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この"ストレート"がすごい!2020

こんばんは。
材料を切ってから鍋に入りきらないことに気づき、一人暮らしなのにカレーを二鍋分作った無能、あおとらです。
カレーを食べたい方、ぜひお越しください。

Twitterアカウントでは今年一年間、NPBで投じられた各球種について毎週末ランキング形式でお伝えしてきました。
noteでは総決算として、「この〇〇がすごい!」と題して独断と偏見で球種ごとに注目の投手をピックアップしていきます。

今回は「この"ストレート"がすごい!」をお送りします。

1. ストレートのNPB平均

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上表は今年NPBで投じられた全球種の成績を示しています。
今回取り上げるストレートは最も多く投じられた球種(43.5%)であり、全球種の中で最も平均球速が速い(144.9km/h)ボールです。
空振り率(7.1%)と被打率(.265)は変化球よりも劣るため、ストレートで打ち取る、あるいはストレートを決め球にできる投手はそう多くないものと思われます。
誰もが投げる球種であるからこそ、"圧倒的な球速"や"特異な変化量"など、平均的なストレートとは異なる特徴を持つボールを投じる投手でないと好成績を残せないことが推測されます。

2. ストレートの各種成績

① 投球割合(総投球数100以上)

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前項で触れたとおり、ストレートの平均投球割合40%強に対し、上位の投手は80%に迫る割合でストレートを投じています。
右端の列にはwOBA(1打席当たりの得点貢献、投手視点では低い方が好ましい)を併記しており、ストレートの平均(.351)を上回る投手には青で色付けしています(wOBA使うならさっきの表で算出しておけゼミ詰められ案件、許してほしい)。
表から読み取れる通り、"ストレートが優れているから多く投じている"というわけではなく、発展途上の投手が多く並ぶ傾向が確認できます(その投手の持ち球の中で相対的に優れているという可能性はあります)。

今季限りで引退する2位の阪神・藤川球児は"火の玉ストレート"を現役最終年まで貫き通し、西武のクローザー・増田達至はクオリティの高いストレートが投球の4分の3を占めるなど、このランキングの中では異色の存在といえます。

② 平均球速(ストレート投球数100以上)

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平均球速150km/hオーバーの投手がずらりと並び、トップは阪神のクローザー・スアレス、日本人トップは西武の若きリリーバー・平良海馬となりました。
wOBAを確認すると、多くの投手が平均(.351)以下をマークしています。
下表に示すように、ストレートに関しては球速が上がるほど打者にとって攻略の難しいボールとなることから、"速いボールを投げられる"という能力はそれだけで大きな武器になりえます。

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③ SwStr%(=空振り/投球数、ストレート投球数100以上)

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空振り率トップは平均球速トップの阪神・スアレス
MLBからも注目の右腕は、平均の倍以上空振りを奪う圧倒的なストレートを投げていたことが分かります。
先ほどの球速帯別の成績からも分かる通り、基本的には球速が速いほど空振り率も向上する傾向にあり、SwStr%のランキングも概ね同様の傾向を示しています。
その中で異色の存在と言えるのは、ヤクルト・今野龍太投手
平均143km/hと決して速くないボールでありながら、ホップ量が多く浮き上がるような独特の球質で6位にランクインしました。
ちなみに、先日ヤクルトのオンラインファンミーティング・アナリストによるホークアイ解説コーナーにて、「ホップ量はNPBでも1、2を争う」と紹介されていました。


④ wOBA(ストレート投球数100以上)

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西武のイケメンリリーバー・森脇亮介が1位に。
球速は平均的ですが、回転数が少なく速いまま沈む"平均から逸脱した"直球で、多くのゴロアウトを生み出しました。
一方、2位・3位のDeNA・石田健大楽天・岸孝之はホップ質のストレートで空振りやフライアウトを稼ぐタイプ。
一口に良いストレートと言っても種類が異なることを実感できます。

10位には平均球速133.6km/hヤクルト・石川雅規がランクイン。
平均球速上位の面々が必ずしもwOBAで上位になっていないことからも、球質というファクターは球速以上に結果に影響を与えている可能性があります。


3. 注目投手

① 阪神・スアレス

平均球速と空振り率で1位となった阪神の絶対的クローザー。

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圧倒的なストレートに加え、ほぼ同じ球速帯のツーシームも投じることでより攻略を難しくしています。

ストレートのコース別成績(上段:被打率・下段:SwStr%)は以下の通り。
左右問わず、真ん中より高めのゾーンでの高SwStr%が目立ちます。
右打者については高めと内角で1本の安打も許していません。

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以下ではカウント別の投球を見ていきます。
(1枚目:球種割合・2枚目:対右打者・3枚目:対左打者)

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1枚目からわかる通り、どのストライクカウントでもストレートを多く投じており、カウント球にも決め球にも使用していることが確認できます。
右打者(2枚目)には、追い込んでからゾーン内にかなりの割合で投げていることが分かり、打者がスイングせざるを得ない状況を作り出しています。
一方、左打者(3枚目)からは高めで空振りを多く稼げている様子が見られ、2ストライク時の空振り数は圧巻と言えます。


② 西武・森脇亮介

森脇はwOBAでNPBトップ。
投球の4割強を占めるストレートと質の高いフォークを武器とする投手です。

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今季の最速は148km/hと驚くようなスピードはありませんが、前述のように"速いまま沈む"独特の球質でアウトを積み重ねました。
ストレートのGO/FO(ゴロアウト/フライアウト比率)は、NPB平均0.82に対し森脇は0.96。ゴロアウトの多さが特徴的です。

コース別の成績(上段:投球割合・下段:被打率)は以下の通り。

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左打者には偏りなく全体に、右打者には真ん中の高さをメインに投球しています。
一般にゴロピッチャーは低めに集めるようなイメージがありますが、森脇には当てはまらないようです。

カウント別の投球を見ていきます。
(1枚目:球種割合・2枚目:対右打者・3枚目:対左打者)

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森脇もスアレスと同様、深いカウントでもストレートを効果的に活用しています。
対右・対左ともに一見甘く見える真ん中近辺でアウトを稼いでいる点が特徴的です。
特異な球質や、フォーム矯正により今季からストレートが力強さを増したことに加え、タイミングを取りずらいフォームにも要因がありそうです。
https://www3.nhk.or.jp/sports/story/7404/index.html


4. さいごに

内容の割に長くてお疲れの皆様、ありがとうございます。
僕も疲れました。

今回はストレートにフォーカスし、圧倒的な球速を誇るスアレスと、球速では説明できないボールの持ち主・森脇亮介に注目しました。
もちろん速いに越したことはないが、速ければいいというわけでもない。
基本のボールでありながら奥の深いストレート、おもしろいですね。

次回"スライダー"がいつになるのか、果たしていつまで続くのか不明ですが、続きをおたのしみに。

データ参考
スポーツナビ:https://baseball.yahoo.co.jp/npb/
NPB:https://npb.jp/

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