スマブラSPを本気で続ける気を失う『構造的問題点』について
①根っこがパーティゲームとして作られてしまっているという点
結論から言うと『パーティゲームとしてのスマブラ』と『ガチ対戦ツールとしてのスマブラ』がぶつかり合ってしまっている状態が続いている。
この二つを両立させるノウハウや開発リソースがない結果、キャラクターのバランスやUIに様々な問題が出てしまっていて、エンジョイ層とガチ層どちらも嫌な思いをするようになってしまった。
スマブラは集客や収益の観点から『様々な有名ゲームキャラが戦うパーティゲーム』として作られているわけだが、長く遊ぶプレイヤーはタイマンを望んでいて、この二つがぶつかり合った結果、対戦ツールとしてもパーティゲームとしても歪なゲームとなっているわけだ。
冷静になって考えれば原作が別に存在している87キャラクターを調整なんてできるわけがないし、ある程度は大味なゲームにならざるを得ないのに、半端にゲームスピードを上げた結果初心者がついていけなくなったりと滅茶苦茶だ。
具体例としては優先ルールなどが挙げられるだろう。
これは全ての層のプレイヤーにとって酷いシステムだと思う。非難したり、誹謗中傷するのは間違っているが、批判をしたくなる気持ちはわかる。
しかし、様々なルールを限られたリソースで容認しようとした結果こうなってしまったというのなら納得は欠けらもできないにせよ原因としての理解はできる。
『ガチプレイヤー等だけに専用のシステムを組むことができなかった(開発リソースを割けなかった)』のかもしれない。
また、パーティゲームとして『盛り上がって話題になるようなキャラクター』を参戦させた結果、個性が強すぎて『対戦ツールとしてみた場合個性が強すぎてクソキャラになる』といった問題も発生してしまっている。
https://note.com/bluewoodsun/n/nb28022c060b4
ガチ部屋をやっていればわかるが、本作はキャラの個性が強すぎて知らないとゲームにならないという詰み択が余りにも多すぎる。
酷い物だと、対応択が存在し得ないようなマッチアップや技が存在している。サムスの崖ボム、ミェンミェンのホットリング、ネスの崖ヨーヨー、スネークのニキータやルイージ、アイクラの即死コンボ(と二人を同時操作する個性的なシステム)などなど。
これらは無理とか詰み状況に陥った段階で終了というシビアなもので、そうならないように立ち回らないといけないわけだが――
①その状況に陥らないように立ち回らないとバーストが確定してしまうキャラクターと
②その状況に陥っても問題なく戦闘を続行できるキャラクター
この二種類の格差は歴然となっている。これらの技はキャラクターの個性を雑に重視しすぎた結果だ。現状、トップクラスのプレイヤーでもキャラ変をしないとろくに試合にならないようなマッチアップが多数存在する。
しかし、これらの問題に批判ができたとしても、任天堂にそれを解決する義務があるかというとどうだろう?
『ガチプレイヤーは最早メジャーな存在なのだから、それを優遇しろ』と言いたくなる気持ちも理解はできる。
しかし資本主義的な観点から見ると、開発者は『とりあえず多くの人に買ってもらう』のがベストであって『長く遊ぶやり込みプレイヤー』が軽視されるのは自然の摂理だったりする。
日本という国でesportsが金にならない以上、どんなゲームでもガチ勢は軽視される。この流れは色んなジャンルで当分続くと思う。
(というかぶっちゃけスマブラはガチ勢も全然ガチ勢じゃない。こんなのも当たり前の話で、スマブラはスタート地点が格ゲーなどと違ってタイマンゲーじゃ無い。多くの人にとっての入り口は他のゲームに登場する魅力的な有名キャラクターを使えるという部分だし、トップクラスのesportsタイトルと比べて数億円の優勝賞金とかも無い。もしもesportsとして大躍進したとしても任天堂が首を縦に振る未来が見えない)
冷静になって考えて欲しい。このゲームを対戦ツールとして遊ぼうとするプレイヤーなんて購買した全人口の数%にも満たない。そんな少ないユーザーのために開発リソースを割くだろうか?
