パラオ旅行記【1日目〜パラオ編2】

 尋常じゃない熱気だった。赤道近くにある国なので分かってはいたが30度はあるだろう気温、雨が降った後であろうと感じる蒸し暑さ、これがパラオだ。
 
 飛行機を降りたのだが未だに空港内に入れない。なんと乗客1人1人の体温を測り、健康状態を確認したうえで空港内に入れていた。徹底したコロナ対策である。早く空港から出たい人間にとっては苦痛かもしれないが、私はそうも気にならない。結局こういう地道なことが大切だからだ。毎回の手洗いうがいを徹底することも同じことだと思う。
 私は物心ついた時から外から帰って手洗いうがいをしなかったことはほとんどないと思う。会社でランチをして席に戻る前、お酒を飲み過ぎて酔って帰って来た深夜、友達を引き連れて泊めてあげる時、いつ何時も手洗いうがいを忘れたことはほぼない。手洗いうがいを絶対しなさいという親の教育を受けてきたからだ。

 漸く自分達の番を終え、入国審査を受ける。通常の流れは入国審査後荷物を受け取り外へ出るだけだ。
 しかしまたしても現れる長蛇の列。次は何だ。

「おいおいおい、スーツケースも全部開けて目検で荷物検査してるぞ。」
「思っていた以上に発展途上だな。」

 荷物検査の責任は出国した国にあるはずだが、まさかここで目検で確認されるとは思わない。

 前に並んでいた日本でもよく見る体育会系男2人とかきあげ系女子3人組の韓国人はダイビングをしに来ているらしく、ダイビンググッズが沢山詰め込まれていた。荷物検査しているパラオ人も何の疑いもなく通した。
 
 我々2人組は和也が先陣を切った。旅行前から聞いていたが、和也は海外慣れしているくせに日本食やら水やらを大量に持ち込んでくる。現地のものをあまり口にしたくないかららしい。当然荷物検査も日本食を見たら疑うに決まってる。

 シャカシャカ、シャカシャカ。
 
 荷物検査の人が、とある箱を振って音を確かめる。油そばのカップ麺、ぶぶか、だ。日本のカップ麺など見たことあるはずもなく、そもそも食べ物なのかすらわかっているのか怪しい様子だった。とはいえ、さすがに危険物もあるはずなく、和也と私共に荷物検査を通過した。
 後述する必要もないため先に言っておくが、和也は結局ぶぶかを食べることなく帰国する。現地の食べ物をバクバク食べて帰国することになる。
 また余談になるが、海外旅行となると何故か必要もないものを多く持ち込んで結局使わずに持って帰ってくることがよくある。多めに持ってきたTシャツ、タオル、洗面系のグッズ。何かあった時のために、とスーツケースにいれるのだけれども、だいたい何かあった時ってどういう時だ、そんなことすら考えたことがない。そう考えている自分も着なかったTシャツをずっとスーツケースに入れたまんま帰国することになる。逆張りの有言非実行か。

 4:00AM。荷物検査を終えてようやく自由の身になった我々が本日残りやるべきことは、現地のsimカード購入とドライバーとの合流だ。まずはsimカード購入に向かう。深夜便だとsimが売り切れている可能性がある、とネットで見たのだが杞憂だった。
 海外旅行に行く際、未だにWiFiを借りる人もいるがどう考えてもコスパが悪い。現地のsimなら数百円でいつでもどこでもネットを使うことが出来る。利用しない理由がない、とまで言ってもいいかもしれない。「タイに行くんだけどオススメ教えて」と上司であるマネージャーからLINEが来た時、真っ先に「simカード買ってください」と返信した記憶も新しい。

 simを買っている間、和也にドライバーを探しに行ってもらっていた。
 頭をよぎる一抹の不安。ドライバー不在。そうえばホストのリリーとはもう何時間も連絡を取り合っていないし、本当にドライバーは来るのかという不安はあった。こういう時の鉄板は名前が書かれたプラカードを掲げていてくれるパターンだが、私の名前のプラカードはなかったようだ。

 「ドライバー見つからんわ。」
 「最悪のパターンありそうだなあ。」

 続々と他の人はドライバーと合流し、なんと残されたのは我々だけとなった。後から知ったのだがパラオはほとんどタクシーが走っておらず、営業時間中に電話で呼び出さないとまずタクシーに乗ることが出来ない。取り残されたのは我々2人と空港スタッフ、あとは地元の人と思われるタバコを吸っているだけの男。

 simを手に入れたので早速リリーに連絡を入れた。最悪なのはリリーが寝ていて連絡が繋がらないことだ。

 「We arrive at Palau now.
But we can’t find a pickup driver.」

1分後にすぐにリリーから返信があった。さすがホストなだけある。

 「Please come down the hall, the driver is waiting for you in the hall ,XXXXXX
this is driver number」

 ドライバーに連絡するものの繋がらず、既にホールに来ているし、空港スタッフも心配そうに声を掛けてくれた。最悪、この空港スタッフに交渉して宿泊先まで送ってもらおうと思っていたその時。

 「Oh~sorry sorry waiting for you!!」

 タバコを吸ってたあいつだ。
 これがほんの数分の出来事であれば問題ないのだが実に15分ぐらいは探していた。ちなみに空港といえばかなり大規模な空間を想像されるだろうがパラオでは通用しない。地元の公園程度のホールでたった数人しかいなければ目立つほどである。そんな中、異国の地日本から来た明らかな観光客の見た目をしている2人の若造が困った様子でドライバーを探しているというのに、そして何度も目が合ったのに、呑気な野郎だ。
 またしても口走ってしまうが、帰国の際も空港までこのドライバーに送迎してもらうことになるのだが、当然タダでは済まない。とある仕打ちがこのドライバーには待っているのだ。

 なんとかドライバーと合流出来たことをリリーに伝えて宿泊先に到着した。エアビーで見た写真はやはり営業用にかなり綺麗に撮られており、実際の宿泊先はちょっぴり古臭さと汚さがあり、カラフル過ぎる色合いなのだが、ここまでの道中を考えれば寝れるだけでありがたい。
 ようやくリリーと出会い、握手を交わし、チェックインをした。間違いなくあっぱれなのはリリーだ。この時間まで起きててくれて僕らをフォローしてくれた。ありがとう、リリー。
 部屋はオーシャンビューでかなりオシャレなところなのだが4:30ということもあり、真っ暗で何も見えない。シャワーを浴びて寝る予定だったが、シャワーの排水溝が全然流れない。髪を洗えば、くるぶしまで浸るお湯。ちなみにお湯と一応書いて伝わるようにしたが、実際はほぼ水に近い温度でこの先最終日までお湯を浴びることなくチェックアウトすることになる。

 シャワーを浴び終えて、とりあえず数時間寝て10時ごろから活動することを和也と決めて、消灯した。明日、というよりかはもはや今日は夜にナイトカヤックとナイトシュノーケリングという夜の海を楽しむツアーに参加することしか予定を決めていない。

 1年前に行ったタイのサムイ島で購入したTシャツを着てベッドに入った。
 
 数時間後から僕らの旅猿が始まる。

 つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?