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ヨーテボリの施設見学

朝7時過ぎに起床。無料のコーヒーと持参していたパンでサクッと朝ごはんを済ませて、準備する。
9時のバスに乗りトラムに乗り換えとある施設へ見学に行く。

鰯雲と冷たい風が秋を思わせる。中途半端な時間ということもあり中央駅は静か。第二の都市ではあるが雑多としていない。スウェーデン自体人口が少ないので都心部でもかなり余裕のあるパーソナルスペースを保てる。ヨーテボリの立ち位置は日本で言う大阪だが、全くそうは感じない。

約束の10時ピッタリに目的の「GrundenDV」に着いた。やはりヨーテボリは工事だらけでトラムも変なルートで運行していてホテルから40分ほど掛かってしまった。

エレベーターでフロアに上がるとメールでやり取りしてくれていたカールと利用者さん達が迎え入れてくれた。
そのまま円卓でコーヒーを皆んなで飲みながら自己紹介と雑談。次々にみんなが集まってきてとてもいい雰囲気。

エントランス兼ラウンジから施設内に入るとPCが並んだフロアがあった。文字を入力したりプログラミングやデザインをするスペースで、大手IT企業のワーキングスペースさながら自由な配置で作業していた。

それぞれが自分の部屋の様に居心地の良い雰囲気を作りPC作業などしている。

ここでは音楽活動や身体表現を主軸にしている。所々に収録や編集専門の小部屋がある。

PCでの音の打ち込みで作曲したり、音声をポッドキャストで発信したり、それぞれ作品化していた。

彼は聖闘士星矢のTシャツを着て日本の文化に関して力説してくれた。

真ん中のフロアにはピアノが置かれ、その脇にソファーが沢山並べられたスペースがある。ここはリラックスルームで、寝たりPC作業をしたり自由に使っている。

彼は区切られたスタジオの一室でコミックを制作している。

原画をペンで描き、それをスキャンし、PCで着色と文字の入力をする。
施設生活の事を物語りにしたり、それを牢獄に準えてコミカルに描いている。かなり皮肉が効いていて面白く悩ましい作品だ。

楽器を使うスタジオも本格的な物があり、収録したものをSpotifyや CD化している。かなりクオリティが高い。

奥の方に創作フロアがある。創作といってもいわゆる絵画や彫刻といった本格的なものではなく、劇に使う小道具や撮影小道具を製作する場所という感じ。

実際に、着ぐるみなどの制作物が多い。それぞれが細密でコンセプチャル。

映画の美術スタジオみたいだ。

隣がグリーンバックなどのある撮影スタジオで、かなり本格的な作りだった。

その奥は3Dプリンターなどのある部屋。オリジナルキャラクターを3D造形し、ボードゲームのロールプレイングゲームを作っているらしい。

面白い形の造形を量産できるのでとても良い。そしてスウェーデンらしいボードゲーム化というのがとても相性が抜群だ。

一番奥のフロアに防音のシネマがある。本格的な椅子が10席ほどあり、予約制で鑑賞ができるらしい。この日も観ている人がいたのでチラ見だけさせてもらった。

シネマの横が会議室だ。この会議室もルンドの施設と同様利用者さん達が自由に入る事ができるオープンな場所で、とても風通しが良い。映像作品など見せてくれた。

チーフがポスターやTシャツをくれた。ヨーテボリに関しての皮肉が効いた作品が多い。

映像作品もそうだが、ヨーテボリはアンチバリアフリーかと思うほどに身体障害を持つ人にとって生活しずらい街の造りとなっている。それに関しては誰がヨーテボリに来ても感じる事だろう。
古い街並みを残す事とかそういう次元ではなく、新しく開発された場所でさえもアンチバリアフリーなのだから、たぶんこの土地がそういう事を気にしていないのだと思わざるをえない。

重度障害を持つ方のコミュニケーションツールを見せてもらった。
タブレットなので様々なコンテンツを選択して意思を伝えることができる。

さらに、とても多様な言語翻訳リストを見せてくれた。たぶん僕が知らないだけで世界的な共通言語なのだろうけど、とても興味深いリストだった。
彼は、会話の中で常に「mtv90」と打ち込んでていた。それは彼の腕に入ったタトゥーを見るとすんなり腑に落ちるワードであった。しかし、それが好きなモノなのか苦手なのか、要望なのかわからない。

