パラオ旅行記【1日目〜東京編】

 2020年2月5日水曜日午前11:00。連日のコロナウィルス報道の影響を受けてなのか、単なる平日の昼間だからなのか、理由はどうあれ成田空港は人が少ない。年に数回しか来ないことを考えるとそもそも多いのか少ないのかの判断も出来ないのだが。
 
 今週は火曜までしか働けず、下っ端の自分は先輩に仕事を無理やり引き継ぎ今日から7連休に入った。年に一度、有給取得推奨のため平日連続4日有給を取ると5万円貰えるというなんともホワイトな制度が弊社にはある。
こんな制度があるものだから、そもそも有給全然取れないですよ、と嘆いている他社の人間の気持ちは当然理解できるはずがない。
 
 有給という言葉を聞いて頭の中で漢字に変換すると、「有給」と「有休」という漢字が浮かぶ。これは単に有給休暇をどう略すかの問題で、マクドナルドを東京の人はマックと略すのに対し、大阪の人はマクドと略すのと同じようなことなのだ、とふと思う。
ただ音が同じだから余計に分かりづらいだけだ。

 そんなことを考えながら13:20成田発、仁川行きの飛行機に向けて、しっかり2時間前に成田空港にやってきた。

「千歳なう」
和也からのLINE。和也とは高校1年生からの仲で彼はサッカー部(私は陸上部)なのに毎日のように一緒に登下校、LINEをしていた仲で、今回パラオ旅行を共にする友人である。現在は国立大学大学院2年、4月から某大手自動車メーカーに入社予定だ。
「成田なう」
当たり障りないLINEを返しておいた。

 空港は普段行けないようなお店が多いのに何も惹かれない私は早々に搭乗カウンターで荷物を預けてチェックインする。

「仁川からパラオ、コロール空港までですが、え、真ん中の座席指定ですか?他にも窓際や通路側の席が空いてますが。」

 やや驚いた様子でカウンターのお姉さんに言われる。

「え、あ、はい大丈夫です。」

 本当は和也と別々で航空券を予約して、座席を横並びで指定した、という訳なのだがいちいちそんなことを説明するのもめんどくさい。
 チェックインも済ませるとやることもないので間髪入れずに荷物検査、出国審査まで終えた。時刻未だに11:30、搭乗時間まであと1時間20分。本来ならここまで早く出国審査を終えることはないのだが、今回はアシアナ航空の便なので親の恩恵を受けてスターアライアンスゴールドメンバーである自分は搭乗時間までラウンジで過ごすことにした。

 ラウンジに来ているということは利用する航空会社で機内食が出ることを意味するが、それでもカレーやうどんを頬張っている人達が兎に角多い。この人達は離陸後案外すぐやってくる機内食のことは何も考えていないのだろうか、と毎度思う。まあでもそういう人は機内食が出たらフルーツとかヨーグルトとか食べやすいやつだけ食べて、観たいはずの映画も睡魔に負けて観きれず気づいたら着陸していた、なんていう空の旅が多い気がする。自分はというとオレンジジュース、少なめに盛ったサラダ、パン、チョコの4点セットが恒例だ。ここでお酒を飲むほど強くはないし、サラダはなんとなくカラダにいいし、パンは美味しいし、チョコは離陸後に食べるように取っている。そして早々にサラダとパンを平らげ、リュックから今読んでいる橘玲の「80’s」という本を取り出した。最近ハマっている橘玲の自叙伝のようなもので80年代に起こった政治経済や事件を絡めながら人生を振り返っている本である。

 彼は幸せをテーマにした本を書いており、私の人生のテーマである、幸せになる、一生笑い続ける、に通ずることがあろうと思って彼の本を手に取るようになった。
大学から東京に出てきて早6年。最近感じるのは東京にいる人は一見幸せに見えるけれども案外満たされてない人が多いんじゃないか、ということだ。だからといって地方にいれば幸せかというとそうでもないし、実際に幸せな人も沢山いると思う。

 「搭乗なう」
和也からのLINE。ここまで来るのにもう20往復ぐらいはLINEしている気がする。彼はJK並に返信が早く、高校の頃から何も変わっていない。
「ラウンジなう」
当たり障りないLINEを返しておいた。

 12:50搭乗時間になったのでゲートに向かった。既に搭乗が始まっており、economyクラスの列は長蛇の列が出来ていた。座席指定なのにどうしたわざわざこんな列に並ぶのだろう、空いてから搭乗すればいいのに、と思った。そんなことを思う自分は親の恩恵で優先搭乗出来るというプチ優越感を感じていた。飛行機の座席に着いてから着陸まで、寝る、食べる、本を読む、音楽を聴く、を3サイクルぐらい回した。
15:50韓国、仁川空港着。ここで千歳からやってくる和也と合流する。
 
 いよいよ我々の最高のパラオ旅行が始まる。間違いなく最高になるはずだ。
 この時は翌日の夜に「パラオ旅行0点だわ」と和也に話し掛けるとは思ってもいなかった。

次回へ続く。

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