『ドンキーコングを極める』ということの多大なリスクとデメリット

『ドンキーコングは弱キャラですか?』

こういう質問があった時にはこう答えるようにしている。

『大乱闘スマッシュブラザーズSPにおいてドンキーコングは上に行けば行くほど弱キャラになる』

――と。

『ドンキーコングを本格的に練習したい』

と言われたら迷いなくこう答える。


『自分に止める権利があるわけじゃないけど。絶対に辞めた方がいいよ』




・防御力が余りにも低すぎて戦っていてどうにもならない状況が多すぎる

このドンキーコングというキャラクター。昔から、それこそ64の頃から、状況次第で詰んだり、ハメ確定みたいなシチュエーションが余りにも多すぎた。
そのストレスはスマブラ史上最強クラスだ。
スマブラSPでもこの辺りの根本的な問題は解決できていない。

そうなってしまうのには理由があって――

①体積が大きく食らい判定が大きい
②回避での回り込み能力が低い
③着地が特に弱い
④崖上がりが弱い
⑤復帰に融通か効かない(細かな高度調整ができないため頭が出る)

こういった低すぎる防御面のせいで攻撃を常に受けながらステージに戻る展開が多すぎる。クッパのように重いからコンボが抜けたりなどということもなければ人型でもないので全キャラ中最もコンボの犠牲になりやすく、復帰も崖上がりも着地も弱いためとにかくプレイヤースキルの介入予知がなく状況的に詰みやすい。重量級の定めではあるが、プロだろうがレート2000だろうが無理なものは無理なシチュエーションが発生しやすい。崖の強いセットアップ関連で頻繁に詰むし、ちょっとでも判断をミスると飛び道具や掴みからのワンコンボで80%食らったりしてストックを落とすのは日常茶飯事である。
なんの抵抗もできない即死コンボもおそらくスマブラで一番入るキャラだ。

それに加えてガーキャン性能も低く。スマブラSPはシールドの防御も弱めに設定されていて遅延もあるため、丁寧なライン管理や待ち合いみたいなことをやっていると戦術的には間違っていないはずなのに逆に負けてしまうことがある。

オンラインで跋扈する飛び道具も苦手でドンキーがガードする=不利行動になってしまう上に、遅延もあって体積もデカくステップ距離が長い為事故りやすい。

キャラ対策に関して同じで、プロプレイヤーが紹介するキャラ対策などを運用したくてもドンキーコングでは横回避や、ガーキャンや、ガードを主体にした対策が上手くできないことが多い。要は物理的な無理が多すぎて特定の行動がゲームとして取れる選択肢の中に入ってこないのである。


結局、ドンキーコング側は潰される前に押し切って破壊するみたいなスタイルの方が安定してしまうので試合展開も大味になりやすい。

ドンキーコングはオンラインでは強いという評価がある。
成る程、確かに間違ってはいない。しかし、元々のポテンシャルが低い上にドンキーコングはオンライン遅延の被害者側になることも多い為ぶっちゃけ焼け石に水もいいところだったりする。

加えて、このキャラクターは実は崖上がりをローリスクで狩り殺す能力が低い
重量級の癖に、特定の位置に立って出すだけで高確率で複数の択をバーストに持っていけるみたいなワザを持っていない。(つまり、全ての崖上がり狩り択がハイリスクハイリターンになってしまうため試合展開がさらに不安定になる)。相手の崖上がりにドンキーの上強がヒットするシーンを見ていて、いつも思う。これ、クッパだったら倒せてたんだろうな……と。

また、見てから通常上がりを強くお仕置きする技も無く、ターンが維持されるだけなので崖上がり狩り性能は重量級の中でも低い。(というか、ガノンとかクッパの、複数択をまとめて潰してハイリターンな崖上がり狩り能力が単に壊れすぎているだけな気もする……)


とにかくすべての動作が不安定で、ハイレートのプレイヤーで頭ひとつ抜けている人だったとしてもメイトでは『70勝10敗』みたいな戦績を出すのは難しく『203勝187敗』みたいな勝利結果になりやすいキャラクターだ。
おそらく本作の中で『VIP連勝企画』で最も安定しないキャラクターだと思う

ドンキーコング魔境100連勝チャレンジを誰か上手いプレイヤーにやって欲しい。割と本気で発狂すると思う。達成できたプレイヤーはいるのだろうか?

ネガとかでもなんでもなくこれは最早公然の事実で、このドンキーコングというキャラクターは初代64の頃から、単にスマブラというゲームに適応できていない。要は、昔からずっとそんな状態なのだ。


・何よりも、ドンキーコングを使うと相手に対するリスペクトが欠けがち

入りすぎるコンボや一生上がれない崖や帰れない復帰に必ず攻撃をもらう着地などが続いて負けてしまうと、キャラクターの強さを感じられても対戦ゲームとしてプレイヤーのスキルを感じられる機会が実際ほとんどない。(※実際に相手が上手かったとしてもだ
ただでさえ本作はオフライン向けに作られているくせに遅延があるせいで、オンライン行動という特定の強ムーブが強い風潮があるのに、その被害を特に受けやすい為。『こんなの〇〇するだけじゃーん!』『何も操作できないじゃんこんなん無理じゃーん!』『はい確定でーす』みたいなことをついつい言いがちになる。(マエスマを勝ち上がれるようなレベルのプレイヤーでもこんな愚痴を実際に言う。まあ、実際にコンボをくらうとドンキーは何もできないし崖も無理な時は本当に無理なのでそう言わざるを得ないのだが
酷いとコンボを受けている途中に『諦めて今日の晩御飯のレシピを考えよう』とかわけのわからん割り切り方をしないといけない。