入り口には、スケジュールや職員の役割などわかりやすく掲示されている。
11時を過ぎ、近くのカフェにお茶しに行こうということとなった。

行ける人皆んなで行く。近くに同じ施設のカフェがあるという。
街は工事をしまくっていて歩道が縮小されていたり、段差が多い。点字ブロックなどもない。目が見えない人は一人で歩く事は困難だ。車椅子での自走も不可能。
この工事は20年間の予定で行われている最中だという。ヨーテボリ平穏はまだ遠い。

そして到着したのは、路面に面したテナントだった。

半地下を下るとバンドが演奏中のカフェだった。
もちろん一般開放もしているカフェで、ステージがあり普段は音楽活動をここで行なっているという。

皆んな好きなタイミングで好きな楽器を演奏したり歌ったり、ソファーで寝ていたりする。
一人専門スタッフが調和を取り持つ為にギターを弾いたりドラムでリズムをキープしている。それはとてもさり気ない音で、完全に黒子の役割でプロフェッショナルだった。どんな音でも気持ちよく演奏出来る。

フォーク、ロック、ヘビーメタルまで何でもかんでも披露してくれた。とても良い空間だ。

カフェもしっかり焼き菓子やコーヒー紅茶何でもある。利用者さんもここで飲んで過ごしている。
みんなが皆んな器用に楽器を演奏したり歌を唄うことはできない。このカフェにただ寝にくる人も居るし、お話をするだけの人もいる。全てを肯定する場所であり、社会の中にある場所だ。

そしてお昼ご飯の時間となりお別れした。
10月に大阪で行われるイベントに参加するらしく、また再開できる事を祈りハグをした。

周辺を散歩する。

中央市場は平日昼間にも関わらず飲食店が多く活気があった。

工事だらけで配達系の人はかなり大変そうだ。

大聖堂は外観によらずかなり近代的で少し残念だった。

ヨーテボリはグラフィティーが少ない。その代わり街の壁面はアーティストの絵で溢れている。正に製作中の現場も幾つかあった。

ヨーテボリにはかなりの数の彫刻がある。其々にしっかりとQRコード付きのキャプションがあり、コンセプトなど詳細を知ることが出来、統括したマップも見ることが出来る。

スウェーデンは、スイスに次ぐ中立国家と言われ戦争を拒否し続けているが、第二次世界大戦時の戦争の関わり方には色々な意見があるという。そしてヨーテボリは対戦時に関係する彫刻が多い。
現在では、中立と言っておきながら兵器ビジネスを盛んに行う国でもある。

日本の古着屋の様なヴィンテージショップが何個かあり覗いてみたが、価格は日本と同じ様な感じ、質も同じだった。

中央駅裏にあるかなり大きな無料の植物園に行ってみた。大きな温室など建物は時間が遅く閉館していたが、バラ園などかなり綺麗に管理されていて、ゆっくりしている人も多かった。
ちなみに、近くにあるヨーテボリ植物園はヨーロッパで一番大きいらしい。

公園の砂場では、誰かがミニガーデンを作っていた。

ここヨーテボリは、マダニを介する病気が多く、フェスティン避けが必須だ。薬局でポピュラーな物を聞いて買った。ティーツリーのアロマに似た香りで嫌な感じの匂いではない。

夕ご飯に寿司を食べに来た。スウェーデンで一度は食べたいと思ってズルズルと残り2週間となってしまったのだが、ここヨーテボリはかのノルディックサーモンのお膝元である北海に面し、寿司レストランが多い。今がチャンスと下調べしたところ、近隣で面白い寿司屋があったので行ってみた。

「EVOLUSHI」というコンテンポラリースシを謳う面白そうなレストラン。日本人がやっているわけでは無いがアジア系の優しい雰囲気の三人が丁寧に握っていた。
握りと巻きの10貫で1,800円。やはり刺身はサーモン中心。久しぶりの酢飯、感動的な美味しさだった。
サーモンは日本よりやはり美味い気がする。唯一の違う魚種であるマグロは最悪な代物だった。その他のモノも美味しかった。

天丼ポケボウルも頼んだ。海老天と枝豆、ガリ、玉ねぎの酢漬け、メカブ、アボカド、キャベツ酢漬け。衝撃だったのが、マンゴーが敷き詰められていた事だ。
しかし味はサイコー。コンテンポラリー!味噌汁もあり、とても良かった。

サッカー場?大きなスタジアムが二つあった。
レストランからの帰り、消防車や救急車、警察車両がひっきりなしに通っていた。帰ってから調べると、自動車事故があったらしい。警察のサイトでしっかり実況していたのでわかりやすかった。

船のホテルのデッキにでると、帆船が帆をしまいながら音もなく帰港してきた。

2023,09,14

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