ゲームマスターに必要な事を月村サトシに教えてもらった

だいたいのあらすじ

2024年4月から始まった「逃走中グレートミッション」の新章。
「TOYワールドステージ」をやるかと思ったらいきなりゲームをハッキングされて(またか…)ハンターが強化されて月村が拉致されて(またか…)これまで謎の存在だった「信楽たぬき男」が美少女ゲームマスター・ラビということが明かされ、「A3コロニー」のゲームと世界を支配するカイロス社の狼月マコトとその配下たち VS 颯也たち「A7コロニー」の面々による勝負に。禁断のゲーム「エニグマ」とA7コロニーの命、何より月村の命をも賭けた戦い。

舞台は1970年代アメリカ。アメリカ大陸を横断していく、ゲーム時間400分という過去最長の戦い。
ロサンゼルスでのオープニングミッションから始まり、バルーンフェスタでのコーラ運び、ジェイソンを彷彿とさせるキャンプ場の怪人、ラスベガスでの100万ドルを賭けた大勝負、ソルトレークから走る大陸横断鉄道で映画さながらの爆弾解除、サウスダコタでの荒野の決闘、シカゴでの一発大逆転の野球対決、ホワイトハウスでの未知との遭遇を経て、ついにやってきたクイズ…ではなく逃走の都・ニューヨーク。マンハッタン島上陸でのミッションに失敗しハンター100体が追加され105体、そしてラストミッションと最終決戦の地、自由の女神がそびえたつリバティ島へ。
逃げりゃ天国。捕まりゃ地獄、体力知力ウォークライ、早くこいこい日曜日。
そんなアメリカ横断逃走中も第60話でついに完結を迎えた。

以後はギリギリまで当該回のネタバレを抑えつつ、今回核心となるポイントまで紹介する。

最終ミッションはこれまでマフィアの手から守り大切に運んできたウイルス兵器「ゼータ」を感染症研究所にいる大統領に届ければクリア。
ミッションをクリアすれば相手チームのメンバー3人を強制的に脱落させることができる(この時点で3VS3なので成功した方の実質勝ち)。
しかし、失敗すればハンター100体がさらに追加。合計205体となる。

だが、その戦いゴール一歩手前でマフィアのボスであるダミアン・コングに捕まり、ラビがゼータを渡し、ダミアンが確認しようとしたところで誤って浴びてしまい怪物化。高層ビルの屋上で映画「キングコング」の如き戦いの末、ダミアンを倒し元に戻すことに成功。ラビがゼータを渡しミッションクリア…
のはずだったのだが、これに対し狼月は「ダミアンがゼータの一部を使用しており、これでは『完全に届けた』と認められない」としてミッション失敗と裁定。ハンター100体が追加され205体となった。
ラスト15分。颯也・ラビVS雪之丞VSハンター205体との戦い。どこにも逃げ場がない中で最後の賭けとしてラビはモーターボートで自由の女神が建つリバティ島へ向かう。
だが颯也と雪之丞のもみ合いの末、雪之丞は川に落下。颯也はマンハッタン内を逃げ回るうちに確保。ついに1VS1だが雪之丞の行方も分からない中、リバティ島へ向かうラビを追いつめるべく、狼月はゲームメイクを無視しハンターの標的を強制的にラビへと変更。さらにエリアも勝手にどんどん縮小させていく。
当然「ルール違反」とA7コロニー代表として立会人を務めるハーヴェストからも抗議されるが「俺のゲームだ」とエニグマを手にせんと暴走する狼月。
だが、そこをハル・モーリス・ガスティンと助け出された月村によって阻止される。
助け出されたことに驚く狼月に対し月村は諭す。

お前のゲームマスターとしてのプライドはその程度か?
大人しく見届けろ
それが逃走者に対する敬意というものだ

この言葉を聞いた時、自分はかなりグッときた。そしてその日の仕事をしながらこの言葉を反芻している時に、「ゲームマスターとして『参加者への敬意』」について考える

情に弱いゲームマスター

当方は「逃走中予想レース」の運営を10年以上行っている。
ゲームルールに関してはほぼ完成されつくされているのだが、自分が大事にしているのは「運や自分の介入の余地のない究極のシステマチック判定」にすることだった。

もちろん「ミリオンスロット」で育ってきた世代でもあるので、多少の運の左右でゲーム展開が左右されるのも楽しい。
だが、大人数が参加する以上、自身を含めた特定の人間を贔屓する、あるいはそう見えてしまうようなルールには絶対にしたくない(そういうのが見えて揉めた企画も何個か見ているため)というのが根底にある。
だからこそ「逃走率」という「他者も確認できる」「復活したタイミングの時間判定はあるとはいえ、ほぼブレない判定基準」というのを確立できた。