防御力があまりにも低すぎて読み合いの回数自体が低くなりすぎるため対戦ゲームの醍醐味を感じられないというのも辛い


・それでも使い続ける人がいるのは、他のどのキャラにもない魅力があるため


このゲームで最強クラスにストレスがかかるキャラクターであり、何も知らないのなら使うことは強くお勧めしないドンキーコングであるが、それでも人気なのには理由がある。

このドンキーコングはスマブラSPで唯一「スピードとパワーを両立しているキャラクター」なのだ。つまり、弱みと同じくらい攻めに関しては非常に高水準な物がそろっている。(と見せかけて実は全然近距離では小回りが効かないのだが)

ただ、スマブラというゲームは強み5:弱み5みたいなキャラクターはぶっちゃけ存在意義が無く強み8:弱み2みたいなイカレたキャラクターにしか最終的な人権は無くなるようになっている。

加えて、ドンキーコングは強みの中にゴリラダンクという『相手の操作練度に依存する戦法』に頼らざるを得ない辺りがキャラとしてぶっちゃけ終わっている


・大会結果でわかるドンキーコングの可能性の無さ


ドンキーコングはプレイヤー人口がとても多いが、それだけ人口が多いのにスマブラSPになってから300回以上開催されているタミスマで単体優勝したプレイヤーが一人も存在していない。最初期からいるのに未だに単体優勝がゼロだ。ガノンやキングクルールですら優勝しているのに。この辺りもドンキーコングの不安定さ。弱さを如実に証明していると言える。上手い人が道楽で使うキャラとしても選ばれない。ポテンシャルが低い癖に人口が多いためわからん殺しをすることすらできない。


・ドンキーコング自体は(ゴリダン以外は)真っ当なキャラだが、今後どんな強化が入ろうともコンセプトから詰んでいるため挽回もできない。


受け身の操作ミスを狙ったゴリダンは正直言って運否天賦で不健全な技だと言わざるをえない。しかしそれを除いた場合のドンキーコングというキャラは割と真っ当なキャラだ。そして同時に、これ以上調整が入る余地がないし多少強化が入ったところでコンセプトから詰んでいるのでどうにもならない。

結局、崖上がり、復帰、着地、コンボ耐性という地獄の弱点のいずれかが消失しない限り未来がないわけだが、この辺りのどれかを直してしまうと中級者帯までドンキーコングはぶっちぎりの最強キャラになってしまう。重量級に革命的な調整が入らない理由はこれだ。
重量級はパフォーマンスを発揮するのが簡単なので上級者帯で戦える性能にしてしまうと上級者以外の試合で最強の存在になってしまうのだ。

現状ですらクッパあたりはVIP周辺までのレベルでかなり悪さをしているし個体数がとても多い。スポーツライクなスマブラのクローンゲームなどでは最上位同士の戦いで出せるレベルの重量級キャラクターは下位層、中位層の対戦であまりにも強く事実ゲームを破壊している。


※競技シーンに特化しているスマブラクローンゲーである『Rivals of aether』のKraggとかはまさにそんな感じ。この試合のカードは実際相当きつい相性なのだが、“可能性があるレベル”の試合を大会上位で展開できてしまう。で、このKraggというキャラは下位層、中位層では滅茶苦茶強い。強烈な飛び道具と復帰力、崖上がり力は(※競技シーンならば)むしろ重量級にこそ許されている概念なのだということがよくわかる。

同じように、スマブラの改造ゲームであるproject+でもドンキーコングは長い時間をかけて上位ティアーに行ったようだが、しかしこれらのゲームの共通点はスマブラのゲーム性が大好きなガチプレイヤー向けに作られたゲームであると言う点だ。
筆者は色んな記事でこれを言っているがスマブラSPはガチ勢“も”遊べるゲームであって、“ガチ勢のためのゲーム”ではない。
強いドンキーコングという存在は、スマブラに存在することは困難だ。
現状ですら個体数が多いのに、中級者あたりまでずっと厨キャラと化したドンキーコングと戦うようなゲームはカジュアル層からすれば嫌だろう。


結局、スマブラでお手軽な重量級が強くなりすぎると、カジュアル層のゲームバランスが壊滅してしまう。だから重量級は未来永劫これ以上強くならないというわけだ。人気キャラで使用率が高いガノンの強化がいつまで経ってもされない理由がお分かりいただけただろうか?

最近のアップデートでドンキーコングは強化されたが、根本的な弱点が調整されたわけではないので大した変化はないし、今後も根本的な解決がされないのでおそらくずっと弱いままだろう。

64の頃、スマブラの基礎システムから逸脱しすぎたドンキーコングという色物キャラクターは弱かった。
そして、スマブラの基礎システムは何も変わっていないので、基礎からずれすぎたドンキーコングというキャラクターは未だに弱い。


・キャラに文句を言ったりしないで、メンタルが完全に壊れてしまう前にきっちりとキャラ変をしよう。


流石に64の頃から一度も上位に行けていないのだから、いい加減使い手は学ばなければならない。
ドンキーコングという存在がどう足掻いても弱いし、強いドンキーコングというキャラが存在していたとしたら単純にスマブラというゲームがぶっ壊れているのだ。

ドンキーコングを使っていて思うのはこのゲームは『キャラクターとしての基礎の防御力が高くないとろくに試合ができない(もしくはロクな試合にならない)』ことが多すぎるということだ。
負けるにしても『相手がうまかったんだな』ときちんと感じられる納得のできる負けを少しでも多くするべきだろう。メンタルが壊れる前に、防御力の高いキャラクターを遊ぼう。
といっても、現在のオンラインの環境がぶっちゃけ(真面目にやっている人には本当に申し訳ないが)あまり良いと筆者は感じていないのでストレスが少なく選べる、納得した敗北ができるようなキャラクターの選択肢は少ないかもしれないが……。

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