「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」における神獣の意義

「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」。

自由なオープンワールドとはいえ、あまり好き勝手に動き回っても目的が散漫になってしまうので、推奨されるゲーム進行はメインチャレンジとして設定されている。「4つの神獣を解放した後にラスボスを倒す」というのが本編の大きな流れだが、この4つの神獣解放がどうにも解せない。推測だが、これ開発時点もしくは企画時点では全然別の構成だったんじゃないか。

ブレスオブザワイルドでは、主人公が使える特殊アイテムが4つあるのだが、どうにもこれらのアイテムは4つの神獣と対応しているとしか思えない。

アイスメーカーは水の神獣 ヴァ・ルッタ、風の神獣はよく分からないとして、マグネキャッチは雷の神獣ヴァ・ナボリス、リモコンバクダンは火の神獣ヴァ・ルーダニア。神獣内のパズルでも対応するそれぞれのアイテムを効果的に使う必要があり、それぞれの対応するアイテムがボスの攻略のカギとなる。

なんの根拠もない推測だが、これ開発時点では、「各地の長がシーカーアイテムをリンクに授けることで神獣攻略が可能となる」という構成だったんじゃないか。長がシーカーアイテムを授け、使い方のチュートリアル的な簡単なおつかいミッションを経て、応用編を神獣突入で実践させ、神獣パズルで頭をつかわせたうえで、総決算をボス戦のカースガノン戦でおさらいする。どう考えても、この構成がゲームとしては美しい。

だが現行のものはそうなっていない。なぜかというと各神獣の攻略でシーカーアイテムをアンロックするつくりにすると、各地に散らばる120の祠がほとんど攻略不可能になる、もしくは攻略の順番が限定されるからだ。したがってゲーム開始時に4アイテムをすべて与えることで、神獣からゲームのチュートリアル要素を排して、祠の攻略順をできるかぎり不確定にすることを選んだ、という開発側の意図が見て取れる。

それでも出来る限り神獣には対応するアイテムを使わせたかったのだろう。その苦肉の調整が神獣突入パズルだが、「突入で使うアイテム」と「ボスの攻略法」がきちんと対応しているのは水のヴァ・ルッタだけというのが作り手の苦労をしのばせる。火のヴァ・ルーダニアの突入パズルも頑張ってはいるけど、リモコンバクダンよりマグネキャッチの方が印象的な面構成なのは惜しいところだ。

と、ここまで書いて気付いたが、本当はパラセールって風のヴァ・メドー攻略でアンロックされるはずのアイテムだったんじゃないか。前座のお使いミッションや風の神獣内のパズルでもパラセールづくしであり、どうもそうとしか思えない。そうなると、はじまりの台地から平原には根性で降りることになるが、パラセールがなくてもリンクには天性のクライミングの才があるので、宮崎駿の「シュナの旅」のようによじよじと断崖絶壁にへばりつきながら下界にくだる出発となる。それはそれでロマンいっぱいの画ではある。

となると、神獣攻略で余ったビタロックはガノン戦か対ガーディアン用アイテムとしてハテノ研究所あたりでアンロックされるつくりだったのかもしれない。なんの根拠もないが、その方がゲームとしては美しい。そうだったかもしれない、という片鱗が本編中のそこかしこにあるので、きっとそうだったと思うことにする。