その中でも特に『スマブラをやり込んで大会に出るような人種』は、そもそも『任天堂という会社が狙う客層ではない』のだ。
そういった開発者の思想が理解できると、スマブラというゲームを真剣にやるモチベーションは減退してしまうだろう。
しかし、今後もこういった問題は続くに違いない。
なぜなら、スマブラというゲームは八方美人で、例え破綻していたとしても誰に対しても良い顔をしないといけないゲームだからだ。
②遅延が酷い
これも①の問題と地続きだ。
おそらく、原因はNintendo Switchという携帯機のようなゲームハードにある。(他のゲームでも『Steam版では遅延がないのに、Switch版だけはオンラインで遅延がある』ことが多い)
Nintendo Switch Onlineはひたすらに安定性を重視した回線らしく要は回線弱者に優しいシステムで、回線が弱くても重いまま試合が継続される。
要は、元々のシステムがガチでゲームを遊ぶ人向けに作られていない。
このような遅延を改善するためにはガチゲーでも様々な問題をクリアする必要があり、任天堂は技術的なリソースを(やり込む少数のプレイヤーに対して)割けなかったのだろう。
しかし、ゲームスピードが速すぎるのにオンラインオフラインの遅延差4F(観戦者がいると5F)というのは最早別ゲーで、対戦ツールとして見た場合、基礎部分が完全に破綻している。
ガチ対戦の調整はどうみてもオフライン前提のシステムで、オンラインで同じシステムを運用したらどうなるかを想定できていない。
ゲームバランスを調整した部署とオンライン環境を調整する部署間で全く連携が取れていなかったというか、もう取るつもりもなかったんじゃないだろうか?
結果、オンラインとオフラインでキャラクターのバランスが歪になるという問題が発生してしまった。
オンオフで別ゲーと言われているこの問題を解決する方法は現状存在しないし、任天堂という会社のスタンスから鑑みると今後も解決は望めないのではないだろうか?
これに関しては『オフライン前提で調整した人間の目線が高すぎた』ように感じられる。
現状、ガチガチの格闘ゲームですら完全同期をするのは技術的に大変で、『オフラインで入力遅延を意図的に作っておくこと(遅延前提でゲームをデザインしていたりなど)でオンオフのラグを減らす』という工夫がされていたりする。
しかしスマブラにはそんなものは一切ない。現状のスマブラの調整した人間が、オフラインでの対戦しか考えていないのは明白だ。
弱すぎる防御システムに早すぎるゲームスピード、壊れた威力の『飛びすぎ』と言われる技、判定の強すぎる空中攻撃に、出が速くリターンが高い突進技や飛び道具。
これら全てがオンラインでは破綻する要素となってしまっていた。
この辺りの問題を完全に解決するには、オフラインのスマブラというゲームそのものをゼロから作り直さなければいけない。
しかし、そんなことが今後期待できるかというとぶっちゃけできない。なのでオンラインオフラインの問題は次回作に持ち越しがほぼ確定しているような状態だ。
(ていうかそれ以前に、対戦要素があるのに今どき対戦前の回線確認すらできないゲームってどうなんだろうか……)
・どうしてこんなことになってしまうのか?
任天堂という会社の根源はゲーム会社ではなく玩具会社である。
すなわち、大多数のユーザーに対する驚きが第一優先であり、他の企業の社風に流されない独自性こそが任天堂という会社の強みなわけ。
だからスマブラでも吹っ飛ばしの概念や世界戦闘力など独自システムを導入する傾向にあるわけだ。(失敗した物も多々あるのでそこは素直に認めて他のゲームを見習ってほしいが……)
だから他のゲームがやっているようなシステムを簡単に導入しない。
我流を突き進むし、商業としてのプロプレイヤーなど任天堂の『稼ぎ方』とかけ離れているから絶対に容認しない。
だからプロプレイヤーはいつまで経っても軽視されるし、大体数のユーザーの驚きを第一にするからバランスが破綻したキャラクターを次々投入するし、やり込もうとするユーザーのストレスは解消されない。
これらの今後も変わらないであろう構造を理解して尚、スマブラを今後も本気で続けることができるか。
それはこのゲームを遊び続けるプレイヤーのモチベーション次第だろう。
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