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スライダー系球種を深掘りしてみよう #1

こんにちは。
昨日は近本選手にリツイートしてもらい今年イチ嬉しかったあおとらです。

前回のnoteではランキング形式でストレートを取り上げたので今回はそのスライダー編といきたいところですが、その前に一度、NPBで投げられているスライダー系球種の特徴について深掘りしていきます。

一口に"スライダー"と言っても、球速や変化の方向、変化量、投手と打者の左右、投じるコース、投げる意図等、その種類は多岐にわたります。
各変数ごとに細かく分けて見ていきたいものの、現在外部から取得できる情報である、"球速"・"投手と打者の左右"・"投じたコース"で分類し、その特徴や推測される用途等について調査していきます。

データの取得元であるスポナビでは球種の分類が目視ベースかつ選手自身の呼称に基づいて行われているため、"スライダーのようなカットボール"や"カットボールのようなスライダー"も見受けられます(ここで言うカットボールは、スライダーよりも速く小さく曲がるものをイメージしています)。
精緻に分類するとなると映像を逐一観る必要がありますが、その作業にはおそらく一万年くらいを要するため、今回はスポナビで"スライダー"・"カットボール"・"スラーブ"に分類されたボールを合算して分析することにしましょう。


1. NPBのスライダー系球種

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スライダー系球種(スライダー・カットボール・スラーブ)はNPBで多く投げられている球種であり、スライダーはストレートに次ぐ2番目、カットボールは3番目となっています。
なお、おそらくスライダーとカーブの中間球を表していると思われるスラーブは102球とほとんど投げられておらず、ヤクルト・長谷川宙輝が56球、西武・榎田大樹が26球、DeNA・山﨑康晃が20球投じています。

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スライダーとカットボールに着目すると、平均球速はスライダー<カットボールSwStr%はスライダー>カットボールであり、前述の"カットボールはスライダーより速く、変化量が小さい"という認識はなんとなく正しそうです。
打撃結果を示す指標(被打率・OPS・wOBA)はスライダーの方が優れており、変化量が大きくとらえにくいことが作用していることも考えらえれます。

球速と変化量を両立したボールが打ちづらいのはもちろんですが、平均的に見て球速と変化量のバランスが良いといえるのはどのようなボールでしょうか。
残念ながらNPBでは変化量を捉えることができないため、球速の面から探っていきたいと思います。


2. スライダー系球種の球速別成績

スライダー系球種の球速帯を7つに区分(~119km/h、120~124km/h、125~129km/h、130~134km/h、135~139km/h、140~144km/h、145km/h~)して、各種指標を示した結果が以下の通りです。

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全投球のうちストライクゾーン内に投じられた割合を示すZone%については、球速による差異はそこまで大きくありませんが、球速の上昇とともに若干の上昇傾向が見られます。
打者がスイングした割合を示すSwing%はZone%と同様に球速上昇に伴う上昇傾向が見られます。Zone%が遅い球速帯でも大きく低下しないのに対してSwing%は単調増加に近い上昇を示しますが、"遅く、変化量の大きい(と推測される)ボール"はたとえゾーン内であっても「捕えにくい」と打者に感じられているのかもしれません。

続いて、スイングした投球のうち打者のバットに当たった投球の割合を示すContact%は、120~139km/hのゾーンで低く、それより遅い・速い球速帯では高い傾向を示しています。
球速が遅いと打者にとって見やすく、一方で球速が速くても変化量が小さければ(推測)バットに当たりやすいことが考えられ、"バットに当てさせない"という観点では120~139km/hくらいの球速帯がバランスの良いボールと言える可能性があります。

全投球のうち空振りとなった割合を示すSwStr%は、115~119km/hで最も低く、135~139km/hで最高、それより速い球速帯では若干低下を示します。前述のContact%の分母が"スイング数"だったのに対し、SwStr%の分母は"全投球"であるため、SwStr%を高めるには、打者にスイングをさせ、かつ打者のバットに当たらないという両者を満たす必要があります。
したがって、打者にコンタクトされにくくストライクゾーンへの投球割合が比較的高い、すなわち前述の120~139km/hの球速帯の中で最も速い区分である135~139km/hでSwStr%が最も高くなった、というように説明がつきます。

最後に打撃結果の得点価値への結びつきを示すwOBAを確認すると、最も遅い・速い球速帯では高い一方、その隣に位置する球速帯(120~124・140~144)で低下、中間の球速帯(125~139)はスライダー系球種の平均的水準、という結果となっています。うーん難しい。

120~124km/hに関しては、Contact%が最も低い球速帯であることからバットに当てづらい、あるいは当たったとしても強い打球になりにくいことがwOBAの低下に寄与している可能性が考えられます。
一方、140~144km/hについては、Swing%・Contact%が共に高いことからインプレ―打球の発生割合は高まります。それにもかかわらずwOBAが相対的に低い水準となったのは、打者にストレートと勘違いさせるような球速と小さな変化量で凡打を誘うようなボールだからではないかと推測されます。


3. ここまでのまとめ

ここから左右別・コース別に見ていこうと思ったのですが、終わりが見えなくなってきたのでここまでを前半として次回に続けることにします。

前半でわかったこととして、以下が挙げられます。

・スライダー系球種はNPBで最もポピュラーな変化球
・球速上昇に伴いZone%・Swing%は上昇するが、打者は変化量の小さいボールの方が捕えやすいと判断する傾向があるのではないかと推測される
・Contact%は120~139km/hで低く、"バットに当てさせない"という観点では同球速帯が球速と変化量のバランスは良さそう
・打者にコンタクトされにくくストライクゾーンへの投球割合が比較的高い、135~139km/hでSwStr%が最も高くなる
・wOBAが低い球速帯は120~124km/hおよび140~144km/h、前者はバットに当てづらいボール、後者は凡打を誘うボールであることが要因ではないか

ものすごく推測ベースの分析ですが、いつか実際の変化量等で確認してみたいですね。
「この要因違うのでは?」「他にもこんな要素があるのでは?」などあればコメントいただけると嬉しいです。

それではまた次回お会いしましょう。
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