまりキャッシュゲームとトーナメントは、行われるゲームのルールが同じだとしても、その性質は大きく異なる。特にトーナメントにおいて終盤に自分のチップ量(スタック)が少なくなった状況は、キャッシュゲームでは経験しにくいためプレイのやり方も大きく異なる。
キャッシュゲームで経験を積み、満を持してトーナメントに参加するというのが一般的な流れである。そのため本編ストーリーとしても、まずはキャッシュゲームを前提とした知識の説明に重点を置くべきだ。

・「ポーカーはハンドの強さと実際の儲けは直結しない」
自分のハンド、相手のハンドの強弱と、ショーダウンするしないをパターン別に分けると、
① 自分のハンドが相手より強く、ショーダウンした
② 自分のハンドが相手より弱く、ショーダウンした
③ 自分のハンドが相手より強く、ショーダウンする前に相手が降りた
④ 自分のハンドが相手より弱く、ショーダウンする前に相手が降りた
となり、このうちポーカーでテーブルに集められたチップを獲得する方法は、①、③、④である。
このとき、例えば③のとき、自分のハンドが強すぎることで相手が全く賭けに乗ってこなかったパターンが考えられる。逆に④のときは、自分のハンドは弱いのに相手が勝手に過大視してくれて勝負を降りてくれたパターンが考えられる。
どちらも、ハンドの強さと直結しない結果となる。
そして、自分の強いハンドを相手に過小評価させるのが上手いプレイヤー、逆に自分の弱いハンドを相手に過大評価させるのが上手いプレイヤーなど、プレイヤーにとって得手不得手が存在する。これは性格によるものもあるが、テーブルでの自分に対するイメージと合わせてキャラクターが出やすいものだ。

・「初心者にとってコールが一番不利」
よく初心者が取りがちな選択がコールである。
コールは相手が提示したベッド額に合わせて同じ額をベッドするというアクションであるが、降りる決断もできず、自分でリスクを増やす選択もできない初心者が陥りがちな選択がコールであるが、相手にとって弱いハンドに見えたり、テーブルで賭けられたチップの総量をコントロールする主導権が握れない、といったデメリットが存在する。
そのためコールは、実力差がある相手と対峙した場合、自分の期待値を下げる可能性が高い。しかしながら初心者はその知識がないため、最も期待値の低い選択をしてしまう。

「アクションをする順番(ポジション)の重要性」
ハンドと同じように重要なのがポジションだ。ポジションとはベットする順番を指す。ポーカーでは先にアクションをすることはメリットが少なく、他のプレイヤーがアクションした後に自分に選択肢が残っている状況の方が有利である。
ポジションの位置は時計回りで回していて1ハンドごとに状況が変化する。
そしてアクション自体も時計回りに進行していくため、自分にとって左側のプレイヤーは多くの場合、自分の後にアクションすることが多い。そのため、左側に強いプレイヤーが座っていることはプレイヤーにとって非常に不利となる。

このように格言のような形で頭に定着しやすいキャッチフレーズのようなものを掲げて、ポーカーをプレイする際の思考を単純化する働きを作る。
そしてポーカーにおける知識を、大まかに七々子が習得できたタイミングで、ストーリーはキャッシュゲーム編からトーナメント編へと移っていく。

トーナメント編では、日本でのトーナメントからスタートして、アジアやヨーロッパを経験し、最終的にアメリカ本土におけるWSOPへの挑戦を描く。
またトーナメントではテキサスホールデムだけでもいくつかのゲームの種類が用意されている。
・何回負けても再エントリーができるもの
・最低ベッド額の上昇が急ですぐにチップを失ってしまうもの
・女性だけのものや2人1組で戦うもの
・1テーブルの上限が9人のものもあれば
・常に1対1で戦うもの
それぞれのトーナメントに戦略があるため、テーマには事欠かない。

なおポーカーは、自分のハンドに対してどれくらいのチップを賭けるのが最適か、といった問題を解いていくゲームである。これは投資の考え方と非常に似通っていて、株式投資のように自分のハンドがどれくらいの期待値を持っているか、どれくらいの成長が見込めるかを図るものである。(筆者の金融機関でトレーダーとしての働いてきたキャリアを大いに活かせるポイントでもあると思っている。)

さらにポーカーは、テキサスホールデムだけでなく、オマハやスタッドなど、別のゲームが沢山存在する。テキサスホールデムがオリンピックの陸上における100m走だとすると、オマハやスタッドは走り高跳びや砲丸投げのような別競技であり、これらをすべて合わせた十種競技のような競技もある。

また、それぞれのゲームにおける人間性が表現されるとともに、実際に国別でもそれぞれの文化や背景によってプレイスタイルが大きく変わるため、そういった違いはキャラクターとして反映しやすい。敵キャラの設定としては、「計算が正確で頭が切れるタイプ」「資金力が膨大で傍若無人なタイプ」「(一慶の祖父のような)経験豊富で老獪なタイプ」など多くのパターンが考えられる。


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