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若気の至り 2

ここからはピアスを開けて2週間経ったくらいに
ピアスを外して病院に行った話。

色々あって、金曜日に病院に行くことになった。
病院は8:30から受付開始。

金曜日は9:10からzoomでの授業があったので、
スマホで受けることにした。
(本当は8:30からzoomでやる別の用事が
あったがそっちはピアスのことでいっぱいいっぱいになってしまい、完全に忘れていた)

8:30に病院に着くようにするには、
8:07のバスに乗る必要があった。

こんなに朝早くにバスに乗るのは、
小中高大と徒歩通学の私にとって新鮮だった。
少しワクワクした。

バスに乗り、本を読もうとしたが集中できず
窓の外を眺めたりちょっと寝たりしていたら
20分ちょっとで市立病院に到着。

入口にいた方の指示に従いアルコール消毒をして
市立病院の中に入ると、私は衝撃を受けた。

受付前の長椅子にお年寄りの方々が
たっくさん座っていた。

「え、受付って8:30からだよね?
まだ始まってないのに中には入れるの?
どういうこと?」と思った。

今思えば、私は市立病院のような所に来るのは
初めてで勝手が全くわからなかったが、
受付時間の前から病院自体には入れて、
早い人は1・2時間前からスタンバイするのが
普通なようだ。

私はとりあえず一番奥の空いてそうな所を
必死で探して何とか座った。

受付前のスペースはスマホ使用禁止との
張り紙があったので、手持ち無沙汰になって
さっき読めなかった本を開いて読んだ。

そうして、8:30になると受付の柵が上がった。
入口にいた方々が大きな声で長椅子に座っている
方々を番号ごとに誘導していく。

みんな慣れた様子で受付を済ませ、
それぞれの場所に向かっていった。

どんどん人が呼ばれていくが私は番号のふってある
長椅子に座っていなかったので不安になり、
入口の人にどうすればいいか聞いた。

やっとのことで番号のついた長椅子に座れた。

「なるほど」と思った。

知らない場所に来るのは怖い。
アウェイ感とでも言うのだろうか。
しかも私は大病を抱えている訳でも
足腰が弱く歩けない訳でも無い。

側から見たらピンピンしている元気な若者だ。
私がここに来た理由は耳たぶにしかないのだから。

何だか私のようなものにお医者様や患者さんの
時間を割かせるのが大変申し訳なくなった。
なーにが若気の至りだよ、と再度思った。

受付等を何とか済ませて、皮膚科の部屋の前の
長椅子に座ることができた。

時刻は9:00。
zoomの授業開始時間にも間に合った。
ありがたい。

周りの人がスマホを使っていて
ここは使っていいエリアなのだと知り、
私もスマホを開いてAirPodsを耳につけて
zoomにログインし、授業を聞く。

毎回ラジオのようにただただ喋り続ける先生の
授業が、今回はとても心地よかった。

部屋の上の大きな画面に番号が表示されている。
私の番号まではあと4人くらい。

30分くらい過ぎたあたりで、私の名前が呼ばれた。

「〇〇さん、お入りください。」

ビビり倒している私は、診察室のすぐ前の椅子に
座ればいいのか、部屋に入っていいのかが
わからず診察室の前でアタフタしていた。

すると、長椅子で待っている男性が
「入っていいんですよ」と手でドアをさしてくれた。

「ありがとうございます!!」

私は診察室に入った。

お医者さんは思ったより若い男性だった。
色白で、眼鏡をかけた方。

「ピアスのキャッチが入っちゃったんだね〜」
「はい、そうなんです。すみません。」

優しそうな喋り口なので安心して色々説明して、
いざ見せたら、

「あ〜これは切って取るしか無いかなあ。
多分取れると思うけど、取った後にケロイドって
いってすごく膨らんじゃうリスクもあるけど、
それでもいい?傷が盛り上がるとかよくある?」

ケロイドについてはこれまで散々ネットで
調べて見ていたので怖さもあったが、
大丈夫な方の可能性を信じたかった。

「はい、大丈夫です。傷も普段大丈夫です。」

大丈夫言い過ぎちゃう?

「よし、じゃあやろうか」とお医者様。

え、今日やるの?こんなすぐできるの?
え、ここでやるの?と思いつつ、
まだわずかに残る名残惜しさを、
私は言葉にして聞いてしまった。

「これって穴は塞ぐ感じですかね?」
「そうだねえ。一旦は完全に塞ぐ必要があるかな」

そりゃそうだ。この期に及んで足掻くな!