だが、自分がゲームマスター、いや、人間として酷く弱い部分があるというのを、特に今の仕事をやっている上ではっきりと分かった部分がある。

とにかく情に弱い

自分自身も今の仕事に関することをずっと客の立場としてやっていたこともあるので、お客さんの気持ちが痛いほど分かる。
特に「今にも泣きだしそうなお子さん」とか「明らかにイライラしている方」を見ているともう勝てない。大甘にしてしまう。
だが、個人営業の店ならともかく、私が務める店はチェーン店。売上ももちろん大事だし、「全てのお客さんに公平に」と言う事を徹底しないと「前のお客さんは甘くしてもらったのに…」というクレームが来てしまう。
だがそれを分かっていても目の前の空気に耐えられなくて…と言うことが多々あった。それは前の店でもそうだったし、移籍後の今の店でもそうで問題視された。
だが、そういった問題を指摘された事を機に病院で診断を受けて「自分の頭のネジが外れている」ということが分かって「自分はハッキリと向いていない」というのを進言したことで、そういった仕事からは完全に排除してもらい、雑務や機械系の仕事を振られるようになった。自分的にも機械を触っているのは大好きだし、こっちは「0か1か」の仕事なのでかなり気分が楽になった。

話は戻り「逃走中予想レース」である。
もちろん「公平中立」は絶対というのは今でも守っている。
それでも心が揺らぐときは多々ある。
参加している皆さんが結果発表の後「今回はいい成績だった」「今回はダメだったなぁ」という感想を見るのは勿論楽しい。
だが時折、皆さんがゲームへの気合と情熱が入りすぎているのを見ると「そこまでしなくてもいいから…」と凄い心配になってしまう。
いい成績を出せなかったことにかなり落ち込んだり、破産したことでパニックを発症した人も見たり、優勝して泣いた人も見た。
自分は「そこまで人生を賭けるゲームでは絶対にないです」と常に言っている。
だが内心は「ほんまごめん」の嵐である。

ここ最近一番つらかったのは「お台場リベンジャーズ」の時のるかさんだった。
るか永世二冠の成績は5位だった。もちろんベスト5に入るのは素晴らしい事である。
だが、永世名人であるるかさんが挑んでいる「特別永世名人への道」へは3位以上でないとステップが貯まらない。4位以下であれば容赦なく「ボツ」となる。
この結果を見て落胆したるかさんを見て、いや、結果を算出した時にるかさんの順位欄が「5」というのを見た時点で、一番落胆したのは自分だった。
この時はるかさんの住む石川が地震に見舞われた直後というのもあり、内心「これでいい成績取って少しでも励みになれば」という気持ちだった。その気持ちを励ますどころか傷つける結果になってしまったことが本当に申し訳なかった。
だから普段やる「シュレッダーの儀」もとてもじゃないができなかった。
そして他の有力参加者へも「今後『特別永世名人への道』の条件を緩和すべきか」という相談を行ったぐらいだった。

成績の面で肩入れは絶対しない。でも、やっぱり皆さんの反応を見てしまうと「傷つける結果でごめん…」という情を抱いてしまう。

月村サトシが教えてくれたこと

だが、そんな「甘いゲームマスター」に月村サトシはしっかりと「ゲームマスター論」を教えてくれた気がする。

挑戦する人がどんな結果になっても、どう喜んでも、時に落ち込んだり悲しんだりしても、それを「見届けること」。
それが「参加してくれた方への敬意」であると。
そしてその覚悟が必要であると。

狼月は「『エニグマが欲しい』という自分の欲と『A3コロニーの逃走者の方が強い』プライドを守るため」に中立性を破るという禁忌を犯した。
だが、それは参加してくれる逃走者は勿論、観戦していたお客さんにも示しのつかない行為である。

ゲームマスターは「1に安全に」「2に中立に」「3に円滑に」ゲームメイキングした上で「4に楽しませる」。
それが「ゲームマスター」として必要な事ではないだろうかと私は受け取った。

私の予想レースも参加者が80人前後と「ネット開催企画界」でもかなりの大人数が参加するようになったし、参加せず見てくれる方も多数いらっしゃる。
だが、何より「参加してくださる方」がいなければ成り立たない。参加者たちを裏切るような行為は参加者離れを招き、ひいては企画中止・消滅へと逝くだけである。
そのような事をしないためにも、逃走中と自分の体力が続く限りは続けていきたいこの企画を終わらせないためにも、今一度自分の気を引き締める。
そんなことを考えた逃走中グレートミッションの回だった。

既にFNS27時間テレビでの逃走中開催も決定し、今はまた出場者発表をのんびりと待ちながら準備をしている。
今までとまた変わらないが、ちょっと気合を入れ直した戦いを皆さんにぜひ楽しんでもらいたいと思う。

これからもよろしくお願いいたします。

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