「全然いいです。なんか開けたはいいけど意外と面倒でもういいかなあと思ったので。」

私は笑いながらこんなことを口走った。

「そうだよね〜みんな開けたがるけどやっぱり身体にわざわざ傷をつけてる訳だからトラブルも多いしね〜あんまりおすすめしないかなあ。」と先生。

言われるがまま横になり
言われるがままうつ伏せになって
耳に局部麻酔を打たれた。
(お医者さんがキョクマって言ってたのが
印象的だった。)

「今耳たぶの中を裏側からグリグリしてるけど
わかる〜?」

え、今もう切ったん?と思ったと同時に
顎のあたりに冷たい感覚が。
マスクを横目で見ると、真っ赤に染まっていた。

あ、もう切ったんですか!ほー!すご!

「全くわかんないです」

変に落ち着いてこう答えた。
途中先生が「あれ〜?」と言いながら探してたり
「あっちの部屋でやればよかったね」と看護師さんに言ってるのを聞いてとってもハラハラした。
取れなかったらどうしよう、と。

なーにが若気の至りだ、とまた思った。
若気の至りのせいで今私は病院でうつ伏せになって
人に耳を切らせて失くしものを探させている。
迷惑かけまくってんじゃねえか!恥ずい!
ごめんなさい!

「取れた〜」

先生は見せてくれた。
もう片耳も同様に確保。

無事に全て取ってもらい
看護師さんに新しいマスクもいただいて、
膿を止める薬を処方してもらうことになった。
至れり尽くせり。

今回だけで完結するなんて
微塵も思ってなかった私はもう本当に嬉しくて、
感謝しかなかった。

何回もお礼を言って診察室を出て
入る前に教えてくれたおじさまにもお礼をして
受付前の長椅子に戻った。

すぐにスマホを開いてzoomに入り直して
授業を聞き始めた。
裏側がテープに覆われた耳にAirPodsを入れて。

不思議な感覚。
何だか解放されたような、失ったような。
でも少し心が満たされているのがわかった。

バスの時間を調べて本数の少なさから
田舎を痛感しながら会計を待っていると、
名前を呼ばれた。

会計とはまた別なようで、
「今回の処置は保険適用外で自腹なんだけど、
結構な金額がかかってしまうけど大丈夫そう?」と。

学生だから大丈夫かしらと気を遣って
声をかけて下さったのだろうな…
本当にありがとうございます。

「大丈夫です!覚悟してました!」

莫大な感謝の気持ちから謎の威勢。

「よかったです!ではお待ちください。」

会計順が回ってくるまで何だか人の温かさに
泣きそうになりまして。

相変わらずいくら探してもいい時間のバスは
無いんですけれども。

無事に会計を終えて、お薬ももらい
12000円ちょっと。

いやーピアス開けるだけで5400円払って
さらにこの金額。
高い若気の至りだこと!!

でも不思議と後悔があんまりなく、
正月開けてなくてもいずれ開けていただろうし、
いつ開けたとしてもあの面倒くささに気づいて
そのうち塞いでいただろうと今は思えます。

まあコロナがなければ東京とかのクリニック行って
シリコンチューブ通してもらって
穴は死守していたかもしれませんが!
(ピアス開けたのも穴が欲しかった故)

何だか人の温かさとか病院の仕様とか
お医者さんのカッコよく見える感じとか
病院の皆様のスマートさとか色々含めて、
いい経験だったかなあ、と。

一回開けられたので満足ですしね!
友達との会話のネタにもできますし!

こんなことを思いながら40分くらいかけて
歩いて家まで帰ってきました。

親になんて言おう、
いや、自分だけで留めておいてもいいかな。

結局記憶とかはアウトプットしないと
忘れていってしまうと聞いたので
とりあえず書いておこうと思って書きました。

ピアス開けたいと思ってる方すみません!
カッコいいので開けるのいいと思います!
ファーストピアス安定するまで取らなくていい
状況下で開けるのをおすすめします!

でもカッコいいですよね!やっぱ!

若気の至りってこういうのなのかな〜
わからんけど耳鼻科でワクワクしてた私は
完全に若気に満ち溢れてましたね、きっと。

病院の皆様お世話になりました!

おかえりなさい!やわらか耳たぶ!

長文失礼いたしました。

若気の至り(完)

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